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第5章 雨の放課後
放課後。
突然、強い雨が降り始めた。
「うそ……傘持ってない」
昇降口で立ち尽くすあかね。
すると後ろから声がした。
「何してる」
「ボスキ……」
「傘は?」
「忘れた」
「……はぁ」
ボスキはため息をつくと、自分の傘を開いた。
「入れ」
「え?」
「風邪引くだろ」
「でも、ボスキは?」
「俺も入る」
「……一緒に?」
「嫌なら置いていくぞ」
「嫌じゃない!」
あかねは慌てて傘の下へ入った。
二人で歩き始める。
雨音だけが静かに響いていた。
しばらくして、あかねが口を開く。
「ねえ、ボスキ」
「何だ」
「私、何かした?」
「……」
「最近、避けられてる気がする」
ボスキは黙ったままだった。
「私、ボスキに嫌われたのかなって……」
その言葉を聞いた瞬間。
ボスキの足が止まった。
「……違う」
「え?」
「嫌ってねぇ」
「じゃあ、どうして?」
「……」
言えるはずがなかった。
他の男子と話しているのを見ると、何故か腹が立った。
楽しそうに笑っているのを見ると、落ち着かなかった。
でも、それを言葉にするのは恥ずかしい。
「……お前が」
「私が?」
「他のやつと楽しそうにしてるのが……」
ボスキはそこで言葉を止めた。
「……いや、何でもない」
「気になるよ」
あかねが首を傾げる。
ボスキは小さく息を吐いた。
「……嫉妬した」
「……え?」
雨音が一瞬だけ遠くなったように感じた。
「お前が、他の男と楽しそうにしてるのを見て……なんか、気に入らなかった」
「……」
「自分でも馬鹿みたいだと思ってる」
ボスキは前を向いたまま続ける。
「だから、少し距離を置こうと思った」
あかねはしばらく黙っていた。
そして――
「……ふふ」
「何だよ」
「ボスキでも嫉妬するんだね」
「笑うな」
「だって……」
あかねは楽しそうに笑った。
「ちょっと嬉しい」
ボスキが驚いたようにあかねを見る。
「……何でだ」
「私のこと、ちゃんと見てくれてたんだなって思ったから」
「……」
ボスキは何も言えなかった。
ただ、少しだけ照れたように視線を逸らした。
コメント
1件
あかねとボスキの雨宿り、めっちゃ良かったです……! 傘に入れる「入れ」の一言に照れ隠しと優しさがにじんでいて、その後ろめたそうに「嫉妬した」って吐露したシーンで心臓が跳ねました。 「ちょっと嬉しい」って笑ったあかねの言葉が、これまでの距離感を全部ひっくり返す感じで、二人の関係が動き出したのが伝わってきました。 雨の日のしっとりした空気と、ちょっと不器用なお互いの距離感、すごく好きです。