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ちろりーぬ
164
なーさん。です
200
ガールズトーク
この日、咲茉は雪の家に泊まりに来ていた。本来ならまりあと3人でパジャマパーティーの予定だったのだが、彼女が楽しみのあまり模試の日と重なっていることを失念してしまった為2人に。もちろん、雪と咲茉は日を改めようと提案したのだけれど、大真面目なまりあに最初に決めた日程で予定を決行して欲しいと言われ、仕方なく2人でパジャマパーティーを行うことになったのだった。
「エマちゃんのパジャマ、もしかしてリカバリーウェアの“BAKUSUI”?」
『そうそう。急遽ドラマに出演することになったから、そのお礼にって狸塚さんからいただいたの』
「そうなんだ!いいね!色も可愛い」
『ありがとう。雪ちゃんのパジャマも可愛いね』
「えへへっ、ありがと〜 」
まずはお互いのパジャマを褒め合う。そしてお年頃の女の子なので、当然、あの話題になる。
「今年はバレンタイン何作ろうかな〜」
『あ、もうそんな時期だよね。雪ちゃんは鹿島くんに本命チョコあげるの?』
「えっ!?や、あのっ…えっと……」
咲茉の質問に雪が一瞬で顔を真っ赤に染める。
『あれ?鹿島くんのことが好きなんだと思ってたけど』
「…う、うん……。合ってる。…けど、まだそんな勇気ないというか、もし何かあげるにしても保育ルームのみんなにって形で渡すかも…」
『そっか。まりあちゃんはまだ恋心に気付いてないみたいだけど、鹿島くんを好きって自覚するのも時間の問題かもしれないよね』
雪は親友であり恋のライバルでもあるまりあの顔を思い浮かべた。
「そうだね…。けどまず、鹿島くんにとっての優先度1位は虎太郎くんだと思うから…。あの2人の間に割って入ることはまだできないかも」
『うーん。確かにそうだね…』
以前、竜一が知らない女の子から告白された時に“今は弟との時間を大事にしたい”と言っていたのを聞いたことを思い出した2人。
「…だから多分、今年もまりあちゃんと一緒にお菓子作って、保育ルームに遊びに行こうかなって」
『そっか。……私は雪ちゃんもまりあちゃんも両方応援してるよ』
「えへへ。ありがとう」
そこで雪は以前から気になっていたことを聞いてみることにした。
「…あ、あのね、エマちゃん。今、鹿島くんと同じお家に住んでるんだよね。…その…、ドキドキしたりとか鹿島くんを男の子として意識したりしないの?」
『うん、しない』
「ええっ!?」
咲茉がけろっとした様子で答えるので雪が驚く。
『鹿島くんはほんとにいい子だと思うよ。優しいし真っ直ぐで。でも私、鹿島くんに対してドキドキしたりはしないかな。もう家族の域というか…』
「そ、そうなんだ…」
『たまにハグしたりするけど、べつにその状況にときめいたりもしない』
「えっ!?は、はぐ!?」
『うん』
自分だったらそんな状況、心臓が爆発してしまいそうだ。
「恥ずかしくないの?」
『うん。ハグは慣れてる』
「慣れてる!?」
『あれ?言ってなかったけ。私祖母がオランダ人で、子どもの頃私も少しだけ向こうに住んでたの。ハグの習慣がある文化の国で育ったからどうってことないの』
「あ、なるほど……」
すとんと納得のいく雪。
『鹿島くんとのハグはほんとにあったかくて嬉しい気持ちになるよ。でもやっぱり好きな人に対するドキドキは感じないかな』
「そっか」
ん?
「エマちゃん、好きな人とも普通にハグできるの?」
『…そ、それは……。ちょっと難しい…』
今度は咲茉が顔を赤らめた。
「えっと、ずっと思ってたんだけど、エマちゃんってカレシいたことある?」
『ううん。ない。誰かを好きになったことは2、3回あるけど、お付き合いはないんだ』
「えっ!こんなに可愛いのに。いっぱい告白されるでしょ?」
『うーん…、まあ……。でも自分が好きになったわけじゃないから断るし、私が好きになった人には告白もできずに恋が終わってたから』
「えぇ〜!!」
芸能人顔負けの(本人ももう芸能人の仲間入りしているけれど)美貌を持つ咲茉でも失恋の経験があったなんて。
「じゃっ、じゃあ!今好きな人はいるの?」
『!』
咲茉の顔がまた真っ赤になった。
『…………いる……』
今にも掻き消えそうに小さな小さな声で答える咲茉。
「きゃーっ!知らなかった!誰?誰?」
雪は咲茉と恋バナができて嬉しくて仕方がない。
『………くん…』
「えっ?」
『…狼谷くん……』
一瞬で雪の大きな瞳が更に大きく見開かれる。
「狼谷くん!?」
『うん…』
クッションをぎゅっと抱き締めてそこに顔をうずめる咲茉。色素の薄い髪から覗く肌は耳まで真っ赤になっている。
「わあ〜!エマちゃん!私応援してるから!お似合いだと思うよー!」
雪が満面の笑みで咲茉の肩を軽く叩く。
「じゃあ、狼谷くんにハグは?」
『むっ、無理無理無理!心臓がもたないよ…!』
なるほど。好きになった相手にはハグはできないのか。
「でもエマちゃん、狼谷くんたちと一緒にいる時そんな素振り全然見せないからちっとも気付かなかったよ」
『必死に平静を装ってるけど、狼谷くんと目が合ったり話す度に心臓が大暴れして大変なの。…この前だって、冷たくなった私の手を握ってあっためてくれたりとか……』
「何それ何それ!きゃーっ!狼谷くんそんなことするんだ!」
無愛想でクールな印象の狼谷隼が1人の女の子に対してはそんな優しさを見せているのを想像して堪らなくなる雪。
『すっごく嬉しかったんだけど、狼谷くん優しいから。手が冷えてる人にはきっと誰にでもそうやってあげるんだろうなって…』
「……………」
何ということだろう。咲茉は隼から自分だけ特別に扱われているということに気付いていないらしい。しかも誰にでもそうしていると思っているなんて。
「告白は?それこそバレンタインで本命チョコ渡すとか」
『……バレンタインは何か渡すかもしれないけど、告白はできないかな…』
「えっ、なんで?」
咲茉が寂しそうに目を伏せた。
『今の関係が壊れるのが嫌だし、そもそもそんな勇気ないもん…』
「エマちゃん…」
『告白して気まずくなるくらいだったら、今まで通り同じ部活の仲間として一緒に過ごしたい』
「うーん……」
自分やまりあの想いは敏感に感じ取ったくせに、咲茉は恐らく隼も彼女を好いているであろうことに1ミリも気付いていないようだ。
今まで学園のどんな美女や美少女から告白されたってアプローチされたって靡かなかった狼谷隼が、結城咲茉に対しては今まで周りが見たことのないような優しさを見せていると知った雪。これは何としてでも2人の恋路を応援しなければ。
「私ね。狼谷くんもエマちゃんのこと、きっとただの部活仲間とは思ってないと思うよ」
『え…』
「去年の夏にさ、エマちゃんが倒れちゃったのを狼谷くんが抱っこして運んであげたの私も見てて。それでしばらく2人が付き合ってるんじゃないかって噂が流れてたんだよ」
『えっ、そうなの?そんな噂、狼谷くんに申し訳ない……』
「もー!なんでそうなるの!」
咲茉は好きな人のこととなると突然ポンコツになるらしい。
「今までああやって倒れちゃう人がいても、狼谷くんが運ぶ時は他の人と一緒に担架で運んであげてたんだよ。それがエマちゃんは自らお姫様抱っこして。そんなの絶対エマちゃんのこと特別に思ってるに決まってるよ!」
『うーん…』
「それに思い返せば、狼谷くんがエマちゃんに対してすごく優しくしてる場面結構あるよ。ちゃんと大事に思ってくれてるんだよ」
『そうなのかな……』
「うん!絶対そう!」
だから自信持って!、と雪が咲茉の両肩を励ますようにぽんぽんっと叩いた。
『バレンタイン…、私もまりあちゃんと雪ちゃんと一緒に作りたいな……。それで、もし狼谷くんと2人きりになるチャンスがあったら、好きですって言ってみようと思う…』
「!もちろんだよー!エマちゃんも一緒に作ろう!」
『ありがとう』
まだ頬を赤くしたまま、咲茉が嬉しそうに微笑んだ。
その後はそれぞれが竜一や隼の好きなところやキュンとしたエピソードを語り合い、テンションの上がった乙女2人は眠さも忘れて夜明け近くまで絶えずお喋りを続けていた。
つづく
コメント
1件
読了したよ〜!第28話「ガールズトーク」、めっちゃエモかった😭💕 咲茉ちゃんが「狼谷くん」って名前出した瞬間、雪ちゃんと一緒に私も「きゃーっ!」って叫んじゃったよ笑笑。普段クールで大人っぽい咲茉ちゃんが、好きな人の話になると耳まで真っ赤になって♡♡♡化するギャップが尊すぎる…!!あと「ハグは慣れてる」って言いながら「狼谷くんとのハグは無理」ってなるの、恋する乙女すぎて泣ける。 雪ちゃんが「狼谷くんも絶対特別に思ってるよ!」って背中押すところ、親友っていいなあってジーンとしたよ。バレンタイン本番が楽しみすぎる…!3人の恋、全部応援してるからね🌸✨