ヒロくんとの記憶が風のように胸を抜けていったあと、じゃぱぱは静かな通路を歩いていた。
次の記憶へ続く、その先にあったのは――
ピカピカのネオン。
電子音。
メダルの触れ合う音。
太鼓のドンドンという軽快なリズム。
ゲームセンターだった。
「……ここにも、誰かが待ってるんだよな。」
じゃぱぱが一歩踏み入れた瞬間、
「じゃぱぱぁーーっ!! やっと来た!!」
勢いよく横から飛びつくように、
明るい声が転がってきた。
「うわっ!? だ、だれ――」
「俺! 俺だよ、ゆあん!!」
息を切らせながら駆け寄ってきたのは、
元気いっぱいの笑顔をした ゆあんくん だった。
「ゆ、ゆあんくん……!」
「よかったぁ……! 俺さ、ずっと待ってたんだよ!?
ここで! ずっと!」
じゃぱぱの心臓が、強く鳴った。
「……俺のこと、分かる?」
「はっ? 分かるに決まってんじゃん!」
ゆあんくんは腕を組んでふんっとする。
「むしろ、俺のこと忘れてたら怒るからな?」
「……ごめん。」
「えっ、ほんとに忘れてたの!?」
大きく目を見開いてゆあんくんが動きを止める。
「え、うそ、ちょっとショック……」
胸がちくりと痛む。
「でも!」
ゆあんくんはすぐ笑顔に戻った。
「思い出せばいいし! 俺、思い出させるの得意だからな!」
その言葉に、自然と笑みがこぼれた。
「思い出させる、って……どうやって?」
「これで決まりだろ!!」
ゆあんくんが指差したのは
** 音ゲーの筐体 ― リズムゲーム **
だった。
「あぁ……俺たち、よく一緒にやってた?」
「やってたっ!!
むしろ俺の“特訓相手”だったんだからな?」
「俺が……?」
「そうだよ!」
ゆあんくんは胸を張る。
「俺、なかなか上手く叩けなくてさ。
でもじゃぱぱが隣でずっと叩き方教えてくれて……」
ゆあんくんの瞳が、少し柔らかくなる。
「その時間が、すっごい楽しかったんだ。」
じゃぱぱの胸が熱くなる。
「……やろっか、ゆあんくん。」
「やる!!」
二人は並んで台に立った。
曲が始まる。
軽快な音が広がる。
流れてくるノーツ。
ゆあんくんは最初こそ控えめに叩いていたが――
「じゃぱぱ!ここで両手だ!!」
リズムに乗り、
体全部で楽しんでいるのが伝わる。
「お前やっぱすげぇわ!
一緒だとすげえ楽しい!」
「お前も上手いじゃん。」
「えへへ!」
目が合うと、ゆあんくんはニカッと笑った。
その笑顔が、
じゃぱぱの頭の奥で光を灯す。
――記憶が戻ってくる。
ゆあんくんと笑いながら叩いた音。
負けて悔しがる顔。
成功してハイタッチする瞬間。
遅くまで遊んで、怒られて帰ったあの日。
全部が、鮮やかによみがえる。
曲が終わると、
ゆあんくんはぷはぁっと息を吐いて笑った。
「なぁ、じゃぱぱ。」
「ん?」
「俺さ……また一緒に遊びたいんだ。
前みたいに、いっぱい笑ってさ。」
じゃぱぱはゆっくりとうなずいた。
「俺も……そう思う。」
「マジ!? ほんと!? やったーー!!」
ゆあんくんはその場で飛び跳ねる。
その無邪気さに、胸がぎゅっと締めつけられる。
その瞬間――
ゆあんくんの体が淡く輝き始めた。
「あ……時間か。」
「ゆあんくん!!」
「大丈夫!!」
ゆあんくんは明るく笑って言った。
「じゃぱぱが俺のこと思い出してくれたから、
もうそれで十分なんだ!
だって俺たち、また遊べるし!!」
光が強まる。
「じゃぱぱ!」
ゆあんくんは手を振る。
「ぜっっったいに、また一緒にやろうな!!
約束だぞ!!」
「おう!!」
「じゃあ――またなっ!!」
笑顔のまま、ゆあんくんは光に包まれて消えた。
残されたゲームセンターには、
リズムの余韻だけが静かに響いていた。
コメント
2件
🍗桾との思い出はゲームセンターなんですね、 皆彡、好きな物とか好きな場所で待ってるんですかね?
ゆあんくんの元気な感じ元気づけられるな…