『…………ごめん』
S side
俺はころにそう一言言った
俯きながら
散々傷つけといて
合わせる顔がなかったから
ころは
返事をしなかった
俺と同様
俯いて
その場に立ち尽くしていた
俺は少しずつ目線を上げて
ころの身体を見た
俺が最後にころを見た時と違っていて
俺が強く握りしめていた腕は
棒のように細く赤くなって
綺麗な肉付きをしていた足は
ズボンで隠れていて見えはしないが
少し露出している足首は
それで立っていられるのかと思うほどに
細い
それ以前に
身体全体が
痩せ細っていて
今にも倒れそうな状態だった
もう少し上へ目線を上げて
顔を見ると
全体的にほんのりと髪が伸びて
前髪が
ころの綺麗なサファイアような目を
隠すくらいに長くなっていた
そのサファイアのような目には
きらきらと輝いていた虹彩は無く
宝石とは打って変わって
深海のように暗い目になっていた
そんなころを見ていると
とてもいたたまれなくなって
悲しくて
辛くて
自分に対して
怒りが込み上げてきた
ずっとここに立ち止まっているという訳にもいけない気がして
俺はころに
こう話しかけた
「その………近くの店に入らないか…?」
「突っ立ってるのも疲れるし……………」
やっぱり返事はない
と思ったが
ころは俯きながらも頷いてくれた
それがなんだか嬉しくて
愛らしく感じた
C side
彼に『…………ごめん』と言われた
僕は何に対しての「ごめん」なのか
分からず
ただ黙っていた
そんな僕と彼はお互い俯いていて
お互いを見ようとはしなかった
僕は見る勇気なんてなくて
もし見たら
泣きそうになる
辛くなる
そう思って
見はしなかった
でも彼は違くて
少しずつだけど
彼は僕を見た
足から腕、そして身体、頭と時間をかけて
僕は見られたくなかった
今の僕の姿を
痩せ細って抱き心地の良くない身体
病人めいた手足
大して手入れもされていない髪
僕のすべて
彼に見られて幻滅されるのが
嫌で
怖くて
見られたくなかった
そんな僕の思いとは裏腹に彼は僕を見ていく
途中、とても辛そうな顔をしつつ
ゆっくりゆっくり時間をかけて
顔は遂に向き上がって
向き上がると彼は
『その………近くの店に入らないか…?』
『突っ立ってるのも疲れるし……………』と
僕に声をかけた
その声はとても優しくて辛そうで苦しそうだった
話をしたい訳じゃない、誘われたことを喜んでる訳じゃないけど
彼と
少しでも一緒にいたいと思ってしまって
”彼に見られたくない”
そんな思いよりも「一緒にいたい」という思いの方が勝ってしまって
かけてくれた言葉に対して僕は
「YES」の意味を込めた頷きをした
すると彼は嬉しそうに僕を見つめた
それから近くのファミレスへと足を運んだ
本人様関係なし
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続き待ってます( ☆∀☆)