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「勿論、そういった依頼をうちでは取り扱っております。それではより詳しくお話を伺ってもよろしいでしょうか?」

「はい」

「失礼ですが、ご主人に女性の影があるとお気付きになったのはいつ頃、どういった経緯で?」

「今から半年程前です。夫のスーツのポケットにレシートが入っていて、その裏に『早く別れろ』と書いてありました」

「そうですか……。そのレシートの方は?」

「証拠として取ってあります」

「それ以降も、何かメッセージのような物は?」

「いえ、それ一度きりです。ただ、夫の帰りが遅い日は決まって同じ香水の匂いがしています」

「香水ですか……」

「はい。ですから、同じ女性と会っているんだと思っています」

「その事を、ご主人に問いただしたりは?」

「しません。したところで、適当にかわされるだけですから」

「そうですか。ですが、それは賢明な判断ですね。証拠が揃わない内はかえって泳がせておく方がいいですから」

「そう、ですよね」

「それで、最終的にはご主人と離婚を?」

「はい。言い逃れが出来ないよう証拠を揃えて突き付けて、別れた後での暮らしが困らないくらいのお金が貰えればと思っています」

「分かりました。それでは、依頼を受けるにあたって諸々の手続きをお願いしますね」

「はい」

こうして私は無事に依頼する事に成功した。

ただ依頼をする為だけにこの事務所に来て、杉野さんに出逢った、それだけだったのに、彼との出逢いは私の今後を大きく変えてゆく事になるのを、この時の私は知る由も無かった。

それからも、貴哉は相変わらずだった。

嘘でも他に帰りが遅くなる理由を作ればいいのに、まるで馬鹿の一つ覚えみたいに『仕事が忙しい』の一点張り。

そんなんじゃ、例え不倫している事に気付いてなくても怪しむと思う。

最近では悪化して、休日にも仕事を理由に出掛ける日が増えていく。

以前の私なら、モヤモヤが募るだけだった。

だけど、証拠集めをしている今は逆に嬉しい。

だって、不倫相手と会う回数が増えれば増える程、証拠が増えていくのだから。

依頼をしてから二週間後、杉野さんの方から呼び出しがあって、市外のカフェで落ち合う事に。

「お待たせしました」

「ああ、すみませんわざわざこんなところまで」

「いえ」

自由の無い私は、あまり外出が出来ない。それには理由があって、貴哉は毎日決まった時間に電話を掛けて来るのだ。しかも、家の電話に。

初めは何故好きでも無い相手をそこまで束縛するの? なんて思ったけれど、女が居ると知ってからその理由に合点がいった。

彼は営業の仕事をしていて外回りが多く、仕事中にも女と会っているのかもしれないと。

だから、私が自由に出掛けて万が一どこかで鉢合わせしないように、私の居場所を常に知っておきたいのだと。

運命の彼と極上の愛を〜夫の不倫の証拠集めの為に雇った探偵の彼は、沢山の愛で私を満たしてくれる〜

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