なるほど、直接の会話のやり取りも無いのに、サニー経由の言葉を聞いただけで論理的な帰結に辿り着くとは、流石はナッキが賢いと評するオーリの才女ぶりである。
すぐさま同意して見せたカエルの大臣、カジカも中々、いつも通り防衛案件にしようとしたカーサも、お花畑なサムも流石と言わざる得ないだろう。
『美しヶ池』きっての知性派の中に何でヤツの声が聞こえたかは甚(はなは)だ疑問の残る所ではあるが、多分、お腹でも空いていたのではなかろうか?
そんな風な感想を抱いてしまう、私、観察者である。
これらのメンバーの言葉を、片言で聞き取れているヘロンは兎も角、チンプンカンプンな表情を浮かべていたドラゴには、ナッキが通訳してあげた結果、彼は素っ頓狂な声を上げたのである。
「ルキフェル様と言うか、真なる聖女コユキ様と聖魔騎士、善悪様なら二十年以上前にこの星、地球をデイモスによる破壊から守る為に、つき従えた数十万柱の神々と共に、あの宙天に旅立ったそうです…… もうとっくの昔にその御身(おんみ)を隠されているのですよ…… ぐすっ!」
ここまで役立たず感が強めだったくせに、急激に存在感を高めて来ているヘロンがここでもぶっこんで来た。
「おいおい、ドラゴよ! お前ってば聞いていないのかぁ? コユキ様と善悪様、つき従ったアスタロト様やバアル様、サタナキア様、それ以外の魔神たちは一つの遺漏(いろう)無く、彼(か)の御方(おんかた)様、カーリー様に残される皆様を委譲された、そう聞いたぞ、私はぁ!」
賢いオーリが片言のヘロンに答えて言う。
「カーリー? 誰なの?」
答えたのはかつて『六道(りくどう)の守護者』に所属していたドラゴの羽音である。
「『六道(りくどう)の守護者』は最強の戦闘集団ですよ! その中でもリーダーのリエさん、副将のスカンダさん、スカンダさんの弟で同じく魔神クラスだったガネーシャさんの強さと言ったら、文字通り、別格でしたよ! そのお二人、スカンダ、いいえアレキサンドロス三世とガネーシャの母君、コユキ様善悪様の守護者、スプラタ・マンユ最強の魔王、シヴァ様の奥方であり、地上に残られた最強にして最も尊(たっと)き存在、それこそがっ、カーリー様なのですよぉ!」
通訳するのが面倒臭かったのか、それとも思ったままを口にしてしまったのかは定かではないが、ナッキがはっきりとした声で言う。
「そうなんだね、んじゃあ、そのカーリーさんが死んだとか、何か有ったとかなんじゃないのぉ?」
「あっ」
「うっ」
ドラゴとヘロンの絶句が、何気ないナッキの言葉が真実なんじゃないかと思わせるに充分な音であった。
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