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「FORSAKEN」の深部に位置する、打ち捨てられた地下研究室。
壊れた遠心分離機やガラス器具が散乱するこの場所は、いつしかRatのプライベートな実験場兼、サバイバーの隠れ家となっていた。
壁に掛けられた黒板には、Gatitoの解剖図や骨格予測図が緻密に書き込まれている。
その前に立つRatは、右手の黒手袋を外した素手で、ゆっくりと自身の胸元に触れていた。
「……おかしいな。心拍数、毎分百二十。血圧の上昇、体温の微小な変動。自律神経系に目立った異常はない。それなのに、この胸の奥の不快なほどの圧迫感は何だ」
Ratはヘルメットとサングラスをずらし、赤い眼を深く細めた。
思考の渦の中心にいるのは、いつもなら「魅力的な検体」として処理されるはずの黒猫の獣人・Gatitoだった。
出会った当初、Ratの興味は純粋な科学的探究心に過ぎなかった。
猫科獣人としての骨格、ドミノクラウンの下から覗く赤い眼、トゲ付き首輪が及ぼす神経への影響、そして何より、胴体の皮膚が透けて内部の美しい肋骨が脈動する奇跡的な身体構造。
それらはすべて、狂気の科学者である彼を満たす「データ」のはずだった。
だが、いつからだろうか。
「検体としての反応を確かめるため」と理由をつけて首筋を撫で回した時、強がりの言葉を飲み込んで「ゴロゴロ……」と喉を鳴らしたあの音。
「爪の硬度を測定する」と称して手首を強引に掴み上げた時、赤く潤んだ瞳が、困惑で揺れていたあの表情。
「密室でお茶会をする」というスペクターの悪戯で抱きすくめた時、オラオラ系のプライドを崩壊させ、耳をペタリと寝かせて真っ赤になったあの愛くるしい顔。
「……データ収集のため、ではないな」
Ratの口から、掠れたつぶやきが漏れた。
自分の脳内を占領しているのは、「肋骨の断面図が知りたい」という冷徹な好奇心ではない。
あの上品とは言えない口調で吐き捨てられる「ドブネズミ」という罵倒を、もう一度至近距離で聴きたいという欲求。
自分以外の誰の前でも見せない、あの隙だらけで甘い、赤面した表情を、自分だけのものにしたいという衝動。
それは、純粋な「探究心」という美しい言葉で覆い隠すには、あまりにも泥臭く、禍々しい「独占欲」そのものだった。
「なるほど……マッドサイエンティストが自作の試薬に犯されるような、実にあっけない落とし穴だ」
Ratは自嘲気味に口元を歪めた。
左手の赤手袋をギュッと握りしめる。長いピンクのしっぽが、彼の内面の激しい焦燥を映すように床を強く叩いた。
サバイバーとキラー。
喰われる者と喰う者。
この破綻したデスゲームの理の中で、自分はあの強がりな黒猫を単なる「観察対象」として見ることができなくなっていた。
彼を他のキラーの手から奪いたい。
スペクターの暇つぶしの道具から引き離したい。
そして、あの透ける胴体の奥で激しく脈打つ心臓の鼓動を、自分だけの腕の中で永遠に聴いていたい。
「Gatito……君は僕の実験体(獲物)なんかじゃない。……僕を狂わせる、唯一の存在だ」
城プル
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#azure
ゆ♨️
133
#1x1x1x1
ゆ♨️
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99
Ratは黒板に描かれたGatitoのスケッチにゆっくりと手を重ねた。
赤い瞳に宿るのは、冷ややかな科学の光ではなく、一人の男としての、暗く深い執着の炎だった。