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3人は居間に通される。遅れて花村も到着した。

「ようやく出来たから、みんな食べよう。」

囲炉裏に提げてある鍋からはいい香りが漂っている。

「花村君も座って座って。」

総帥という肩書きとは裏腹にそこにいるのは孫を迎えるお爺ちゃんそのものだ。

一ノ瀬はそれぞれの器に出来上がった具材を入れる。

「いただきます!」

ハル、トウマ、花村は一斉に食事を食べ始める。

「美味しい!」

「ミズキちゃんもどうぞ。 」

ミズキはうつむいて座ったままだ。一ノ瀬が再度声をかけようとした時、ミズキはうつ伏せて泣き始めた。

「死にたい•••ご飯は、いらない、••••だから、死にたいっ•••!」

嗚咽に混じり絞り出した言葉に静かになる。

「•••ようやく、声を出してくれたね。うんうん、よかったよかった。」

驚きどうしていいかわからない3人とは対照的に一ノ瀬はミズキの背中をさする。

「死にたいと思うのなら•••そうだな、よかったら、しばらく叶のお手伝いをしてみないかな?」

「え、あの、叶の?」

花村が驚き声を出す。

「そうだよ、彼女は適任だと思うんだ。どうかな。それをしてみて死にたいなら、あの場所に帰るといい。もう少し時間が必要なのかもしれないからね。」

ミズキは小さくうなづいた。

「彼女には私から話しておくから大丈夫だからね。他の2人はしばらく訓練と一緒に外の世界のことを学んでもらおうかな。」

「はい!」

「わかりました。」

「じゃあご飯が終わったらお風呂に入って。明日は朝早いから。」

そう言ってその日は終わり、それぞれの部屋に戻った。


翌朝、ミズキは布団を剥ぎ取られて起きた。

「朝、早く支度して。」

「は、はい。」

長い髪で表情はわからないが、畑で作業をしていた女性が立っていた。

昨日とは違い、白い隊服を着ているのが印象的だ。

ミズキは急いで着替えて廊下に出る。

「じゃあ行くよ。」

そう言って歩き出してしまう。ミズキは急いで後ろを着いて行った。

どこに行くのかよりも見慣れない屋敷にキョロキョロしてしまう。

叶は視線を時折ミズキに向ける。まるで迷子にならないか確認しているようだ。


2人が着いた先は敷地内にある畑だ。

「必要な分だけ収穫するよ。」

投げて渡されたブカブカの軍手をはめてミズキは作業に移る。

あの場所でみんなと一緒にしたことのある作業だから迷わず行える。

ただあの時と違うのは大切な人を失った気持ちを受け止めてくれる大人が少ないことだ。

「ミズキちゃん、おはよう!」

ジャージ姿の花村が通りかかり声をかけるが、叶の姿を見た瞬間後退る。

「なに。」

「え、いや、お前、マジか。」

花村が叶に近づく。

「ちょっと髪纏めて顔くらい出せよ。ミズキちゃんが困るだろう。それに服も隊服なんて威圧感しかないんだからさ。」

「うるさい、触るな!」

「ほら、ミズキちゃん困ってる!」

叶は花村を振り払おうとする。

そんな2人の姿を見て、ミズキは困惑しているが、通りかかりの一ノ瀬が声をかける。

「相変わらず仲がいいね。」

「総帥、おはようございます。」

叶は花村をかわし敬礼をする。

「おはようございます。」

遅れて花村も敬礼をする。

「2人ともミズキちゃん、おはよう。」

「ミズキ、敬礼。」

叶の一言にミズキも慌てて敬礼をする。そんな様子を見て、一ノ瀬は笑った。

「いいよ、朝から堅苦しい。それより花村君、あの2人を起こしてあげてくれないかな。」

裏山の入り口前に息を切らしたハルとトウマの姿が見えた。

「総帥、派手にやりましたね。」

「いやいや、中々筋が良くてね。 」

そう言って一ノ瀬は屋敷に戻って行った。

花村に抱えられ、2人も屋敷に戻った。

「ミズキ、戻るよ。 」

「はい。」

その時叶の手を見ると軍手はなく土で汚れていた。

(貸してくれたんだ。)

それでもなんと声をかければいいのかわからず、黙って後ろを着いていくしかなかった。

朝食の準備も片付けも叶はテキパキこなし、ミズキと花村は叶の指示に従い一緒に準備をする。ハルとトウマは床に転がされいた。ミズキが通りかかるとハルが「ばあちゃん達より早かった。」と呟く声が聞こえた。


食事の後、ミズキと叶は屋敷の掃除に移る。

「••••瓜生中将、ここでなにをされているんですか?」

「叶か、総帥に用事があったんだが、取り込み中らしくてな。俺も掃除を頼まれちまった。」

叶が呆れた声を出した先には昨日の初老の男性がいた。しかも割烹着を着てはたき掃除をしている。

「ミズキちゃん、おはよう。よく眠れたかな。いいか、掃除は上からするんだぞ。」

「ミズキが困ります。やめてください。」

「•••似ているな。」

そう言って目を細めてミズキの頭を撫でる瓜生はミズキを通して別の誰かを思い出している様だった。

「やめてください。」

叶の声が響く。その声にはさっきよりも強い拒絶が含まれていた。

「•••悪かった。ここは俺がしておくから、お前達は別の場所を頼む。」

「ミズキ、行くよ。」

叶と瓜生を交互に見て、ミズキは叶の後を追う。瓜生は優しく手を振って見送った。

「瓜生、ダメだよ。叶はまだ立ち直りかけてる途中なんだから。」

「すみません総帥。ですが、久しぶりに叶から嬉しそうな気配がしたもので。」

「あれから3年だね。」

「そうですね、我々も多くの犠牲を払いすぎました。」

「大丈夫、彼らさえ生きていれば、大丈夫だよ。最後にはきっとうまくいく。あ、ここも埃あるから頼むよ。」

そう言って一ノ瀬はまた自分の用事に戻った。

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