まるで勇気を奮い起そうとするように、彼女は周りにいる子達をさっと見渡した、そしてとりわけ彼女には惹きつけられた
「そうよ!それが何か?」
「はじめまして、ブラック・サイモンです」
ブラックは右手を差し出し、メガネっ子を見つめた
最初彼女は目を丸くしてためらっていたが、やがてうないずいた
「え・・・三橋麗奈です・・・銀行員よ・・・ 」
そう言って手を差し出したブラックは、その手を包み込むようにして握った、小さくてやわらかく爪は短くて清潔だ
自分の名前を言ってもピンと来ていない様子の彼女を見て、つまりこの銀行員の眼鏡ちゃんは、選手の名前も知らないスポーツに抗議しているということだ
もちろん自分もこの世界の花形スターだというわけにはいかないが、そこそこ名前は売れていた
「はじめまして、三橋さん、もしかしたら何か手伝えることがあるかもしれないと思ってみなさんにお声をかけさせていただいたの、何であれ、自分なりの意見を持つ権利がこの国にはあるわ」
彼は彼女の手を掴んだまま言った
「もしかしたらジムの中の人にもビラを見てもらった方がいいんじゃない?道行く人があのジムに興味があるかなんてわからないでしょう? 」
ブラックはヒラヒラとピンクのビラを振って見せた
「すぐそこのゴミ箱に沢山捨てられているわよ」
「そんな!駄目よ!」
一人のグループの子が言った
「だってジムの中には格闘家がたむろしてるんでしょう?危険だわ! 」
彼女たちの発する「格闘家」は、まるで化け物に匹敵する侮辱的なニュアンスが込められていた
ブラックは思わず笑いそうになったが、真剣な顔つきの彼女達に失礼だと思い笑いをかみ殺した
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