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ひらり、と木の葉が一枚舞っている。
雲ひとつない昼過ぎ、陸は家の外で、煙草片手にぼうっと空を眺めていた。
随分前に海から貰ったのが余っていたので、使い切ってしまおうとわざわざ外に出たのだ。
「っはあ…やっぱり酒の方がいいな…」
そう独り言を零す。
その時、コツコツと足音が響き、 背後から聞き慣れた声が飛んできた。
「じゃあ今度は酒にしようか。」
持っていた煙草を口に咥えると、陸は振り向き、手振りで帰れと相手に伝える。
が、退こうとはしないようだ。
「何の用ですか、わざわざ上流武士がここまで来て」
「素っ気ないな。時間が空いたからお前に会いに来ただけだよ」
面倒くさそうに伏せ気味でいた目を開くと、陸は距離を詰めて言う。
「なら何か奢ってでもくれるんですか?」
「お前の相手を選ばない所好きだよ。団子でも買ってやろうか」
陸の肩を寄せて言う。
今は周りに人が居ないとは言え、ここでは無防備。
肩の手を解き、家の中へ入る。
案の定海も付いてきた。
「珍しいな、家に入るのを許してくれるなんてよ。機嫌いいのか?」
「まあ、甘味の約束が出来たので。」
それにしても…と、陸は海の方を向き直す。
「よく一人で来れましたねアンタ。道中に女寄って来ませんでした?」
「躱すのは難しい事じゃない…それよりお前も同じじゃあないのか。外に出る度男に群がられて大変だろう?」
「…まあ、それはそうですが」
自分も男なのに男が寄るのは普通じゃあないだろう…、と言おうとして声が詰まった。
今目の前にいる男に、自分は組み敷かれたことがある。
そんな相手の前で言うのはどんなものか、と寸での所で言を消したのだ。
「…どうした、気遣ってでもくれたのか?」
「お見通しですか。」
ずい、と腰を抱き寄せられる。
今ここでしよう、と海が言っても、恐らく陸は否定しないだろう。
だが、陸から言うことはない。あくまで否定はしないだけ、自分から求めるつもりは一切無いのだ。
「そろそろ出た方が良いんじゃないですか。」
「時間は空けてきた。お前と会えるなら何だってする」
「…前から変わりませんね、その欲深さ」
満更でもない様子で陸は言う。
禁断の恋とでも言った所か。
他人に決して暴かれてはならない二人の仲は、いつまで続くことが出来るのだろう。