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#緑愛され
ゆらね🎼🍵🍍🌸
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あの夏が飽和する
これは何年か前の君との逃避行の話。
季節は夏
梅雨の時期で今日は雨が降っていた。
桜「、、、2日連続で学校、サボっちゃった。」
別に学校が嫌いな訳では無い。
…好きでもないけど。
サボった理由は親から、
「”家のことをしておけ”」
と言われたから。
ほんと、どうしようもない親だよね。
やることがなくなって自分の部屋でゴロゴロしてたら、突然
ピンポーン
と、音が鳴った。
親が宅配でも頼んだのか、と思いながら玄関へ向かう。
ガチャ
扉を開けるとそこには、、、
ずぶ濡れまま、泣いている君がいた。
そうしたら君は震えた声でこう言った。
水「昨日、人を殺したんだ…」
一瞬俺は固まった。
でもこさめがずぶ濡れなことを思い出して、
桜「、とりあえず家、入って。」
桜「寒いでしょ。」
こさめを家に入れて、
お風呂に入れて、
着替えさせて、
それから話を聞いた。
水「…殺したのは、隣の席の、いつもいじめてくるあいつ。」
水「もう、嫌になって、肩を突き飛ばしたら、打ちどころが悪かった。」
俺はまぁ、納得した。
それと同時に自分に怒りが湧いた。
昨日学校に行っていれば、こさめはこんなことをしないで済んだのかもしれない。
こんな思いをしないで済んだのかもしれない。
そんな事を考えているとこさめは、
水「もう、ここにはいられないと思うし、どこか遠いところで死んでくる。」
今まで被害者だったのに、殺してしまったら加害者になってしまう。
今までの生活はできないと思ったのだろう。
君はひっそり死のうと考えて、俺に最後の挨拶をしに来たのだろう。
そう言ったこさめに、俺は言った。
桜「それじゃ、俺も連れてって。」
遠いところへ行くための荷物。
財布はいる。携帯ゲームもまぁ、いるだろう。後は、、、
ナイフ、俺にとっては自分の身を守るためにいつも持っているもの。
それらを全部カバンに詰めて、
あの日記も、あの写真も、過去は全部壊していこう。
この過去があれば、今ある問題は少しでも解決するかもしれない。
でも君とこの旅を実行するなら、もう、過去は見ない。
これは、人殺しと、ダメ人間の、君と俺の旅だ。
そうして、俺らは逃げ出した。
この、俺らが生活していた、
ちっぽけで狭い世界から逃げ出せば、苦しまなくていい、
広い世界へ行けるかもしれない。
あんなろくでもない家族も、
一人標的をつくることでしか平和を保てないクラスの奴らも、
全部捨てて君と2人で。
遠くへ行くために電車に乗った。
平日のこの時間は電車に乗ってる人は少ない。
ていうか、誰もいない。
俺らは静かな電車の中で、
「遠い遠い誰もいない場所で2人で死のう。」
と約束をした。
別にこの約束に俺はなんとも思わなかった。
だって、この世界に価値なんてない。
人殺しなんてそこら辺にいる。
だから、こさめは何も悪くない。
そして、こさめには、俺しか信用できる人がいないのだろう。
俺もこさめしか信用できない。
俺達は、お互いに唯一信頼できる相手だった。
結局、俺らは誰にも愛されたことがなかった。
そんな共通点で引き合わされ、
“愛されたい”という願いの元で絆を深めてきた。
2人でいれば大丈夫だと思ったのだろう。
こさめの手の震えはもう、無くなっていた。
ここがどこなのかも分からない。
来た場所からどれだけ離れているかも分からない。
二人で手を繋いで、線路の上を歩く。
もう、誰にも縛られることのない、自由を感じていた。
逃げ出してから数日は持ってた金で飲み物や食べ物はなんとかなった。
頑張って節約しながら使っていたものの、さすがに限界はある。
俺はふと思った。
「金がないなら盗めばいい。」
こさめも賛成した。
だって、それ以外に方法が無いのだから。
そもそも、この旅は人殺しの罪から遠ざかり死へ向かうための逃避行だ。
金を盗むなんて、どうってこと無い。
今更怖いものなんて、何も無い。
逃げてるときに落としたメガネも、
額に流れる汗も、
どうでもいい。
俺らは後ろを振り返ることなく、進み続けた。
そんな生活をくり返して、俺は思った
桜「いつか夢見た優しくて、誰にでも好かれるような主人公ならさ、」
桜「汚くなった俺達も、見捨てずにちゃんと救ってくれるのかな?」
俺達が自由だって思って無いわけではない。
それでも、俺はまだこの世界への希望を捨てきれていなかった。
それでも君は違った。
水「今までの人生で、どんなに願っても、”しあわせ”の4文字なんて無かったって思い知ったじゃないか。」
水「自分は何も悪くないと、きっと誰もがそう思っている。」
水「自分たちはその被害を受けたんだよ、?」
水「もう、夢を見るなんて無駄なことはしない。」
と、君は言った。
君の心は疲れ切っていて、こんな夢を見る気持ちなんて、とっくに失っていたのだろう。
いつもみたいに金を盗んで逃げていた
今日は、盗もうとしている時にバレてしまい、追われている。
いつもならこんなことにはならないのに、
体力も、気力も限界を迎えていたのだろう。
後ろから大人たちの怒号が聞こえて、
俺達は脱水症状で視界が揺れ始めた。
それでもこさめと2人だから走り続けられたし、
何より楽しかった。
きっと、こさめもそう。
追われていて、体力も残っていない、頭だってくらくらする。
それでも、2人で笑い合っていた。
そうやって、2人で全力で走って逃げているとき、
すぐ近くに怒号が聞こえた。
このままだと逃げ切れるかギリギリだ
こさめは何か決断した表情で、
こう言った、
水「”ありがとう”」
水「”ごめんね”」
そうしてこさめは首を切った。
俺が持ってきたナイフで。
まるで何かの映画のワンシーンみたいに、
白昼夢を見ている気がした。
俺はこの光景に心が追いつかず、ただ立っていた。
気づけば俺達を追っていた大人たちに捕まって、
大人たちは何か騒いでいたけど、俺には何も聞こえなかった。
ただただ、こさめのことだけを考えていた。
こさめは1人で死ぬつもりだったのに、最後に俺と過ごして、
少しは楽しいと思えていたのだろう。
もう、俺にこれ以上迷惑はかけられないと思ったのだろう。
俺は直前まで一緒に笑い合っていた人がいなくなったという現実を受け止められない中、元の世界に戻された。
そして、時は過ぎていった。
ただ暑い暑い日が過ぎていった。
夏が終わり、家族もクラスの奴らも何も無かったかのように普通に目の前にいる。
それなのに、こさめだけはどこにもいない。
こんな状況に俺の心は凍りついていた
こさめとの逃避行が終りを迎えてしばらく経った。
それなのに、俺は今も、今でも思い出す。
どれだけ時が過ぎても、こさめがまだどこかにいることを信じて、
ずっと、ずっと探している。
なんの言葉もかけられないうちに行動してしまったこさめに、”ある言葉“を伝えるために、
諦めずに探している。
9月の終わりにくしゃみをして、
6月の匂いを何回も、何回もくり返す。
それなのに、こさめの
あの笑顔は、
あの無邪気さは、
俺の頭の中を飽和している。
今でも、あの夏の出来事が俺の心の中を占めている。
ここまで、
これほどまで、
心が囚われているのは、俺が後悔してるから。
きっと、こさめは、本当に死にたかったわけではない。
”こさめは何も悪くない“と、
“もう全部投げ出してしまおう”と、
そう言って、
ただ、ただ、
自由に生きることを認めてほしかったのだろう。
そして、これは俺が、俺にしかこさめに与えられない、唯一の救いだったのではないか。
逃げ出したあの日、こさめは何も悪くないと思ったのだから、
慰めでもなんでもいいから、言ってしまえばよかったんだ。
俺達の逃避行が終りを迎えて、何年かたった今でも、
俺の頭の中は、
“あの夏が飽和する。”
コメント
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ゆぅあさん、第1話読みました。 「こさめは何も悪くない」という言葉が何度も出てくるのが切なかったです。自分に言い聞かせるように繰り返す主人公の心情が痛いほど伝わってきました。最後まで伝えられなかった“ある言葉”が何なのか、考えずにはいられません。逃避行の一瞬一瞬が、後悔と共に夏の記憶として焼き付いている描写がとても美しく、切なかったです。 続き、気になりますね。