テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#魔道具職人
こはる
410
13
10年前、
世界から「色」が消えていく。
昔も同じようなことがあったらしい。
それでも、今まで色が残っていた理由。
それは、ご先祖さまが色を残す為に、
「ハナ」という物を犠牲にしたからだ。
木より背丈の小さい植物らしい。
見た事ないからあまり分からないけれど。
今、昔と同じようなことが起きている。
何かヒントはないかと、ご先祖さまの
残した書物からヒントを探すことにした。
ご先祖さまの残した書物には
こう書かれていた。
「色ヲ残スニハ『虹』ヲ描ケ」
「次コノヨウナ事ガアレバ『星』ヲ紡ゲ」
「困ッタラ近クノ山ノ麓ノ家二行ケ」
…虹を描く?星を紡ぐ?
訳がわからなかった。
何を言っているんだこの人は。
少し悩んで、とりあえず、山の麓の家に
行ってみることにした。
もう昔のことだから、こんなことを知っている人が居るかは分からないけれど。
40分ぐらい歩いて、着いた。
色が消え始めた世界にはもう慣れたけど、最近は消えるスピードが早くなっている。
昨日まで鮮やかな色だった場所も、
白黒の世界に変わってしまった。
正直悲しい。
「…すみませ〜ん!
誰かいらっしゃいますか〜?」
「はい。あ、貴方は…」
扉を開けて出てきたのは私と
同い年ぐらいの少年だった。
「あ!私は、」
「虹の絵描きさんですね。中へどうぞ。」
「え、あ、私、虹の絵描き?になった
記憶はないんですけど…」
「胸元に『ハナ』のピンバッジを付けているなら、貴方は虹の絵描きです。そのピンバッジは、『ブルースター』ですね。…祖母さんから受け取ったんですか?」
「え、あ、は、はい。祖母からです。」
驚いた。この人はどこまで私の事を
知っているのだろう。
「やはり、そうですか。2代前と同じピンバッジだったので。…立ち話もあれですし、中へ。」
「あ、はい。失礼します!」
彼の家は色が鮮やかに残っていた。
とても綺麗だった。
10年前は普通だったはずの景色が
今ではこんなに綺麗に見える。
彼に案内され、椅子に座った。
彼は机を挟んで、私の前に座った。
「申し遅れました。
僕は北斗と言います。
成長が止まっておりまして、生きた年数で言えば、230年です。体は子供のままですけど。」
「に、230歳!?!?!?!?大先輩だ…」
「驚いてしまうよね。僕も、なぜ成長が止まっているか、よく分からないんだ。ところで君の名前は?」
「七星って言います!えっと…北斗さん?は何をされている方なんですか…??」
「呼び捨てでいいよ。そう言えば、僕の仕事を言ってなかったね。僕の仕事は、星拾いだよ。」
「ほ、ほしひろい…???」
「簡単に言ったら、空に浮かぶ星を集めてきて、色を採らせてもらうんだ。その集めた色で虹が描ける。ただ虹が描けるのも世界でひとつの家系しかいなくてね。」
そう言って北斗は私のことを見た。
「わ、私が…????」
「そうですね。実感はないかもしれないけど。ちなみに、10年前から少しずつ星集めてるんだけれど、少しだけ、描いてみませんか?」
「あ、じゃあ、よければ…」
「分かりました。着いてきてください。」
北斗について行った。
坂が多くて少し疲れる。
でも、北斗とくだらないことを話していたらすぐにたどり着きそうだ。
「…北斗は、なんで星拾いの仕事をされているんですか?」
ふと疑問に思って聞いてみた。
北斗さんは表情を崩さず答えた。
「星拾いという仕事も、虹絵描きの様に、選ばれた家系しかできないんです。だからかな。今は星拾いという名前だけれど、昔は『ハナ拾い』という名前だったんですよ。」
「そうなんですね…」
そう話していると北斗は足を止めた。
ここ辿り着いたのは、牧場のような広い草原だった。
「この草原一面を使って、虹を描いてくれ。そうしないと、空にまで虹が届かないんだ。」
「広くない!?!?無理だよこんな広さ!1回で描けない!!!」
「それぐらい重要な仕事なんだ。早速、描いてみてほしいんだ。これが星から採った色なんだけど、これを筆につけて、草の上に書いてみてもらってもいい?」
「は、はい!」
言われた通りに、草の上で筆を滑らせた。
星の色はとても鮮やかで、綺麗な赤色が草原の一部に描かれた。
「綺麗…」
思わずそう言ってしまった。
「だろう?星も色ごとに与えてくれる感情が違うんだ。赤は情熱を与えてくれるんだ。橙色は元気、青は寂しさ、緑は安らぎの様に、色は僕たちに沢山の感情を与えてくれる。」
「確かに…北斗はどの色が好きなの?」
北斗は少し悩んだ。
きっとどの色も好きなんだろう。
「どの色もとても素敵だけれど、僕は黄色が好きだな。僕たちを正しい方向に導いてくれる光のように感じるんだ。」
「確かに…実は私も黄色が好きなんです。理由は…なんとなくだったけれど。」
「君のご先祖さまはね、色が無くなった世界だったら、私たちの感情までも無くなってしまうって言っていたんだよ。だから、ハナを犠牲にして、色、そして僕たちの感情を守ってくれたんだ。」
「そうなんですね…。すごいな。」
「君もきっと世界を救えると思うよ。さて、僕はそろそろ星をとりに行こうかな。40分ぐらいで戻ると思うよ。ゆっくり休んでいてくれ。」
「え、いや、私描いてるだけなので…」
「自分では気づいてないかもしれないけど、一筆描くのになかなかの体力を使うよ。これから沢山描いてもらうことになるから、今は休んでいてくれ。」
そう言って北斗は草原を後にした。
その次の日も、次の日も、
私は彼と描き続けた。
くだらない話も沢山した。
時間はあっという間に過ぎて、
もう2年が立つ。
今日も、北斗が帰ってきたら何を話そうとか、くだらないことばかりを考えて、待っていた。
「…ただいま。」
北斗の声はいつもより小さくて、暗かった。
「おかえり。…どうしたの?」
「大切な話がある。」
北斗が真剣な表情でそういうのだから少し驚いた。北斗がこんな表情をするのは初めてだ。
「え?どうしたの」
「…星が残りわずかになった。」
「…え?」
信じられなかった。
夜空に星は沢山あった。
それが…無くなる?
「今空にある星を全て使えば、虹は完璧に描ける。世界に色が戻る。でも、星は消え去る。『ハナ』と同じような存在になってしまうんだ…。」
「あっ………」
「前にも話しただろう?僕は232歳だ。
『ハナ』を見たことがあるんだ。とても色鮮やかで、小さくて可愛らしい植物なんだ。君ならわかってくれるだろう?星も同じような存在であることを。」
…私は星が好きだ。大好きだ。
色鮮やかで、小さくて、綺麗な星が大好きだ。それが、もう見れない…???
「…僕にどうするか決める権利はない。君が決めてくれ。世界に色を取り戻すか、星を守り続けるか。」
色を取り戻す ⇢ No.1 虹
星を守る⇢No.2 星
見たい結末へ。行ってらっしゃい。
コメント
1件
うわあ、これはグッとくる世界観…!色が消えていく世界で「虹を描く」「星を紡ぐ」というご先祖さまの謎の言葉、そして七星ちゃんと北斗くんの出会いがすごく自然で引き込まれました。特に「色は感情を与えてくれる」っていう北斗の台詞が好き。黄色が好きっていう共通点もほっこりする。ラストの選択、星を犠牲にするかどうか…すごく悩む。七星ちゃんの気持ちを思うと胸が痛いです。続きが気になる!