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すると楓がジャーと便器の水を流し何事も無いように出て行った。私は僅かばかりのドアの隙間に身を隠し、乗り切る覚悟を決める。この個室は入り口から一番奥…… 3人からは丁度中までは見えない、死角に位置するのが幸いした。
「あら、これは楓さん、ごきげんよう。随分と失礼しました。いらっしゃったのですね? 」
「えぇ、ギャーギャーと、お蔭で落ち着いてゆっくりも出来なかったけど」
「ふん、流石万年No,3の楓さんですこと。おトイレでサボってらっしゃるなんて余裕ですね? 」
「はぁ⁉ あんた誰に向って口聞いてるのよ!! 」
「あ~ハイハイ。所でこれなのですが、まさか貴女の物では無いですよね? 」
京華は口元を掌で隠し、汚い物から目を背ける様に足元を指差した。
「うぇ、何それ…… 汚なぁ…… それこそ貴女の趣味じゃないの? 私そんな子供っぽい下着、趣味じゃないし。何それウケるんだけど熊さん? 」
―――クッ、かっ楓めぇ……
すると扉がまた開くと、ピンク頭のリリアが現れた。
「お~ちゅッれ~すぅ。お~じゃま~しま~すぅ」
(あんたお兄ちゃんのヘルプどうした? おい)
ぴんくつむつむリリアちゃん、張り詰めた空気も何《なん》の其《そ》の。ドタドタと所構《ところかま》わず元気いっぱい奥まで突っ走ってくると、私が隠れている個室に飛び込んで来た!!
―――げぇッ⁉
咄嗟に口を塞ぎ引《ひ》き摺《ず》り込むと、バタンと扉を鳴らし鍵を閉めた。なにこれ犯罪じゃん…… 私はレイプマンか⁉
バタバタと鯖の様にビチビチ暴れまわるピンクツムツムの眼前に、指を立て静かにしろと促した。
「楓さん貴女《あなた》ずいぶんと野性的なルージュの引き方をなさるのね。まぁ変人の貴女にはお似合いだこと。スイカでも食べたの? 」
―――そりゃあね。ラクダぺろぺろ妖怪垢嘗《あかな》め君だし。
「お手数ですが、その汚い物はゴミ箱にお願いしますね」
そう言い残すと京華は金魚のフンとトイレを後にした。
「ちょっ⁉ 何で私が…… チッ」
――チッじゃない! 原因は君だよ⁉
モゴモゴと涙目で訴えるツムツムを野に放つと……
「えぇ~ やだぁ、いちかちゃんて、そう言う感じなんですかぁ?」
「そう言う感じって…… なに?」
「もぅ~ ぐっしょぐしょ~ だぉ~」
―――ハイ⁉