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目の前で繰り広げられる光景は、滑稽を通り越して最高のスペクタクルだった。「ひいいいっ! 来るな、来ないでぇぇッ!」
「姫宮、俺を押すな! 俺を盾にする気か!?」
「神条くん助けて! 私を置いてかないでよ!」
巨獣が咆哮をあげ、ドス黒い毒気を吐き散らすたび、主犯格の奴らは互いを押し倒し、踏みつけ合いながら逃げ惑っていた。
神条は『体温を0.1度上げる微風』を必死に手に集め、「くそっ、なんで温かい風しか出ねぇんだよ!」と泣き叫んでいる。
鬼塚は『鼻毛が伸びる能力』を発動させまいと目を見開きすぎて、涙をボロボロ流しながら地面を這いずっていた。
担任の黒岩に至っては、抜け落ちた髪の毛から生成された数枚の1円玉をモンスターに投げつけ、「あ、あげるから! 命だけは許して!」と意味不明な悲鳴を上げている。
自分の権力を振りかざし、俺を屋上まで追い詰めた人間の破滅した姿。
哀れで、惨めで、救いようがない。
だが——そんな地獄の惨状の真ん中で、光を放つ二人がいた。
「白石さん、右から三体目が来る! 攻撃の軌道は直進、胸の核が弱点だ!」
「分かった!——『絶対防御(イージス)』!」
佐藤が『解析閲覧(アナライズ)』でモンスターの動きと弱点を瞬時に読み取り、白石へと絶え間なく指示を送る。
白石は恐怖で脚をガタガタと震わせながらも、光の盾を展開し、巨獣の巨大な前脚を真っ向から受け止めていた。
ドゴォォォンッ!!
天地を揺るがす衝撃波が巻き起こる。だが、白石の展開した黄金の盾は、傷一つ付かない。
「くっ……! 大丈夫、耐えられる……! 佐藤くん、今だよ!」
「了解! 白石さんの盾で生まれた隙に——そこだッ!」
佐藤が光の解析線を巨大なモンスターの胸元へ叩き込む。核を撃ち抜かれた巨獣は巨体をくの字に折り曲げ、地響きとともに崩れ去った。
「す、すげぇ……! 倒した……!?」
「白石! 佐藤! 助けてくれ! 俺たちを護ってくれよ!!」
倒れるモンスターを見た途端、逃げていた神条たちが手のひらを返し、二人の背後へ雪崩のように群がり始める。
「俺たちの主犯格グループを護れ!」「私を最優先で助けなさいよ!」と勝手な欲望を叫びながら。
だが、白石は振り返ることもなく、冷ややかに言い放った。
「私たちは……自分たちの罪を誓うために戦ってるの。あなたたちの欲望に付き合うつもりはない!」
「白石さん、次が来る! クラスメイトの避難ルートを確保しながら下がるよ!」
二人は群がるみっともないゴミ共を突き放し、互いに背中を預け合いながら、果敢に未知の魔獣群へと立ち向かっていく。
罪を認め、泥をすすりながらも前へ進む者。
最後まで他人に依存し、浅ましく他人の足を引っ張り続ける者。
『ふふ、見事な対比ですね司様。絶望の中で輝く魂と、どこまでも腐り落ちていく豚ども……。最高の鑑賞劇ですわ』
ヘカーティアが俺の肩に顎を乗せ、楽しそうに瞳を輝かせる。
俺は特等席のソファから、その光景をただ冷ややかに見つめていた。
死んだ魚のような俺の瞳には、覚醒した二人の奮闘も、足元で踏みつけ合うクラスメイトたちの惨状も、すべて等しく「俺の庭の戯れ」として映っていた。
「……さあ、白石、佐藤。お前たちのその『贖罪』がどこまで持つか、じっくり見せてもらうとしよう」
コメント
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第8話、読ませていただきました🥀 主犯格たちの惨めな逃げっぷりと、白石と佐藤の必死な贖罪の対比がすごく鮮烈で…。特に白石が「私たちの罪を償うために戦ってる」って言い放つシーン、胸が熱くなりました。でも、全てを冷めた目で見つめる司様の存在が、この物語に独特の闇と深みを加えてて、本当に引き込まれます。ヘカーティアとの会話も絶妙ですね。次も、静かに読ませていただきます🌙