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第十六話
模擬訓練
―新たな一歩―
「今日は早乙女班が模擬訓練の日だな。椥辻がいないが、臨機応変に立ち回るように」
「はいっ!」
今日は私たちの班が模擬訓練の日です。
模擬訓練は、学園が指定した地域で行われます。
そこには、戦闘中に死ぬことはないものの、討伐するには大変危険な化物が分布しています。
死ぬことはありません。
……が、腕や脚がなくなったりする場合もあるので、戦闘員としては死ぬことになるのだけれど。
「今日は私と御厨くんが前線に出るから、皇刃くんは後方支援をお願いね」
「わかったよ、早乙女さん!」
「綺ちゃんと一緒に前線なんて……興奮するわね♥️」
「あは、は……。神剣くんは……あれ? 神剣くん?」
「寝てるよ……車の中で」
苦笑いを浮かべ、小さくため息をつきながら皇刃くんが教えてくれました。
訓練とはいえ、相手は本物の生きている化物です。
危機感とか、恐怖心とかないのかしら……。
「まずは私が行くから。……周りに罠や小さいのがいないか、『千里眼』で見るわね」
「わかったわ。その間に敵が来たら、あたしが薙ぎ払うから。お願いね、綺ちゃん」
私は頷くと立ち上がり、数歩進んで辺りを見回しました。
広い砂漠。
所々に、崩壊した建物もあります。
この場所にも、以前は人がいて、栄えていたでしょうに……。
「……御厨くん。大丈夫。罠の類は見当たらないし、四方にも敵は見当たらないわ」
「……地中、かしら」
御厨くんは、自分の足元の砂を踏みしめます。
確かに四方に敵の残滓もなければ、痕跡もありません。
「ど、どうする? ……毒薬ばら撒いて、誘き出す?」
すでにいくつかの薬を作り終えた皇刃くんが、視線をこちらに向けます。
「もし地中にいるとして……地面にばら撒くのは危険だわ。真下から来られたら、間に合わないかもしれない」
「仕方ないわ……。可威ちゃんは、ここを動かないで。綺ちゃん……探しましょ。討伐しなきゃ帰れないし。この暑さは、あたしたちも長くもたない」
「そうね……」
私と御厨くんは武器を手に、ゆっくり一歩一歩と辺りを警戒しながら歩きます。
いつ、下から襲われるかわからない。
そう思うと、脚が前に出るのを拒んでいるのが分かります。
――カサッ。
「……?」
何か聞こえた気がして、立ち止まり辺りを見回してみます。
「御厨くん? ……あ、れ?」
どこにもいません。
御厨くんだけではなく、皇刃くんや車さえ見当たりません。
辺りには、砂漠が広がっています。
え……?
な、に……?
「こちら早乙女! 応答、願います!! ……通じない……」
脚が……身体が震えます。
怖い……。
寒い……。
――その時。
「綺ちゃん!!」
倒れそうになっていた私を、御厨くんが抱きかかえていました。
「しっかりして……っ! 脚から血を抜かれてる……! 可威ちゃん! 止血剤を……!!」
――ガキィンッ!
大きなサソリの尻尾を、私を抱えたままの御厨くんが大剣で受け止めます。
「みんな……!! っ……な、んとか……何とかしないと……っ」
離れたところから状況を見ていた皇刃くんは、車へ戻りトランクを開けます。
「何か……っ。僕にでも……っ、何か……!!これ…椥辻さんの……っ」
皇刃くんは、椥辻さんのクロスボウを手に取りました。
そして、作った薬を矢に括り付け、サソリに照準を合わせます。
「……っ!」
――ヒュンッ!
放たれた矢が、サソリの身体に突き刺さります。
「グギャァァァーッ!!」
矢を受けたサソリは倒れ、地面の上で激しく暴れます。
「御厨くん!そいつは呪蠍だ!首を落として!」
「わかったわ!」
――ズドンッ!
大きな音を立てて、御厨くんの大剣が呪蠍の首を落とします。
すると、呪蠍はピタリと動かなくなりました。
「早乙女さん!これ、止血剤と解呪の薬……飲んで!」
「……」
「綺ちゃん!お願いよ。飲んでちょうだい!」
私は意識を手放していて、二人の声は届いていませんでした。
私はまだ一人、砂漠を彷徨っている幻の中にいました。
「……貸せ」
「神剣くん、いつの間にぃ!? っ……」
「まぁ♥️」
意識のない私に薬を飲ませるため、神剣くんが口移しで飲ませた――と聞いたのは、しばらく後のことでした。
「……帰るぞ」
私が薬を飲んだことを確認した神剣くんは、何事もなかったかのように車へ戻ったそうです。
コメント
1件
第16話、読んだよー!模擬訓練のはずが地中の呪蠍戦で一気に緊張感出てきたな。特に綺ちゃんが幻覚に落ちて脚から血抜かれるとこ、めっちゃゾッとした…。でも御厨くんの冷静な判断と、皇刃くんが椥辻さんのクロスボウ使って援護したとこでグッときた!そしてまさかの神剣くん口移し…あれは衝撃的すぎるわ😳 チームの信頼関係がじわじわ見えてきて熱い展開。続きめっちゃ気になる!