テラーノベル
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天井の岩が崩れ…
ルディアと…岩を破壊したであろう、コブシが降ってくる!
デュランタ「!?!?」
落下中のコブシが腕を振り上げ…そして振り下げ、真下に居たディアンシーの脳天に打撃を放つ!!
グラつき、浮遊していた岩が消滅する…
そして二人が着地すると同時に、勢いを殺し小さくホップしてからデュランタに駆け寄る。
デュランタ「バカッ、何故来たんだ!!あいつと戦うのは危険すぎる、僕の事は良いから…」
パァン!!
コブシがデュランタの頬をビンタする!
…場が静まる。
唖然としながら、ぶたれた頬に手を当てる…コブシを見上げると、唇をかみしめて目に涙を浮かべている。
すぐ振り返って、ディアンシーの方を向いてしまう…
コブシ「お兄ちゃん、もうヘトヘトじゃん…見たもん、自分だけ下に残してルディアちゃんだけ助けたの…」
声は震えている。
「それに、ケガしたからってアタシも戦いから遠ざけて…」
デュランタ「…当然だろっ、黙ってみんな仲良く死なせるわけには…」
「うっ」
特性の副作用で限界が来ているのだろう。胸に手を当てて、少し苦しそうにする。
デュランタの特性は操ることは簡単でも、生み出すことは難しい…
炎、草、鋼の生成で、かなりのエネルギーを消費していた…
ルディアと同時に自身を上に運ばなかったのも、そこまでの操作をする事が難しくなっていたからだ。
コブシ「人を助けるのは、いいことだけどさ…自分が死ぬのは…なんとも思わないのっ…?」
デュランタ「……君たちのためだ。僕の命くらいで救えるなら、別にどうとも思わないさ…」
コブシ「バカぁっ!!!!」
その叫びは、洞窟中に響いて反響した…
肩に力を入れて、涙をぽろぽろと流している。
ルディアは、もの悲しそうな片目で静かに見ていた…
コブシ「なんで…なんであたしを残して一人でそんなことするの!お兄ちゃんは、なんもわかってないっ…」
「お兄ちゃんが死ぬくらいなら…アタシも死ぬからぁっ!!」
デュランタがハッとした表情でコブシの後ろ姿を見上げる。
コブシ「もう、誰かがいなくなるのなんて嫌なんだから…」
肩がすとんと落ちる。
「アタシを、一人にさせないで…」
デュランタは沈痛な面持ちで、地面を見つめている…
コブシ「出かける前…二人で言ったよね!今回は絶対成功させようって…!」
「戦うんでしょ!三人で!!」
ルディア「……助けてくれたのは嬉しいけど…助けるなら、デュランタ自身のことも助けないとダメ。デュランタが死んじゃうのに、逃げるなんて…できるわけないじゃん。」
デュランタ「……」
「…みんな……すまない。」
コブシ「……何謝ってるの…」
ルディア「……」
デュランタ「…」
コブシ「成功させるんでしょ……象徴選抜!」
座っているデュランタに手を伸ばす。
デュランタが限界スレスレのラインに居るのは…コブシも分かっていた。
だが、デュランタが自身がどんな状況であれテキオリョクのために動きたい性格なことも分かっていた。
デュランタに効く言葉は少ない。その中でコブシが選んだのは、「共に戦う」という、最大限の配慮の選択だった…
…デュランタがコブシの手を握り、よろめいて立ち上がる。
デュランタ「……もしかしたら、僕が間違っていたのかもしれない。」
「僕程度なら置いていくと思っていたが…間違いだったみたいだ。」
「分かった…もう背かない。必ず、勝とう…!」
コブシ「うん…!」
デュランタは、もう特性を使うことは危険なほどの状態にあった。
だが、特性の原点…「覚悟」が、その限界を超えた!
デュランタ「勝つぞ…三人で!」
ルディア「うん!!」 コブシ「オー!!」
デュランタ「あれは硬すぎて殆どの攻撃は通じない…」
「だから…頭部を破壊する。」
ルディア「えっ!死んじゃわない、それ!?」
「ダーティ災害で暴走してるだけで、これが『妖の象徴』なんじゃないの!?」
デュランタ「僕もその認識だ。だが、こんな状況になってそれは気にしてられない。」
「こいつがオヤブンになっているんだ、こいつを倒さないとダーティ災害は収まらない…次以降の象徴選抜もできなくなる。」
「だから、気絶は絶対条件…死んでしまっても次もある。まあ、死なないのがベストだがな。」
ルディア「破壊するって言ったって、具体的にどうするの?硬すぎるし、治っちゃうし…カウンターまでしてくるよ。」
コブシ「うへえ…」
デュランタ「君が吹き飛ばされていたのはやはり反撃を喰らったからか…」
「なら、そんなこともさせないくらい素早く倒せばいい」
ルディア「そんなこと言ったって…」
デュランタ「ま、やってみるしかないさ。」
ルディア「…ま、それもそっか!」
ディアンシーの頭が発光する。先ほどと同じだ…
デュランタ「僕が叩く。隙を見てルディアは光で攻撃してくれ…カウンターを喰らわないように、遠隔でだ」
「エネルギーが持たなかったら、報告してくれ。コブシは僕たちのカバーだ」
ルディア「了解だけど…デュランタ、もう限界なんじゃないの?」
デュランタ「よくわからないが、無性に力が湧いてくる…もう少しならやれそうだ。」
ルディア「うへぇ、大丈夫…かは知らないけど、頑張って!」
デュランタ「ああ、君もだ!」
ルディアが走り出す…一回目の攻撃と同じように、後ろに回り込む魂胆だろう。
デュランタは地に掌を当てる…
(『十八変化の岩本』!)
「目には目を…岩には岩をだ!!」
瞬間、ディアンシーの真下から…
数多の岩の拳が突き上げ、ディアンシーを上に打ち上げる!!
ルディア「世界に──光をぉっ!!」
大剣を大きく振りかざし…洞窟全体を白く染めるその光は、ディアンシーの頭部へと届き、爆発する!!
頭の表面が削れている…
デュランタ「いいぞ!押し切るんだ!」
そしてディアンシーが体制を立て直し、掌と掌の間に、岩…いや、ダイヤモンドが大量に生成され、ルディアに向けて発射される!!
ルディアの前にデュランタによる岩の壁ができ、それを防いだかと思えば…勢いは落ちたものの、貫通する!!
…が!
コブシ「えええい!!」
巨大な岩のうちわのようなものを大きく振りかざし…岩は大破したが、ダイヤモンドを弾き飛ばす!
ルディア「うおっと…!」
デュランタが岩壁を作るとほぼ同時に、今のうちわのような岩の盾も作っていたのだ。
そして、また掌の間にダイヤモンドが生成される…!
デュランタ(今までは間隔を開けての行動をしていたが…連続だな!ようやく本気を出すのか?)
「させないさ!」
ダイヤモンドの発射直前…地面から岩の柱が飛び出し、ディアンシーの手を上に弾く!
これにより、ダイヤモンドは何もない天井に放たれる。
ルディア「おらぁぁ〜っ!!!」
大剣を構え…斜めに、1…2…3連続の飛ぶ斬撃を放つ!
全て命中し…手痛いダメージではないが、ますます後ろにのけぞらせる!
デュランタ(やはり岩での防御などはしないか!攻守ともに強く厄介だったが、それなら都合がいい…!)
デュランタとルディアが畳み掛けようとした次の瞬間…
ディアンシーの胴体と、複腕が大きくなる!
ルディア「っ!」
デュランタ(本気を出してきたか、ディアンシー!ここまで来れば、もはや岩の象徴だな…!)
コブシ「ルディアちゃん、あぶない!!」
腕がルディアに向かって、まるで発射されるように伸びる!!
そして、ルディアの肩に激突し、激しくのけぞって尻もちをつく…
ルディア「ぐうっ!?」
コブシ「ルディアちゃん!!」
デュランタ「チッ!」
ルディア「………う…」
立て直そうとするが、衝撃で目が眩み、うまく立ち上がれない。
一方ディアンシーは、ルディアに追い打ちをかけるように、ダイヤモンド発射の構えを取る…!
デュランタ「させないと言っているだろう!」
先ほどと同じように、下からの岩柱の突き上げで構えを崩そうと試みる…
ガン!!
──微動だにしない。ダイヤモンドはもう発射されるだろう…!
デュランタ「くっ……先ほどとはワケが違う訳か!」
ダイヤモンドがルディアに向けて発射される!!
が、岩がぼこっと盛り上げられ、それによりルディアが横に吹き飛ばされ…ダイヤモンドは当たらなかった。
デュランタ「残念だったな、ディアンシー!」
(先ほどルディアがつけた傷が回復する前に倒したいが、出来るだろうか…)
(いや、やってのける…不可能は可能にする!万物に適応するこの力と、この精神、この覚悟なら…出来るはずなのだから!)
ルディアが立ち上がり、少しだけフラつきながらディアンシーに近付く。
そしてディアンシーが…手のひらと手のひらを、勢いよく合わせる!
隙間を作っていた先ほどとは違う!合わせているのだ…!
すると…地面からルディアの身長の半分ほどの宝石が、山ほど盛り上がってくる!
三人は体制を崩す…
そして、体制を立て直したかと思えば…
ルディア「…へ?」
すぐ目の前に、ディアンシーがいる。
巨大な副腕で、ルディアが横に殴り飛ばされる!!
ルディア「ひゃああっ!!!!!」
コブシ「ルディアちゃん!!」
デュランタ(まずい…守れなかった!)
すると下から、今度は大きい宝石が盛り上がってくるのを目撃する。いや、それは宝石と分類するにはあまりにも大きく…長く…それでいて平たく…
そう、巨大な壁だった!ディアンシーとルディアが、壁の向こうに隔離される…!
コブシ「やばいっ!分断されちゃった!」
デュランタ(『十八変化の妖本』!)
宝石はビクともしない。
デュランタ(くそっ…やっぱりだ…)
(この宝石、明らかに岩の材質なはずなのに…触れて適応したらフェアリーのタイプ…なのに、適応じゃ動かせない!)
(多分…岩とフェアリーの両方の性質を持っているんだ!初めて知った…『十八変化の白本(てきおうりょく)』じゃ、そう言うものは動かせないのか…!)
(適応で動かせるものは視界の範囲までだ!壁の向こうは無理…クソっ!挟み撃ちの姿勢が仇になった…!)
壁の向こう。ルディアは殴られた頭部からどくどくと血を流し、息遣いは荒くなり、片目はあまり開けられなくなっていた。
目の前にディアンシーがいる…
…傷も痛みもひどいが、尋常じゃないほどに重い腰を、上げる…
ルディア「みんなで…勝つって…決めたんだ…!」
ようやく立てるが、ふらふらで宙吊りのように活気が感じられず、腕は無気力にぷらーんと下がっている。
「デュランタは辛そうだけど…自分を捨ててまで助けようとしてくれた!」
「コブシはそんなデュランタを支えて…特性も武器もないけど、必死に戦ってくれてる!」
「私も…!頑張るって…」
身体全体にぐっと力を入れる!
「決めたんだもん!!!!」
大剣で斬りかかる!!
が、まるで小さな動物をよけるように、横に軽くはじく…
ルディア「ううっ…」
地面に倒れるが、すぐに起き上がり…
「うああっ!」
また斬りかかるが…
「うっ!」
今度も同じだ。
同じように倒れ、今度もぐぐぐっと起きあがろうとする…
「…もし…叶わなくたって…関係ないもんね…!」
立ち上がり、ディアンシーの方を向く。
「私は…!諦めないから!」
巨大な複腕が、ルディアにだんだん伸びるが…
その時!
ガツ…ガツ…
ボガッ!
ボカァン!!!!!!
宝石の壁を殴り、穴を開けた…コブシとディアンシーが出てくる!
ルディア「二人とも…!」
デュランタ「暴走していると言うのに意外に頭が回るじゃないか、ディアンシー…」
「そろそろ…決着(ケリ)を付けようじゃないか!!」
ディアンシーが勢いよく二人の方に振り向き…複腕のうち、右腕の方を射出する!!
ルディア「うわっ!?」
デュランタ「そんなこともできるのだな!」
デュランタが腕を後ろに回し、殴るような構えを取る…
(十八変化の闘本…!)
「はぁっ!!」
勢いよく殴りかかり、バッターが野球ボールを打つように…飛んできた複腕を破壊する!!
デュランタ「生憎、ひ弱な学者でも…こんなことはできるのだよ。」
ダッシュでディアンシーに駆け寄る!
そして、勢いよく殴りかかるが…空中にひし形のダイヤモンドが浮かぶ!
デュランタ「残念!」
フェイントを入れ、迎撃のダイヤモンドを躱す!
そして…頭部にパンチを打ち込む!!そして、後ろに引く。
…与えたダメージは…あまり有効に働いてはいなさそうだ。
デュランタ(岩とダイヤモンドの発射、複腕、反撃…)
(一番厄介なのは、やはり硬すぎる体…)
「勝機を見出すとしたら…」
「…大剣を突き刺して…そこから光を放つというのはどうだろうか?」
ルディア「!」
ディアンシーが両掌の間からダイヤモンドを発射するが、デュランタは後方にジャンプして回避する。
ルディア(そうだ…あんなに硬い頭にも、内側から攻撃すれば効果はあるかも…!)
デュランタ「そうだな…額だ。額に対象を絞って攻撃しよう!」
「大剣をより深く刺せる、穴を作るんだ…!」
コブシ「でぇやっ!!」
行った側から額に殴りかかり、すぐに後ろへ駆け抜ける。
コブシ「ヒットアンドアウェイ、だよ!」
額の岩が少しだけ削れる。それに反応して、反撃のダイヤモンドが飛ぶが…デュランタの岩の壁が防ぐ──今度は三層もの壁だ。二層は貫通したが、最後の一枚が防いだ…
デュランタ「ッ!」
自身の左胸を手で押さえる。
これ以上の特性の使用は危険だが…そんなこと、気にしちゃいられない。
(たとえ体の中が張り裂けようが…勝ってみせる!)
「これが僕の覚悟…僕の!全力だ!!」
(『十八変化の岩本』!!)
地に手を当てると…ディアンシーの正面の岩壁から、岩柱…今までとは違く、とても大きい岩柱が突き出て…勢いよく伸び、額に激突する!!衝撃で、ディアンシーの頭は上を向く。
デュランタ「これじゃ終わらないぞ!!」
次の瞬間、天井が──直径3mほどのドリルの形になり、天井からくり抜かれて落ちてくる!!
ディアンシーがそれの下敷きになったかと思えば…次は、壁が糸のように細い岩を作り出し…そして凄まじい速度で伸び、ディアンシーの頭を撃つ!!
額に、大きく溝が出来た!!
デュランタ「ルディア!!」
ルディア「世界に────」
ディアンシーがルディアの方を向き、両掌に間を作る、ピンクのダイヤモンドを射出しようとするが…
コブシが腕をハンマーのように振り落とし、軌道を下にする!!
結果、射出されたダイヤモンドは地面にしか当たらなかった…!
そして額の溝に、大剣が差し込まれる!!
「光をォ!!」
それは眩い光だった!洞窟全体を白色の光が覆い尽くし、全員がその結果に祈った…!
…数秒後、光が引く。
ディアンシーは……
…頭部の外郭の岩が砕け散り、床に倒れていた。
赤く発光していた宝石の眼は綺麗なピンク色に戻り、悍ましい複腕は消え、胴体は小さくなり…とても美しいフォルムになっていた。
そして、足元の黒霧が消える…
デュランタ(……)
(ダーティ災害は、オヤブンが倒されると消える…)
「ハァッ」
深く安堵したような溜め息をつき、地面に大の字で倒れる…
ルディア「…へ?」
「…かっ……勝ったの…?」
コブシ「はぁっ…!」
目を輝かせ、ルディアの方に走る。
ルディアは、だんだん笑顔になってゆく…
ルディア「私たち、勝ったんだー!!!」
互いに両手を掴んで、ぴょんぴょん飛び跳ねる!
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