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「えーっと、君もお茶飲むかな?」
「わあ! いいんですか? 嬉しい!」
潤の元に駆け寄り、ののみちゃんがお手伝いをしはじめる。
「潤先輩ってすごくお料理上手なんですよね? 尊敬します。私不器用であんまり家事が得意じゃなくて」
「そんなこと言ってもらえるの嬉しいよ」
潤が嬉しそうに微笑んだ。
……ああ、なんでかな。
「潤、早くお茶淹れてよ。 俺、クッキーは苺がいい」
「実里くんって苺味が好きなの?」
「そーだよ」
「へぇ、意外! かわいいとこあるんだね」
実里くんと話しているののみちゃんは楽しそうで……同じ学年だからかな。仲良さそう。
自分でいいよって言ったのにちょっと寂しい。
ののみちゃんはもう輪の中に溶け込んでいる。
この立ち位置は私じゃなくても良いんだってなんだか思い知らされる。私がこの役をする意味はあるんだろうか。彼女ならきっと誰にも妬まれない。
彼女ならわかる。そう教室で話をしている女子たちがいた。
『なんで水沢さんなんだろうね。悪い子じゃないけど……普通じゃない?』
『一年の井熊さんだっけ? 入学式の時から美少女だって話題になってたし、ああいう綺麗な子の方が合うよねー』
『いっそのこと譲ればいいのに』
私も思うよ。ののみちゃんの方が似合う。卑屈になるのはよくないってわかってる。
でもね、やっぱり思ってしまう。
私ってここに必要?泉くんと仲良くなった子が偶然私だったそれだけだ。
「ましろ先輩、皆さんって優しい方ばかりですし、おもしろいですね!」
楽しげに笑うののみちゃんに微笑み返す。
今、私うまく笑えてるかな。
「私、またきてもいいですか? 皆さんとお話しするの楽しくって……迷惑ですか?」
「……そんなことないよ」
ダメなんて言えるはずがない。
「せ……」
実里くんが何か言おうとした瞬間だった。
「うっせぇ」
どうやら窓辺にある椅子をくっつけてベッドにして寝ていたらしい和葉が起き上がった。
「五月蝿くて眠れねぇ。帰る」
「か、和葉……?」
寝起きだからか凄く不機嫌そうだ。
「ごめんなさい! 私、和葉先輩が寝ていたの気づかなくて騒いじゃって」
和葉はののみちゃんを一瞥すると何も言わずに、私の腕を掴んだ。
「帰る」
「え?」
「ましろ、鞄これだな」
離す気はないらしく強く私の腕を掴んだまま、椅子の上に置いていた私の鞄を手に取った。
「う、うん、それだけど」
そして、耳元で響く和葉の低い声。
「行くぞ」
「ちょ、和葉!?」
和葉が私の腕を引きながら歩き出す。
「せんぱい!」
後ろから実里くんの声が聞こえたけれど、私は振り返ることができないまま家庭科室を後にした。
ののみちゃんからしたら無視されて傷ついたはずだ。けど、ごめんね……私、今和葉に救われた。
「ありがとう」
連れ出してくれて。
「何が」
「なんでもない」
和葉の手が腕から離れた。
「あっそ」
少し熱を帯びた腕を胸に当てながら、和葉の後ろを着いて歩く。
廊下の窓から肌寒い秋風が流れ込んで私の頬を掠めた。
歩くんは今日もいなかった。
#ファンタジー
#ざまあ
設楽理沙