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エウリは、新しい花を持って病室へ向かう。すまない先生の瞳と同じ色の花、ヤグルマギクを持って病室のドアを開けた。
バサッ
エウリは思わず手にしていた花束を地面に落とした。
病室のベッドには、すまない先生が横になっていた。だが、横になっていたすまない先生は“窓の外を眺めていた”
「・・・すまない、さん?」
エウリがそう何とかこぼすようにそう聞くと、すまない先生は振り返った。
「・・・ただいま、エウリ」
「っ!!」
エウリはすまない先生に抱きついた。心臓の音がきちんと聞こえる。暖かい。生きていることが分かる。
「・・・ごめんね?遅くなって」
「本当に、遅いですよ・・・ッ!!死んじゃったかと・・・!また、死んでしまうんじゃないかって・・・!」
エウリは涙を零しながら、そうすまない先生を強く抱き締めた。そんなエウリの頭を優しく撫でる。
「ごめんね。ずっと起きるのを待っててくれたんだね」
と、すまない先生はエウリの涙を指で拭う。
「・・・エウリ、ただいま」
そうすまない先生は微笑むと、エウリは嬉しそうに笑い、答えた。
「“おかえりなさい”!」
✵✵✵✵✵
それから数週間、すまない先生はリハビリを続けつつ、卒業式の準備をしていた。
ふと、大量の椅子を運ぼうとすると、
「すまない、それは僕が運んでおくから」
と、ライトに言われ、思い出した。
“自分の利き腕が、使い物にならなくなったことを”
✵✵✵✵✵
数日前、医者から告げられた真実に、皆目を丸くした。
医者曰く、「もう剣を振ることが出来ない」
と。
ヤマタノオロチを斬った際、負のエネルギーが草薙剣を通り、すまない先生の利き腕に流れ込んだ。
その負のエネルギーを受けた腕は、重いものも、剣も振ることは出来ない。
リハビリを続けても、剣を満足に振ることはもう出来ないだろう。と、医者に告げられた。それに皆目を丸くし、絶句したが、すまない先生だけは
「そっか」
と、返すだけだった。
きっと、分かってたのだろう。もう動かなくなった腕が、使い物にならなくなったことに。