テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「ガイドかなんか知らねぇけど、ふざけんな! 俺は嫌だからなっ! それに俺はまだ自分が巫女だなんて認めてねぇから! 寝ぼけてんじゃ、ねぇよ……っ」
煌は力任せに手首を振るったが、金具が虚しくガリりと鳴るだけだ。
「全く……。お主はまだ、自分の立場と言うものがわかっておらんのか……」
今にも噛みつかんばかりに睨みつける煌の肌を、朱雀の熱い掌がゆっくりとなぞる。ただそれだけの事なのに、何故だか身体が勝手にぞわぞわと、内側から溶け出すような感覚に支配されていく。
(……なんだ、これ……ッ。ただ触られてるだけなのに、変な汗が出てくんぞ……)
朱雀の指先が通った跡には、熱い火種を埋め込まれたかのような余韻が残り、そこからジリジリと得体の知れない快感が広がっていく。
煌の意識は「ふざけんな」と叫び続けているのに、ガイドとしての「本能」が、飢えたセンチネルである朱雀の熱に呼応するように飢えたセンチネルである朱雀の熱に呼応するように、ドクドクと不規則な脈動を刻み始めていた。
(……やべぇ。意識が、遠のく……ッ)
ただの「熱」じゃない。朱雀の指先から流れ込んでくるのは、彼が数百年抱え込んできた、孤独という名の巨大なノイズだ。それがガイドである煌の防波堤をいとも簡単に決壊させ、体内をかき乱していく。
「……っ、ハァ……、お前、……マジで、……いい加減に……」
抗おうと動かした喉元を、朱雀が逃がさぬように掌で包み込んだ。
親指が喉仏をゆっくりと押し上げ、煌の呼吸を奪う。苦しさに喘ぐ唇から、熱い吐息がこぼれ落ちた。
「抗うな。お主の中の光が、これほどまでにわしを求めて、疼いておるではないか」
朱雀の黄金の瞳が、至近距離で怪しく、そしてどこか切なげに揺れる。その眼差しには理性を焼き尽くす熱狂と、同時に、永遠に満たされぬ渇きへの悲嘆が滲んでいた。
それはまるで、助けを求める子供のような、あまりに純粋で無防備な光だった。
最強の四神の一柱として、数多の戦場を焼き尽くしてきた男が。
畏怖と崇拝を一身に浴び、誰の手も届かぬ高嶺で孤独を飼い慣らしてきた神様が。
今、目の前で、たった一人の「小僧」に縋らなければ壊れてしまいそうなほど、ボロボロに傷ついている。
(……っ、なんだよ。そんな顔、反則だろ……!)
その悲鳴にも似た視線を受け止めた瞬間、煌の胸の奥が、熱い火箸を押し当てられたようにジリジリと灼けた。
拒絶するために腕に込めていた力は、いつの間にか、彼を支えようとするためのものへと変わっていく。
「たく、わかったよ! き、キスだけならしてやるっ!」
半ば自棄クソ気味に叫ぶと、煌は拘束された両手に力を込め、逃げるのではなく、逆に朱雀を迎え撃つように顎を突き出した。
「その代わり、一回だけだからなっ!」
煌の瞳には、羞恥を塗りつぶすほどの不退転の覚悟が宿っていた。
それを見た朱雀の瞳が、歓喜に細められる。
「……ふ、くく。お主という男は、どこまでわしを昂ぶらせれば気が済むのだ」
「うるせぇ! いいからさっさとやれよクソ鳥!」
「……はぁ、少し色気が足らんようだが……」
「嫌ならしなくてもいいんだぞ? 別に俺がしたくてするわけじゃねぇんだからな!」
顔を真っ赤にしながら吠える煌を、朱雀は蕩けるような、それでいてどこか残酷なほどに甘い眼差しで見つめ返した。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
#悪役令嬢