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時刻は23時を過ぎていた。我に返った加瀬は、深く息を吐いて壁に保たれ
目を閉じた。
長い地下トンネルは、神奈川県多摩丘陵を緩やかに登り、梶が谷ターミナル駅へと続いている。
EF210機関車に連結されたチキ7200貨物車が、軋んだ音を響かせながらくねる。
7両の61式戦車の重量感を肌身に感じながら、加瀬は心の中で皮肉めいた境遇を笑った。
多摩丘陵地帯の外れには戦前、陸軍登戸研究所が存在していた。
風船爆弾で有名になったこの施設跡地の近くを、目的を達成する為にモグラのように進み行く現実ー東京事象でテロを企てた第3国のテロリストらも、ドーム型球場に風船爆弾を仕掛けて飛来させた。
「歴史は繰り返す」
のだろう。
ならば、その先に待ち受けるものは何か。
加瀬にはうっすらと見えていた。
尊厳の為の絶滅である。
機関車は、生田緑地地下トンネルを抜けて進む。
高架下の民家やマンションに明かりが灯っている。
ベランダから、死のオーロラを撮影している人影も至る所で見えた。
中にはこちらに気が付いて、スマホを向ける住民も大勢いた。
加瀬は、鷹野に静かに聞いた。
「君は…」
「はい」
「もうじき父親になるんだろう?」
「はい」
「いいのか?」
「…」
「この先、梶が谷ターミナル駅に着いたら、もう後戻りは出来ないんだが…引き返すなら今だぞ」
「…」
「さて、どうするね?」
「自分も、この国を変えたいんです」
「そっか…」
梶が谷ターミナル駅のプラットホーム、中央新幹線施設ゲートに、EF210機関車は吸い込まれて行った。