渡辺side
もうこれで決定的な失恋だ
ずっと見てきたんだから、あべちゃんを見てるのが、おれだけじゃないってのは知っていた
もちろん、あべちゃんの視線が向く先も、それがおれじゃないってことも、全部分かっていたことだ
でもどこかで、まだもしかしたらそのうち、なんて期待をして、諦められない恋心が、その事実を見ないフリをさせていた
みんなの前で幸せそうに並ぶ2人を見た時、どうして?という悲しみは、やっぱりな…、という諦めに一瞬で塗り潰された
じぐじくと胸が痛む一方で、それでも、好きな人が幸せそうに笑う顔に、よかったと思う気持ちも本当で
悲しさとか、悔しさとか、嬉しさとか、いろんな感情がぐっちゃぐっちゃで、渦巻いて、でもそれを冷静に見てる自分もどこかにいて
長年染みついた習慣は、それでもきれいに笑ってみせる
どれが本当の感情で、どれが本当の笑顔かなんて、もう自分でも分からなくなっている
祝福の気持ちは確かにあるのに、口から出ていくおめでとうの言葉は、空気に触れた途端に、ぼろぼろと端から崩れ落ちていくようだ
ひどい嫌悪感で胸焼けがする
コメント
3件
かわいそうだね
