目黒side
阿部ちゃんと佐久間くんのことを知ってから数日後、しょっぴーを家に呼んだ
本当はその日にでも一緒にいたかったけど仕事の都合がつかなかった
「ん、うまっ!」
「よかった」
「お前のご飯は元気が出るわ」
「ふふ、嬉しい。大したものじゃないけど」
「クソ忙しいはずなのに、よく作れるな」
「慣れちゃえば、それほどでもないよ」
「いや、すごいよ」
ご飯を食べている時だけは、心から笑ってくれてる気がするから、しょっぴーが元気なさそうな時は食卓を囲むようにしている
いつものように話しながら、箸を進める
ご飯を食べ終わった後もソファに座って色んな話をする
いつもそうだけど、話題の中心はほとんどが仕事だ
だからそのうちグループの話にもなって、どうしてもメンバーの話も出てくる
阿部ちゃんの名前を呼ぶ度に、聞く度に、少し寂しそうな顔をするのが耐えられなくて、ついに聞いてしまった
「しょっぴー、大丈夫?」
「ん?大丈夫だよ」
「ほんとに?俺に聞いて欲しいことない?」
「……今聞いてもらってるじゃん」
「仕事の話じゃなくて」
「ん、大丈夫」
「……ねぇ、しょっぴー、泣いてもいいんだよ。理由なんて言えなくったっていいから、泣いてもいいんだよ」
「……だから、大丈夫だって」
「……しょっぴー」
「……大丈夫だよ、めめ」
そういって笑う顔が泣きそうに見えるのは、俺が翔太くんを好きだからなのか
だって今も左手が前髪を触ってる
心配さえさせてくれないこの強情な人は、それでも、無自覚に、寂しそうにキレイに笑うから、どうしても気になってしまって、諦めさせてもくれない
左手で髪を触りながら笑いかけられる度に、俺じゃダメなんだと打ちのめされて
でも、そんなこの人のことを、分かって隣にいてあげられるのは俺だけなんじゃないかと、どこか傲慢な使命感が、飽きもせず隣にいようとする
「そっか。何かあったらいつでも聞くからね」
「…ありがと、めめ」
「…うん」
結局その日は、仕事の話を少しした後、いつもよりも早い時間に翔太くんは帰って行った
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