この作品はいかがでしたか?
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「翔ちゃん!起きなさい!朝よ!遅刻するわよ!」
「はっ!」
お母さんの声で起きた日向。朝だ!遅刻する!そう思いベッドから立ち上がると急に視界がぐらりとした。
「うっ………な、なんだ?」
目を擦り、もう一度立ち上がるとめまいは収まっていて、気のせいか。と思いそのまま服を着替え、鞄を持ち朝御飯を食べに行った。
「…あ、やっと起きたのね。何回か呼んだのに起きなかったから心配したのよ?」
「ご、ごめん………」
「んじゃぁ、お母さん仕事いってくるね。今日の夜もしかしたら帰れないかもしれないから夏頼むわね。さ、夏…保育園いくわよ!」
「はぁーい」
「じゃ、戸締まりよろしくね。いってきます。」
「いってらっしゃい…」
日向のお父さんは単身赴任で今はオランダにいる。その間お母さんがずっと面倒を見ているのだ。
「朝御飯食べなきゃ………」
いつもは朝はとても食欲があって食べない日なんてないのに、今日はあまり食欲がわかない。だから一口も口に運ばすにキッチンにおいてある水筒とお弁当を鞄の中に入れ、鍵を持ち家を出た。
「日向ぁぁぁぁ!!今日は勝つ!!!」
「あ………」
走る気力がなかったのか、影山のことは無視をしてゆっくりと歩いた。
「…?日向?走らないのか?」
「……先にいってて」
「お、おう……」
日向はとてつもない吐き気に襲われていた。朝御飯を一口も食べなかったからだろうか。と心のなかで原因を探し出す。でも、なかなか見つからない。気がついたら影山はいなくなっていた。
「俺、今日ちょっと体調悪いのかも……」
一人そう呟ききっとそうだと自覚した。
でも、もう後戻りはできない。
なぜなら、もう学校の目の前にたっているからだ。
「はぁ……遅刻しちゃった……」
時計を見てヤバいと感じても、からだがだるくて今から体育館へ走ろうとは思わなかった。
「謝らないと……」
「おはざーす」
「あれ?日向は?いつも一緒に来てるのに……」
「あ、あいつなんか『先にいってて』っていって」
「そんなの?でも、こりゃ遅刻だなぁ……なぁ、大地」
「そうだな……でも仕方がない練習始めるか」
「はい!」
そして、10分後……
ガラッ
「……ち、ちこくしましたぁ……」
「!?日向ボケ!遅いんだよ!」
「ごめん………」
「…日向がこんなに遅刻するなんて珍しいなぁ…走ってきてもない………。それに顔色も悪い。はい!けってぇい!お前体調悪いんだろ?」
「……」
「そうなの?おちびちゃん。」
こんなときまでもからかってくる月島に少しイラついたものの、起こるような気力はなかったので、なにも言わなかった。
「……まぁ………そうですね。」
「…んじゃあ、今日は帰りな?」
「はい………。」
(バレー好きの日向が素直に帰るって言った…)
部員のみんながそう思った。
「休むってことは伝えとくね。ゆっくり休みな。」
「はい…なんかすみません。」
「いいべ。いいべ。」
「では………」
そういって、体育館を出ていった。
ザーザー
いつも間にか大雨になっていた。傘は持っていなかったので傘を指さずに帰ろうとした。
「う………さむっ…。」
こんなの悪化するとわかっていても帰った。
そして、あまり人のとおらない歩道橋で足元が見えなくなり、吐き気に襲われ倒れてしまった。
「う………」
《朝連をしている皆さんにお伝えいたします。ただいまものすごく強い大雨が降っています。傘を持ってきていないかたは、昇降口前にある貸し出し傘をとり、下校をしてください。繰り返します。ーーーーーーーー》
「え?日向………傘指して帰った?」
「帰ってません…」
「やばくないか?」
「おれ、急いでいってきます!」
「よし!みんなでいこう!」
「「はい!」」
実は日向は総受けです。
「ケホケホ………ん…雨が強くなってきた。」
意識はもうろうとしていて、寒さに耐えながら息をしていた。その息もどんどん荒くなってきて、熱が出たと自学した。だが、体が全く動かないので立ち上がる自信もない。雨に打たれながら歩道橋で一人倒れているのだ。
しかも、人通りが少ないため助けが来ることもない。
部活の人の誰かがここを通るぐらいだ。この歩道橋は学校の近道として利用されているため、烏野の生徒しか通らないのだ。
だから、登校中の生徒に助けてもらおうと思ったがよく思えば登校の時間まであと二時間ぐらいある。それまでこの状態だったらきっと死んでしまうだろう。
「だれか………たす‥けて…」
「日向何処だ!!」
「まってください!田中先輩!この歩道橋!よく日向とおってます!」
「よっしぁぁぁぁぁい!!」
「あ!ちょっ!待ってくださいって!」
田中はものすごい勢いで歩道橋を上っていく。そして、視界に入ったのは歩道橋のはじっこで一人倒れている日向の姿だった。
「ひ、日向ぁぁぁぁ!!」
「!?」
「ちょっ、大丈夫か!?!?!?」
「ふぅ……はあ‥はぁ………」
日向に声をかけたが返事はない。
高熱が出ていると知り、急いで田中は自分の上着を日向に被せた。
「!?翔陽!」
「急いで暖かいところにつれてかないとヤバい!こいつめっちゃ冷たい!」
ブーブー
日向の上着から着信音がなった。
「だれからだ?」
《保育園》
「あ、きっと日向の妹の保育園からです!」
「とりあえず、電話出ろ!」
「は、はい!もしもし……!」
『え?あ、日向翔陽くん?だよね?あの‥大雨が降っていて危険な状態なので迎えにこれますでしょうか………』
「いえ、日向の友人です。日向は……体調不良で寝ているので、代わりに俺たちがいってもいいですか?いっと、なつちゃんも俺たちのこと知っていると思うので……!」
『あ………はい。わかりました。なつちゃんに伝えておきます。えーと………お迎えに来るお方のお名前お聞かせください。』
「えっと………誰いきますか?」
「んじゃあ、俺と西谷いくべ!」
「わ、わかりました!あ………えっと、菅さんと西谷さんです!」
『わかりました。保育園の居場所はわかりますか?』
「えっと………その保育園の名前って聞かせてもらってもいいですか?」
『はい………なごみ保育園です。』
「わ、わかりました!今すぐにいきます!」
『はい。』
「なごみ保育園らしいです!」
「あっ!俺知ってるべ!俺そこにかよってたから!」
「じゃあ、頼みます!」
「それと、月島と山口、影山、谷地の四人は日向の家に行ったことがあるだろう。だから、日向をつれてってくれ。そして、菅と西谷は日向の妹を迎えに。それ以外のものは心配だが帰ろう。」
「「‥はい!!」」
そうして、役割をわけそれぞれのことをした。
「影山…日向背負える?」
「あ……うん」
「よろしくね。」
「がんばれ王様。」
「が、頑張ってください!」
「お、おう………ていうか、こいつ軽いし応援されなくてもいいわ!」
「まぁまぁ………じゃあ、私は鞄持ちますね。」
「じゃあ、僕は傘をさすね。」
「じゃあ、俺何やるの?」
月島が残った。
「んじゃあ、日向の鞄から鍵だして。」
「う、うん………」
そして二十分後
「ふぅ……ついた!ツッキー!鍵!」
「わかってる。」
ガチャッ
「ん。あいた………」
「とりあえず……ここに荷物おいておきます!」
「あ、山口……」
「なに?ツッキー……」
「たぶん菅さんたち日向の家知らないから………」
「あ、わかった!いってくる!」
「いってらっしゃい!」
日向を軽くタオルでふき、服を脱がせ着替えさせた。その間谷地はというと……
「あれ?キッチンにグラタンの材料?作ればいいのかな?………あ、手紙」
《谷地さんへ(誰かわからないけど)
グラタンを作ってください。》
「あ……日向のお母さんから……まぁ、作るか!」
「よし、着替えは完了。ソファに寝かせよ。王様。」
「………おう……」
「ん……」
「お!起きたか?」
「………月島?影山?なんでここに………」
「おまえ、歩道橋で一人大雨の中倒れてたんだぞ?」
「あ……それはしってるでもなんで?」
おんぶしている途中に日向がおき、二人に話しかけた。
「大雨で、帰ることになったからだ。」
「そ、そうなんだ………って!夏は!?保育園迎えにいかないと!」
「あ………それは、菅さんと西谷さんがやってくれてる。」
「………そうなんだ……」
「あ!日向!起きたんですか!」
「うん。起きた。とりあえずソファに寝かせる。」
「あ、どうも月島。」
ソファにゆっくりと日向を座らせ、毛布をかけた。
「あの、これ……グラタン作ったんですが………いりますか?」
「え?作ったの?」
「あ………はい。なんかすみません。勝手に……」
「いや、いいけど……作れるんだ!すごっ!」
「何人分作ったの?」
「六人?ですかね……なんかキッチンにグラタンの材料がおいてあって………全部使っちゃいました。」
(あ………それきっと俺と夏とお母さんようだ。でも、お母さんは帰ってこないしいいか。)
「ツッキー!夏ちゃん連れて帰ってきたよ!」
「ありがと………って菅さんたちは?」
「途中で帰った!」
「ん……そうか。」
「わぁ!お姉さんグラタン作ったの?すごーい!」
「へへ………ほんと?」
「うんうん!夏食べたい!」
「うん。いいよ。」
(お母さんみたい……)
日向の家にいるものみんなが思った。
「あ………勝手につくって使ってなんなんですど………食べます?」
「うん!」
「たべる。腹へった。」
「じゃあ、僕も~」
「もらう。」
「夏も~!」
「はい!ちょうど六人分なので……」
「てか、よく食器とかわかったよね。」
「あ……じつは、この間日向の家にきて勉強会したときに…、なんか色々と食器の場所とか教えてくださって………。」
「え?そうなの?」
「はい!四人が寝ているときに!」
(そんなこともあったな………)
「あと、キッチンの手紙に日向のお母さんから、グラタンを焼いて作ってください。と書いてあったので……。」
「………それって誰目当て?」
「わ、わかりません!たぶん私だと思われますが………。」
「たぶん谷地さんだと思う。お母さんがこの間、谷地さんは、グラタンを作れるらしいね。っていってたから。」
「え?そうなの!?」
(何この二人の関係性……)
月島・山口が思った。ついでに影山は
(早くグラタン食べたい………)
それしか頭になかった。
「んじゃあ、日向が体調崩すの知ってたのかな?」
「でも、朝はキッチンにそんなのおいてなかったよ?」
「んじゃあ、一回帰ったのかな?そしてまた仕事に行ったのかも……!」
「あぁ……!その可能性もあるね!」
「でも、よく私が作るってわかったよね!」
「来てくれるって信じたんじゃない?」
「きてなかったら、どうしてたんだろ………」
(おいおい………そういう関係はここでやるな。)
月島・山口が思った。
(グラタン………)
もうこいつはそれしか頭になかった。
「んじゃあ、食べましょ!」
「夏運ぶ~!」
「熱いけど大丈夫?お盆にのせて行こうね。」
(なんかもう日向が夫で谷地さんが妻で夏ちゃんが娘にしか思わなくなってきた。)
月島・山口はそう思った。
「はい。これが……影山くんで、月島くん、山口くん、日向、夏ちゃん‥」
「あれ?谷地さんのは?」
「ないよ!」
「え……?いいの?」
「私は……お腹すいてないし!バレーやったみんなが食べていいよ!」
「………そっか。でも、寒いから少しあげるよ。てか、俺はバレーしてないし……」
「え?いや………いいの?」
「食べたいって顔してたから!」
「……じゃあ、少しだけもらいます!取り皿持ってくるので待っててください!」
「なんか、お兄ちゃんとお姉ちゃん……家族みたい!」
(よくいった!)
月島・山口はそう思った。
「「そ、そんなことない!!/です!!」」
「息ピッタリだぁー」
「やめてください!」
そうして、みんなでグラタンを食べ話をしながら、日向と谷地さんがうまくいっていることを確認しながら食べた。
その味はどこか懐かしく、とても美味しかった。
寒さなんて消えていったかのように心はほかほかになったとさ………
次回 研磨の体調不良。
《おまけ》
(翔ちゃん絶対体調不良ね………谷地さん来てくれるかなぁ?来てくれたら付き合ってほしいなぁ……あ!そうだ!私会社やすんであの二人の関係を見ちゃお!)
そういって、グラタンの材料をスーパーで買い、キッチンにおいた。ついでに谷地に向けての付箋にかいた手紙も。
「よし!これで、こっそり戸棚に隠れて二人の恋を見ましょうね!」
そういって、こうなったのである。
そして、グラタンを食べている最中………
(うんうん……!あの子達は結婚間違いないわね!)
これが大人である。
コメント
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飛雄ちゃんツボwww