長年続いた鬼と桃太郎の戦いがついに終止符が打たれた。だが四季が死んだ。五月雨との戦いに勝ったが多くの血を使ったこと、致命傷をおったことが原因の出血死だった。ある者は泣き叫び、ある者は静かに彼の名前を呼んだ。
その夜、無陀野は水面と炎が広かった世界にい た。すぐ夢の中だと気づいた。
「おっ、起きたな。ムダ先。いや、眠ったが正しいのか?」
そこに居たのは死んだはずの無陀野の教え子、一ノ瀬四季だった。無陀野は目を見開いた。
「四季……なのか…?」
「おう、ムダ先の教え子の一ノ瀬四季だぜ。」
「……四季…お前は俺に死なない、このタトゥーを完成させないと言った。何故死んだ。」
そう言う無陀野を見て一ノ瀬はキョトンとした。
「…ははっ。あぁ、元々は死ぬつもりはなかったぜ。でも、手遅れだった。まぁ、親父の仇を取れて俺は満足だけどな。ただ心残りがあるとしたらみんなを残して逝った事だな。」
「そうだ。お前は俺より先に逝ってはならなかった…。」
一ノ瀬は少し悲しい顔をした。
「…約束、守れなくてごめん。なぁ、ムダ先。最後にあんたに、いや皆にお願いがあるんだ。」
「なんだ?」
「俺の分まで生きて。みんなが笑える世界で生きて欲しい。」
「!」
そして一ノ瀬は人差し指を口元においた。
「それとな、ムダ先。これは俺とアンタだけの秘密だ。まぁ、秘密にするのはムダ先の自由だけど…。俺の回復力…鬼神の回復力をみんなに分け与えるよ。これでタダでは死ななくなるしな!」
笑顔で元気よく一ノ瀬はそう言った。
「…お前は…お前に会う機会を奪うというのか?」
無陀野の震えた声でそう言った。だが一ノ瀬は優しく笑った。
「…そうなるな。言っただろ?俺はみんなに生きて欲しい。なら少しでも生きられる可能性を上げるためにするのは当然だろ?」
「……そんな事できるのか?」
無陀野は半信半疑だった。そんな馬鹿げたことが本当にできるのだろうか。それはそうだ。歴史上の人物で能力…特性を相手に渡すなど聞いたことがなかったからだ。だが一ノ瀬はニカッと笑った。
「鬼の原点の力を持つ俺だぜ?鬼である限り、俺の好きなように残りの力を与えることなど造作もないないわ!まぁ、できるようになったのはムダ先のおかげだけどな…。」
無陀野は少し考えた。
「……なら、約束してくれ。」
「ん?何を?」
「もし、来世があるのなら俺たちはお前を見つける。見つけたらまた一緒に過ごそう。」
そして伝えられなかったこの思いを伝えよう。
無陀野はまっすぐ一ノ瀬の目を見てそう言った。その目は逃がさないという強い意志を感じさせる目だった。
「……ははっ!いいな、それ!それだったら俺とみんなの隠れ鬼ごっこだな!」
「そうだな。見つけてやるから覚悟しろよ?四季。」
「それは楽しみだな!」
一ノ瀬は楽しそうな顔をしていた。しかし一ノ瀬の身体は徐々に消えていく。
「あぁ…。もうそろそろお別れの時間だな…。そうだ、ムダ先、言い忘れてたんだけどさ代償ととして不老になっちまうけど…俺のわがままでごめんな…。それと俺と出会ってくれてありがとう…。そうみんなに伝えてくれ!」
涙を流し、笑顔で一ノ瀬はそう言った。
「あぁ、大丈夫だ。…お前の我儘などもう慣れた。みなに伝えよう。」
呆れた顔をしながら無陀野はそう言った。
「ありがとう。…じゃあな、ムダ先。」
「あぁ……さよなら、四季。 」
無陀野の顔は泣きながら微笑みそう言った。初めて見る無陀野の顔に目を見開いた。そして満面の笑みを無陀野に向けて消えていった。
雑談で言っていた新作です。
まぁ、投稿頻度はカスなんで期待はしない方がいいです。思いついたら書くみたいな形でやっていきたいと思います。雑談見てくれたら理由がわかるんで理由説明は省きます。ではまた次回。*˙︶˙*)ノ”
コメント
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物凄くいいですね!!まず幽霊四季君で無駄野さんとだけ会話してるところとかめちゃ好きです!タトゥーの話が入ってるとことかも細かいところ書いてくれてるし、前世でみんなと追いかけっこ的な伏線立てられてるのもいいし、四季君がみんなのことを思って鬼神の力を分け与えたりするとことか四季君の優しさが滲み出ててすごく好きです!!!