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#夢小説
紫倉 紫
220
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第2話 「朝一番の、うそ」
「山本さん、ちょっと話があるんだけど」
朝の教室。
まだクラスメイトがまばらな中、あんながりなの前に立っていた。
「うん? なに?」
りなはいつも通り、にこっと笑う。
あんなはその笑顔を見ると、少しだけ眉をひそめた。
「……昨日のことなんだけど」
「昨日?」
「後藤くんと一緒に帰る約束したでしょ?」
「うん!」
「それ、やめたほうがいいと思う」
「え?」
りなは目を丸くする。
「なんで?」
あんなは少し黙ってから、真剣そうな顔を作った。
「後藤くん、山本さんのこと好きじゃないらしいよ」
「……え?」
「昨日、男子が話してるの聞いたの」
「そうなの?」
「うん」
あんなは嘘をついていた。
けれど、りなはそれを疑わない。
「そっか……」
りなの顔が少し曇る。
「じゃあ、学校案内とか迷惑かな」
「たぶんね」
「……そっか」
「だから、あんまり近づかないほうがいいと思う」
「分かった」
りなは素直に頷いた。
「教えてくれてありがとう、あんな!」
「……え?」
「私、そういうの全然分かんないから!」
りなは笑う。
「助かった!」
あんなは一瞬、言葉を失った。
「……うん」
そのまま自分の席へ戻る。
そして小さく呟いた。
「……ほんと、簡単」
数分後。
教室にるいが入ってきた。
「山本、おはよ」
「……」
りなは机に突っ伏していた。
「山本?」
「るい……」
「何その顔」
「ちょっとショックなことがあって」
「は?」
るいが心配そうに近づく。
「誰に何された?」
「後藤くん、私と学校案内するの嫌みたい」
「……は?」
「昨日、お願いされたと思ったんだけど……」
「誰がそんなこと言った?」
「え?」
「後藤がそう言ったの?」
「……あんなが教えてくれた」
るいの顔が変わった。
「柳澤が?」
「うん」
「……」
るいは何も言わず、まさとの席を見る。
まだ来ていない。
「山本」
「ん?」
「それ、本人に聞いた?」
「聞いてない」
「じゃあ勝手に決めんなよ」
「でも……」
「俺、聞いてくる」
「え!?」
るいが教室を出ようとした瞬間。
「おはよう」
まさとが入ってきた。
「……!」
るいとまさとの目が合う。
「後藤」
「佐藤?」
「お前、昨日山本に学校案内頼んだよな」
「うん」
「嫌だったの?」
「え?」
まさとは本気で意味が分からない顔をした。
「何が?」
「山本と一緒に行くの」
「嫌なわけないじゃん」
るいが固まる。
「……は?」
まさとはりなを見る。
「昨日、お願いしたの俺だよ?」
「……」
りなは何も言えない。
まさとが笑う。
「今日、一緒に行けるの楽しみにしてたんだけど」
「え……」
りなの目が大きくなる。
「でも……」
「どうした?」
りなはあんなを見る。
あんなは知らないふりをして、友達と話していた。
「……なんでもない」
「?」
まさとは首を傾げる。
その様子を見ていたはやとが、るいの肩を叩いた。
「なあ」
「何」
「これ、ちょっとおかしくね?」
「……ああ」
「柳澤、何かやっただろ」
るいはあんなを見る。
「……俺、あいつ苦手」
「知ってる」
「でも、山本が傷つくのはもっと嫌だ」
はやとが少し驚く。
「お前、珍しく素直じゃん」
「うるせぇ」
一時間目が終わった休み時間。
りなのところへ、みつきが走ってきた。
「おりな!」
「みつき!」
「朝からどうしたの?」
「なんか元気なくない?」
「そうかな?」
「そうだよ!」
みつきはりなの顔を覗き込む。
「何かあった?」
りなは少し迷ってから、朝のことを話した。
「……って、あんなが言ってた」
「は?」
みつきの顔が一瞬で険しくなる。
「それ、あんちゃんが言ったの?」
「うん」
「……絶対おかしい」
「そう?」
「だって昨日、後藤がめっちゃ嬉しそうにしてたじゃん」
「そうだった?」
「おりな、鈍すぎ!」
「えぇ?」
みつきが頭を抱える。
「もう……」
そのとき。
後ろから声がした。
「おりな」
みつきが振り返る。
れいだった。
「どうした?」
「ちょっと元気ないから」
「りな?」
「うん」
れいがりなの前に立つ。
「何かあった?」
「……」
りなは答えようとした。
その瞬間。
「小脇」
るいが割り込んできた。
「何?」
「山本に何か聞くなら俺から聞く」
「別に俺は――」
「ならいい」
「佐藤、お前最近りなのことになると余裕ないな」
「……」
「もしかして、後藤のこと気にしてる?」
るいの顔が赤くなる。
「してねぇ!」
「してるじゃん」
「してない!」
りなが二人を見る。
「るい、れい、どうしたの?」
「何でもない」
二人の声が重なった。
みつきがため息をつく。
「……おりな、本当に気づいてないんだ」
「何が?」
「なんでもない」
昼休み。
まさとは一人で屋上へ向かおうとしていた。
その途中。
「後藤」
はやとに呼び止められる。
「何?」
「ちょっと聞きたいことある」
「うん」
「お前、山本のことどう思ってる?」
「……」
まさとの顔が止まった。
「どうって?」
「好き?」
「……」
「図星?」
「いや……」
まさとは少し考える。
「まだ分かんない」
「まだ?」
「でも、もっと話したいとは思う」
はやとは笑った。
「それ、十分始まってると思うけど」
「そうなの?」
「そうだよ」
まさとは苦笑した。
「でも、俺、転校してきたばっかだし」
「関係ないんじゃね?」
「そうかな」
「うん」
その会話を、少し離れた場所でるいが聞いていた。
「……」
はやとが気づく。
「るい」
「……何」
「聞いてた?」
「聞いてねぇ」
「いや、絶対聞いてたじゃん」
「……」
るいはまさとを見る。
まさとも気づいて、るいを見る。
「佐藤」
「何」
「俺、山本ともっと話したい」
「……」
「だから、これから仲良くなりたい」
るいはしばらく黙っていた。
そして。
「……勝手にしろ」
そう言って歩き出す。
はやとが追いかける。
「お前、悔しい?」
「別に」
「顔に出てる」
「うるさい」
「でもさ」
「何」
「一個だけ言っとく」
はやとは少し真面目な顔になった。
「後藤だけじゃないぞ」
「……?」
「お前のライバル」
るいは足を止める。
「どういう意味?」
はやとは教室のほうを見る。
そこには、りなとれいが話している姿があった。
そして――
その二人を見つめるみつき。
さらに。
少し離れたところから、あんなも見ていた。
はやとは小さく笑った。
「このクラス、思ってるよりずっと面倒くさいぞ」
るいは何も言わなかった。
ただ、りなを見つめていた。
その日の放課後。
りなが帰ろうとすると、机の中に一枚の紙が入っていることに気づいた。
「……何これ?」
紙には、たった一言。
『今日、放課後一人で来て。話したいことがある。』
名前は書いていない。
りなは首を傾げた。
「誰だろ……?」
その瞬間。
教室のドアのところに、あんなが立っていた。
「山本さん」
「ん?」
「……その紙、誰から?」
りなは紙を見る。
「分かんない」
あんなは笑った。
「そっか」
そして。
誰にも聞こえない声で呟いた。
「……ちゃんと来てね」
――その日の放課後。
りなを待っていたのは、一体誰なのか。
コメント
5件
あーーもう読んだ読んだ!!😭💕 「朝一番の、うそ」、めちゃくちゃ面白かったよ…!! あんなの「ほんと、簡単」のところ、ゾッとした…あの子、計算高すぎでしょ…💦 逆にりなは純粋すぎて心配になるけど、るいの「山本が傷つくのはもっと嫌だ」には胸きゅんきた…! 最後の紙の謎も気になりすぎる…誰からだろ…次回が待ちきれないよ〜🌸