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「あっちぃー…」

今日も変わらずバイク屋で整備やらなんやらをこなす。イヌピーには、『暑い暑いうるさい』と言われながら。いや、暑いもんは暑いだろ。とか言いつつも、仕事は順調に進み問題なく一日を終えた。後は、帰ってアイツの顔を見れば落ち着く。

そう思いながら家路に着く。

……数十分後

「エマー、ただいまァ」

『ん…ケンちゃん…?』

玄関を開けリビングに向けて声を張りつつ靴を脱ぐ。小さく聞こえてきた声に、思わず頬が緩むのを感じて”惚れてんなァ”と一言。アイツの声だけでこれだ。傍に居れば触れたくなるのは当然で。早く抱き締めたいと流行る気持ちを押さえつつリビングの扉を開け、視界に入ったのはぬいぐるみに頬擦りするアイツの姿。一瞬思考が停止した。

「………おい、エマ。なんだそれ」

直ぐに我に返ると足早に相手の背後へと向かう。待て、なんだそのぬいぐるみは。オレ知らねーぞ。我ながら子供じみた嫉妬だとは分かりつつも、一番に甘える相手が自分ではなく”ぬいぐるみ”であることに憤りを隠せない。ソファーの背凭れ側に立ち相手を見下ろす形で言葉を降らせると、上目にこちらを見て今だ寝ぼけている様子で口を開く。

『ん…?あ、ケンちゃん…本物?』

そういって微笑む相手に、愛しさ込み上げるのを感じるもののやはりまだ納得いかず素直に笑顔を返せない。

『ケンちゃん、どーしたの?』

不思議そうに問い掛ける相手の未だ手にあるぬいぐるみに視線向けると、背凭れを跨ぎ相手の背後に無理やり身を滑り込ませて座り込むとそのまま背後から抱き締め。しっかりと身を寄せるように華奢な肩へと顎を乗せて。ふと相手の動きで再びぬいぐるみを抱こうとするのを知ると、させるかと内心漏らして顎へとてを滑らせこちらへと顔を向けさせて。

「エマァ、オレがここ居んのにぬいぐるみばっか構ってんじゃねぇ」

『………へ?』

『だーかーらッ、そんなぬいぐるみより、オレを構えつってんだよ、分かれ』

そう拗ねた口調で告げる。おそらく、それは表情にも出てるんだろう。大人気ないことをしている自覚は嫌と言う程ある。けれど、ぬいぐるみに向けられた無邪気な笑顔と愛しげな眼差しは、オレだけのものだと…子供じみた独占欲が涌き出ていた。

『もーっ、なに拗ねてんの、ケンちゃん』

そんなオレに返されたのは、呆れたような言葉。ただ、コイツはオレの欲しいことを意図も簡単にこなしてくる。今もだ。言葉の後、こちらへと向かい合うよう身体を捩らせるのを視線で眺めつつ、不意に額が重なると思いがけない事に瞬き数回。あぁ、コイツはこういうやつだ。オレを喜ばせるのが上手い。

『嘘だよ、ぬいぐるみにヤキモチって、ケンちゃんも可愛いとこあるね。』

無邪気な笑顔で告げる相手に、悔しさも相まってむっとした表情向け『あ?うっせ』と返せば「また拗ねた。」と楽しげな声音で返ってくる。

こんな風に穏やかな時間は、コイツとだから叶う。これから先も、こうして笑い会える毎日をエマと過ごしていきてぇな。なんて思った、ある日の出来事。

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ノベルぜんぜんないから見つけられてうれしい おもしろかったです🙈🙈

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