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ディオの言葉に私の心に傷が付く。
「何故。俺には力がある。訳ないさ。俺はこんなところでもさっさと生還して、生きていたいんだ!」
「さっき言ってたじゃろう。カルダの魔術で眠らすと……。赤羽くんのさっきの力は、どうやら夢の世界で、起きていないと出来ないのじゃろう」
「ええ、そうよ」
奥の森で女子供と一緒にいた霧画が駆けだして来て話に割って入った。もう安心だと思い呉林もやってくる。
「赤羽さんの力は、この夢の世界で覚醒することにあるの」
「ならば、尚更負ける。敵はこの村の四倍の規模。そして、赤羽くんは何かの魔術で眠ると、力を失う。それに敵の事を全く知らない。勝機とは幾らか知恵比べでも力比べでも対等でなければ生まれないんじゃ」
「大丈夫さ。何とか寝ないようにするよ。眠気覚ましに剣で足を刺してもいい」
ディオは仕方ないといった顔をして、呉林姉妹の手を取り、大急ぎで長老のテントへと向かう。私も付いて来いと言われたので走る。
「……僕たちは生き残った村の人達を見てきます」
渡部が呟いた。
角田と渡部は村の人たちの被害を確認する役に回った。
「何か書くものを!」
ディオはテントに私たちと雪崩れ込むと叫んだ。私は手近かの木の棒を渡して、地面に書いてくれと言った。
ディオに大声で呼ばれた長老とバリエも走って来る。
「ここが、わしらのいるところじゃ!」
地面に木の棒で丸を書く。
「そして、ここがやつらのいる所じゃ!」
丸の離れた先に丸を書いた。
「この森のわしらとやつらの正面には、何があるのじゃ。川か谷か……!」
「とても大きな広場が有ります」
バリエが口を開く。
「それじゃ。その広場には丘はあるか」
「はい。この森を少し抜けると、幾つかの起伏があります」
「起伏と広場か……。やはり、正面きっての戦いしかないか」
ディオは考え込んだ。
「穴掘りが得意な者はおるかな」
「はい。何十人かいます」
ディオとバリエの会話の中、私は兵力が足りるのか足りないのか解らなかった。向こうは村は大きいが、黒い霧を何千体もだせるのなら村の大きさは関係ないはず。逆に、黒い霧が数百体しかだせないのなら……。それと、そこの村の人たちは戦いに参加するのだろうか。
「勿論しないと思うわ」
呉林が私に話しかけた。
「え?」
「要するに、黒い霧だけの数を知りたいのでしょう? カルダの村の人は参加しないわ」