母親が退院するまでのひとりで過ごした一年間は、寂しかった。
でも、もう大丈夫。
母ちゃんが慰めてくれるから_。
そう思っていた。
母「お父さんが、事故…?」
その日から母親は変わった。
弟のせいが生まれる前は「ymdは素直で真面目な大人になるわ。」なんて言っていたのに。
ymd「お腹すいた…。」
母「せいが泣き止まないの。冷蔵庫にスーパーで買った食パンがあるわ。」
母親は俺のことを見てくれなくなった。
いいな。一年前まで俺がいた場所。
あの日は弟が生まれることが楽しみで仕方がなかったのに、今では弟は可愛く思えなかった。
弟には妬みだけが渦巻いた。
小6の時、運動場で遊んでたらジャングルジムから転落した。
頭を打ったが、幸い命は助かった。
母「ymd!よかったぁ…。生きててくれて本当によかった…。ごめんね、こんなダメなお母さんで…。頭の怪我は大丈夫?」
嬉しかった。
それと同時に芽生えた欲望。
「いつもこんな風に俺のことを見てほしい」
怪我したり病気になったりすれば母ちゃんはもっと見てくれる…?
そう思った俺はわざと転んで怪我したり、熱を出す方法を調べてやってみたりした。
けど、あの日より酷い怪我はしなかった。
だから、いつも通り、弟の世話に夢中だった。
ymd「もう一回だけ…もう一回だけで良いから、あんな風に俺を心配してほしいなぁ…」
例え、どんな手を使ってでも…。
ymd「…!そうだ、怪我をしたって嘘ついちゃえばいいんだ…!」
~ymdは素直で真面目な大人になるわ。~
でも、これじゃあ素直で真面目にはなれない。
いや、けど、嘘ついちゃうのは、後一回、たったの一回だけだから…。
コメント
0件