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膝に絵の具で傷を描いた。
家に帰って母親にこう声をかけた。
ymd「今日、ブランコから落ちて、膝を怪我しちゃった…」
母「大丈夫…?」
そう言って母親は弟をベッドにそっと置いて、俺の方に駆け寄ってきた。
母「なんで怪我しちゃったの…?」
ymd「えっと…えっと…さくとに押されちゃって…」
また、嘘を重ねた。
友達のさくとは活発でちょっと乱暴だから信じてもらえると思ったから。
母「そう…もしもし、さくとくんのお宅ですか?すみません、うちのymdがお子さんに押されて怪我したみたいで…」
ヤバい、嘘ってバレるかも…。
そう思ったけど、母親は俺のことを少しも疑いなんてせず、信じてくれた。
嬉しかった。
けど、この嘘は一回じゃ済まなかった。
先生に勉強のできる友達と比べられて批判されたり、男子に嫌がらせされた。
その度に母親の「大丈夫?」という優しい声が聞きたくなって嘘をつき続けた。
何度も、友達のせいで怪我をしたと訴えて、母親が友達の家に電話する。
理不尽に親に怒られた友達が俺と縁を切る。
気づけば俺は友達がいなくなった。
今思えば全くもって当然のことだけど、嘘が習慣になっていた俺には分からなかった。
ふりかえれば、友達を失ってまで親の目を引こうとした俺が馬鹿みたいだ。
けど、もう嘘をつく前には戻れない。
酒やゲームみたいに、一度やり始めれば、もう辞められず依存してしまう。
今更正直者になっても意味がない。
そう思った俺は開き直ってもう嘘をついて生きていくことにした。
ごめんな母ちゃん…。
俺はもう、真面目で素直な大人にはなれない。
真面目で素直な大人になるのは、大切に育てられた弟に期待してくれ。
中3の冬、母ちゃんが病気になった。
その日からもう一度人生が変わった。