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「っはぁあ……さぶっ!
今夜は大晦日だけど、夕飯これでいっか。
あ~かいきつね〜」
俺は盛大に独り言を垂れながらベリベリと蓋を開けた。
お湯を注ぎ、めくれ上がる蓋を押さえんとして箸を取りにキッチンへ。
「忘れた忘れた、箸~」
洗い物面倒だから割り箸でいっかなー。
割り箸を持ってリビングに戻ると、
はて。
こたつに誰か入ってる。
白い着物の若い女……いや男?
え、なに、オカルト?
「誰だオマエ」
ドスを効かせた低音で尋ねると、
「いつもご贔屓ありがとうございます。
記念すべき100個目の御召し上がりにつき、お礼を申し上げに参りました」
丁寧な言葉遣いのその人は、白地の着物に紅色の衿が覗く、婚礼の白無垢のような出で立ちをしていた。
優しいタレ目に色白で滑らかで艶やかな頬。
モチッとした唇が妖艶な美しい人だった。
髪はそこそこ長めのショートカットで、ニコッと笑って頭を下げる。
その頭にはふわふわ三角形の耳。
後ろには大きな尻尾が付いていて、もこもこツヤツヤの毛並み。
上等なフォックス……化けギツネか!?
「ど、どこから入ってきた……?」
「入ってきたと言うよりは、出てきたの方が正しいかと」
そう言いながらその人はキツネうどんのどんぶりを指差してる。
「え、こっから出てきたの?
お湯入れた後に?」
ヤケドしない? 熱湯だよ?
アツアツのどんぶりと美しいその人を代わりばんこに見つめる。
するとそのきつねはフフフと小さく笑って、タレ目をさらに垂れさせた。
「そろそろ食べ時ですよ、5分強経ちました」
ハイどうぞと言いながら、俺の手から取った箸を割って手渡してくれる。
「……ありがと」
規定の時間より長めが好きだ。
この子はその事を完全に把握しているようだ。
促されるまま蓋を開けて、麺を一気に啜ると、俺的にベストの状態だった。
さすがどん◯衛の化身のきつねちゃん。
「お兄さん、いつも慌てて食べるから……
ほら、カッコイイお顔にお汁飛んでしまってます」
流麗な所作で振り袖の袂を押さえ、腕を伸ばしてティッシュで拭いてくれた。
続いてその細い指先でほっぺたをツンツンされ、頬杖ついて小首を傾げて、ニコニコと楽しげな様子。
小悪魔的な笑みを湛えた唇を舌で舐め舐め、うるうるのお目目で甘く見つめてきた。
……なんだこのきつね、エロいな。
とっても綺麗で、手付きも目付きも唇も、何故だか妙に色っぽい。
って、エッチな見た目に惑わされてたけど、結局女?男?
「あのー、あなたは女性ですか?」
「じょ、女性?そんな……僕、男です。
あっ、女性のほうがいいですよね、ごめんなさい。」
急にしょんぼりしたかと思えば、耳を垂れさせ、目に涙を浮かべ始める。
え、 泣く?
「イケメンでかっこよくて、お箸を上げ下げする筋肉さえも素晴らしくて……
素敵なお兄さんにお会いしたくて来てしまって……
あ、あの、すぐにメスのきつねを呼んでまいりますから!」
ごめんなさいと慌てた顔をしながら、俺のうどんのどんぶりに顔を突っ込んで来ようとするので全力で止めた。
「待て待て待て!熱いから!危ない!」
「いいえ、グスン……いいんです僕なんて。
あなたとやっと対面できると楽しみにしていた僕がバカだったんです……
やっぱり女のきつねのほうがいいですよね」
ふにふにと泣きべそかきながら、捨て鉢になってどんぶりに帰ろうとする彼。
どうやら本当に出たり入ったり出来るらしい。
便利なのか、便利じゃないのか。
「別にいいよ、お礼だけならあなたでいい」
「でも……僕でいいんですか?」
「いいも何も、どん兵◯100個食べたらキツネにお礼されるってさっき初めて知ったし……
だからあなたでいい、かわいいし」
登場した時のスンとしたお澄まし顔も綺麗だったけど、
ニコニコ楽しそうに笑う顔や、
さっきの慌てっぷりとか泣きそうになってるところを見たら、
なんだか愛着が湧いたと言うかなんと言うか。
普通にタイプなんだよなー。
「か、かわいい……だなんて」
目に見えるくらい、一気に頬を赤く染めて恥ずかしそうに俯いている。
なんでこんなに照れるのかと不思議だったが、さっきこの子、俺に
『やっと会えるって楽しみにしてた』
って言ってたっけ。
その俺に可愛いて褒められたからこんなに照れてるのかな?
なにそれ、ウブすぎてかわいいんですけど。
会うの楽しみにしてくれてたのに、こんな変態なことしか考えてないの、なんか申し訳なくなってきた。
「きつねさん、名前は?
俺は若井滉斗。若井でいいよ」
ここでやっと俺はきつねの彼にお茶を出して名前を聞いた。
「若井さん……僕は『涼架』です。
今夜はよろしくお願いいたします」
『涼架』かぁ。
見た目だけじゃなくて名前まで可愛いのね、うん好き。
「おっけー、じゃあ涼ちゃんでいい?」
「涼ちゃん……はい!
すごく可愛らしい響きでとっても嬉しいです!」
そういう彼は耳をぴくぴく動かし、
尻尾をぶんぶん振っている。
感情がわかりやすい。
脳内が可愛いとエロいで埋め尽くされながらも、俺は涼ちゃんとお喋りをすることにした。
コメント
2件
すごすぎる😭
どうしたらこんなに神なアイデア思いつくんですか…