テラーノベル
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第10話「黒羽の優雅な挑発」
地獄の最先端テクノロジーが密集する「Veeタワー」。
その最上階にあるヴォックスの最高機密オフィスは、地獄中の電波を監視する無数のモニターと、青いネオンの光で不気味に満たされていた。
サーペンシャスから没収した通信機を手に、ノアはそのタワーの厳重なセキュリティを、30羽のカラスの軍勢と共に文字通り「正面突破」して最上階へ現れた。
少しふわっとした黒髪を揺らし、肩にはいつも通り相棒のレインを止まらせている。ノアは怒る風でもなく、いつものフランクな調子で、少し低い耳に心地よい声を響かせた。
「ハロー、ヴォックス。突然押しかけてごめんなさいね。防犯カメラを全部カラスたちに壊されちゃって、インターホンが押せなかったの」
「テメェ……ッ! フェザー・デーモン!!」
デスクにふんぞり返っていたヴォックスは、跳び上がって画面を真っ赤なノイズで染めた。
まさかハズビン・ホテルのオアシスと噂される女悪魔が、単身で自分の本拠地に乗り込んでくるとは夢にも思っていなかったのだ。
「サーペンシャスを脅して、私のカラスや左目をどうこうしようって計画、全部筒抜けよ? でも、安心なさい。私は怒りに来たわけじゃないの」
「あぁん!? だったら何しにきやがった!」
ヴォックスの身体からバチバチと強力な電撃が放たれ、オフィスのガラスが細かく震え出す。
いつ戦闘が始まってもおかしくない一触即発の空気。
だが、ノアはいつもの落ち着いたイケボで、クスッと上品に微笑んでみせた。
「ただね……あなたのその素晴らしいテレビの画面、さっきからずっと画質が荒くて、ノイズが酷いなと思って。もしかして、アラスターに負けた時の古いトラウマのせいで、回路がショートしかけているのかしら?」
「なんだと……ッ!!」
それは、ヴォックスが最も触れられたくない、かつてアラスターに惨敗したという地獄最大のタブーだった。
アラスターを激しくライバル視する彼にとって、これ以上の侮辱はない。
「アラスターがラジオで私のことをあれだけ褒めてくれたから、嫉妬しちゃったのね。可愛いところもあるじゃない。でも、おいたが過ぎるわよ。画面が完全に割れて、ただの粗大ゴミになっちゃう前に、少し頭を冷やした方がいいわ」
「黙れぇええ!! 生意気な新入りが、調子に乗ってんじゃねえぞ!!」
限界を迎えたヴォックスの怒りが爆発した。タワー全体の電力が彼の身体に集中し、周囲の全モニターが激しく明滅する。
彼は右腕を巨大な電撃の刃に変形させ、ノアの首元を目がけて一瞬で間合いを詰めた。
だが、ノアは動かない。
ただ、彼女の長い前髪の奥の「左目」が、静かに開帳された。
その瞬間、ヴォックスの電撃が、ノアの背中から広がった「漆黒の翼」が放つ圧倒的な闇の魔力によって、一瞬でかき消された。
オフィス全体の電気が完全に遮断され、完全な暗闇が部屋を支配する。
闇の中に浮かび上がるのは、ノアの紅い左目と、30羽のカラスたちの不気味に光る眼光だけだった。
ヴォックスの液晶画面が、恐怖でガタガタと細かく震え出す。
アラスターやルシファーが彼女を「最高の親友」として側に置く理由――その底知れないオーバーロード級の『本性』を、ヴォックスは身を以て理解した。
完全にヴォックスの動きが止まったのを確認すると、ノアはフッと左目を閉じ、漆黒の翼を収めた。
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オフィスのネオンが、何事もなかったかのようにパッと再点灯する。
ノアはいつもの優しい、フランクなお姉さんの笑顔に戻り、低い声で言った。
「じゃあ、お買い物の続きがあるから、私はこれで失礼するわね。サーペンシャスにはもう構わないであげて。……バイバイ、ヴォックス」
ノアはそう言い残すと、激昂し、そして恐怖で硬直しているヴォックスには見向きもせず、エレベーターのボタンを優しく押して、優雅にタワーを去っていった。
肩のレインが、最後に「ガァ(負け犬め)」とでも言うように、ヴォックスに向けて一度だけ冷やかすように鳴いた。
残されたヴォックスは、拳を震わせながら、誰もいないオフィスで
「ふざけやがって、あいつら全員ぶっ潰してやる!!」
と、みっともなく叫び声を上げるしかなかった。
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第10話「黒羽の優雅な挑発」
次回のお話はぁ〜?
第11話「オーバーロードの凱旋と、二人の過保護な怪物たち」
お楽しみにぃ〜……ネムイ……
コメント
3件
見るの遅れてごめんね😭いや今回も最高すぎる…✨️ヴォックスとアラスターの絡みはやっぱいいね!