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第八章:酔いと抱擁、嫉妬が渦巻く夜兵舎でのささやかな祝杯
壁外調査の成功と、サクラの目覚ましい活躍を祝うため、調査兵団の兵舎でささやかな宴が開かれていた。訓練兵時代とは違い、兵士になった者たちには酒が許される。
サクラは、訓練の成果を認められた高揚感と、兵士たちの温かい雰囲気に流され、勧められるままにワインを口にした。転生前の彼女は未成年で飲酒経験がなく、アルコールに極端に弱かった。
「サクラ、君の今日の活躍は本当にすごかった!人類最強の兵士長と団長が、あんなに驚くなんて!」
「うふふ…でも、私…は…ただ…」
サクラの身長150cmの小さな体は、あっという間にアルコールに支配された。彼女の頬は真っ赤に染まり、焦点の合わない瞳はトロトロと潤んでいる。やがて、サクラはテーブルに突っ伏し、そのまま意識を失ってしまった。
「サクラ、大丈夫か?」他の兵士が声をかけるが、サクラはピクリとも動かない。
エルヴィンの「独占」的な抱擁
その報告はすぐにエルヴィン団長の耳に入った。エルヴィンは静かに宴の場に現れた。
「皆、ご苦労だった。サクラは私が運ぼう」
エルヴィンは、酔い潰れたサクラの前に跪いた。彼の視線は、周囲の兵士たちではなく、ただサクラだけに注がれている。その顔は、戦場での冷徹な表情ではなく、極めて優しく、独占的な感情を湛えていた。
エルヴィンはサクラの体を、両腕でそっと掬い上げた。
――お姫様抱っこ。
身長188cmのエルヴィンの腕の中で、150cmのサクラの体はあまりにも小さく、華奢に見えた。サクラは、エルヴィンの広い胸に頭を預け、スヤスヤと眠っている。
エルヴィンは、その重さを感じさせない優雅な足取りで、兵舎の廊下を歩き始めた。まるで、彼は戦場の将軍ではなく、自分の愛しい娘、あるいは花嫁を運んでいるかのように。彼の心は、この物理的な接近によって、満たされ、歓喜していた。
(サクラ。君は、こんなにもか弱い。私の腕の中で、何の警戒心もなく眠っている。この純粋な安らぎは…誰にも渡さない)
リヴァイの静かなる激怒
エルヴィンがサクラを団長室に近い専用の部屋へ運ぼうと、静かな廊下を進んでいた、そのとき。
角を曲がった廊下の向こうから、リヴァイが姿を現した。彼は、翌朝の訓練スケジュールを確認するため、エルヴィンを訪ねようとしていたのだ。
リヴァイの瞳が、エルヴィンの腕の中で眠るサクラを捉えた瞬間、彼の全身の動きがフリーズした。
サクラは、自分の最も守りたい「清潔で安全な領域」の外で、酩酊している。そして、最も警戒すべき「知性派の怪物」であるエルヴィンの腕の中にいる。
リヴァイの感情:
リヴァイの心には、冷たい怒りが渦巻いた。
激しい怒り(サクラに対して): 「何をしている、この馬鹿野郎が。訓練の前に酒を飲むとは。自分の体をなんだと思っている。汚れる、乱れる、そして、隙を見せるとは!」
圧倒的な嫉妬(エルヴィンに対して): 「あの野郎…!あんな顔をしやがって。**『計画の障害』**だと偉そうに言っておきながら、自分だけは彼女の体を抱きかかえている。俺が、一番彼女を清潔に保てるのに…!」
強い庇護欲: 「すぐに俺に渡せ。あいつの世話は、俺しかできない。俺の目が行き届かない場所で、一秒たりとも放置しておきたくない」
リヴァイは、言葉を発する代わりに、ブレードを抜く直前のような、殺気を孕んだ静かな眼差しをエルヴィンに向けた。
「…団長。すぐに、サクラを床に降ろせ」リヴァイの声は、低く、威圧的だった。その場の温度が、一気に数度下がったかのように感じられる。
エルヴィンは、その殺気を受け止めながらも、動じなかった。彼は、リヴァイの嫉妬と怒りを理解し、それを楽しんでいるかのようにさえ見えた。
「リヴァイ。彼女は眠っている。彼女の部屋まで運んでやっているのだ。君のその過剰な『清潔さ』は、時に非効率的だ」
エルヴィンは、サクラを腕に抱いたまま、リヴァイの横を通り過ぎる。
「…私に感謝しろ。君の愛しい**『戦場の花』**は、今、最も安全な場所にいるのだから」
リヴァイは、その背中に向かってブレードを投げつけたい衝動を、寸前のところで抑え込んだ。彼は、その夜、一睡もできず、サクラの部屋の前を見張ることになるだろう。
サクラを巡る二人の英雄の、この静かで激しい戦いは、夜が明けても終わることはない。