「えっ」
「俺、あんなカッコいい人には敵わないから。仕事上でも、判断力があって、何があっても動じない。それに、誰にでも優しくて紳士的で……。だから、琴音が榊社長のこと、どう思ったかちょっと気になった」
嘘……
龍聖君、ヤキモチ妬いてくれたの?
「もちろん榊社長さんはとても素敵な人だけど、男性としては龍聖君の方がずっとずっとカッコいいって思ってるよ」
私なんかが何を上から言ってるのだろう。
かなり恥ずかしい。
「……なら良かった。じゃあ、行ってくる」
「あっ、うん。お仕事頑張ってね、気をつけて」
「気をつけるのは琴音だろ。お腹、冷やすなよ」
「うん、わかってる。今日からこの可愛いマタニティのパジャマを着るの楽しみだな」
「ああ、きっとすごく似合うよ。本当に……大事な大事な俺達の赤ちゃんがここにいると思うだけで幸せな気持ちになる」
龍聖君は、私のお腹を優しくさすった。
「そうだね、ここにいるんだよね。何だか不思議」
龍聖君との間に授かった大切な命。
赤ちゃんができたとわかって、2人ともどれだけ喜んだことか……
あの時の感動は一生忘れられない。
自分のこのお腹の中に別の命が存在するなんて……
言葉では言い表せないくらい幸せな感覚だ。
「俺には、お前達が世界中の誰よりも大切なんだ」
「……うん、ありがとう。私も大切だよ。龍聖君と赤ちゃんのこと、何よりも1番大事」
本当に、心からそう思ってる。
泣きたくなるくらい、そう思う。
龍聖君は、優しい表情でうなづいて、そのまま仕事に向かった。
「行ってらっしゃい、頑張ってね。気をつけて」
タクシーに乗り込む龍聖君に向かって、私は小さな声でつぶやいた。
「もう少し何か見てみたいな……」
龍聖君を見送り、私は1人で買い物することにした。
その前にカフェでひと息。
イスに座ってアイスのロイヤルミルクティーを注文した。
私は今、妊娠5ヶ月。
まだお腹はそれほど出ていないし、つわりもほとんどなかった。






