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来世はくらげ
第8話「黒衣の来訪者 ―過去と共鳴―」
――夜。
宿の一室。
リアは眠りについていた。アレスは、まだ目を閉じることができずにいた。
(さっきの任務でも、スキルは確かに反応してた……でも、どうして“リア”が関係してる?)
ふと、窓の外に気配を感じた。
「……誰だ」
アレスが身を起こした直後、窓が音もなく開いた。
現れたのは、黒いフードの人物。ギルドの屋根で彼らを見下ろしていた――あの男だ。
「ようやく二人きりになれたな、“勇者”アレス」
「お前は……何者だ」
「私はただの観察者。そして“警告者”だ」
フードの奥から覗く瞳は、異様な光を宿していた。
「その少女――“リア”を、今すぐ手放せ」
「……ふざけるな。理由も言わずに仲間を差し出せってのかよ」
アレスの言葉に、男は小さく笑った。
「お前はまだ知らないのだろう? 彼女の本当の名を。“リア”というのは偽名だ」
「……!」
その声に反応するように、眠っていたリアが身を震わせる。
「やめろ……やめて……!」
男はさらに続ける。
「記憶は封じられている。だが、時間の問題だ。
彼女の本当の名は“リア・ラティナ=コード”。
忌むべき“破壊の器”。この世界に災厄をもたらす者だ」
「……っ!」
アレスが剣を抜いた――だが、リアがそれを止めた。
「アレス……だめ……この人の言ってること……たぶん、嘘じゃない……!」
アレスは驚いた。
リアの目から、大粒の涙がこぼれていた。
「私、時々……夢を見るの。街が、火に包まれて、人が……死んでいく……
誰かを、自分が……焼き殺してるような、そんな夢を……!」
男が静かに言う。
「それが“記憶”だ。お前がかつて、どんな存在だったかのな」
アレスは――それでも剣を下ろさなかった。
「リアが何者だったとか、関係ねえよ。
過去がどうであれ、“今”のリアは、誰かを傷つけてなんかいない」
「勇者……」
「それに、あんたが言う“災厄”だって、未来の話だろ? だったら、止めればいいだけだ」
沈黙が落ちた。
黒衣の男は、ほんのわずか――口元を歪めた。
「面白い。だが、その覚悟が“どこまで持つか”……いずれ試される」
風のように、男は去った。
◆ ◆ ◆
男が消えた後、リアはアレスの前で膝を抱えて泣いた。
「ごめんなさい……わたし、本当は怖いの。
わたしが本当に、そんな“悪い存在”だったらって……!」
アレスは、そっと彼女の頭を撫でる。
「バカ言え。リアはリアだ。あの男が何を言おうが――関係ねえよ」
その言葉に、リアは顔を上げた。
「……ありがと、アレス」
そして、その夜。
リアの心に封じられていた“何か”が、わずかに動いた。
それは再び“覚醒”しようとしている。
彼女の中に眠る、もうひとつの力――そして、もうひとつの「意志」。
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