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「旦那様!」
「…」
「旦那様からいただいたこの首飾り…リボンやレースが愛らしい見た目で、最近はずっとこればっかりなんですよ!それで…」
「俺では無く侍女の選んだものなので」
勘違いするなってことですか?
「あっ!見てください旦那様!可愛らしいですね、蝶々ですよ!」
「…」ツーン
いや蝶々もドン引きっすよ。てか無視しないで
「旦那様!」
「…」
「旦那様ーー」
「…」
「…」
日本「もうだめだぁー」
あの日から何日何ヶ月。ずっとこうして彼にひっついているものの、これといった効果も変化すらもない。
日本(どうしたものか…)
今日も惨敗、頭の痛いようなことをぐるぐると考え髪を梳かしながら進んでいると、そこに躓き、丁度椅子の所に飛び転げた。女性としての自分に慣れきらない身体をつくずく痛感しつつも、怪我の無い様子にほっと息をつく。柔らかく質の良い背もたれに美しい彫刻が端々に彫り込まれた象嵌。ぷりんせすちぇあとか言うらしいが、今までが座布団だった私にも安易に予想がつく程にはお高い品だろう。うちに来る外商に随分ねぎって父上がやっと事務用に買っていたのを思い出す。しかしまた恐ろしいのは、この部屋はこの椅子だけではないのだ。硝子の綺麗な照明から美しい色の絨毯。布団なんかは洋ベッドな上に上品な窓掛けが周りを囲っている。
日本(今だに慣れないな…)
初めて部屋を案内された時、あれらの家具は勿論全て豪華であんまりに素敵な桃色の部屋な上、可愛らしい洋服や繊細な装具が入った小堤もめいっぱいに積まれてあったから。小っ恥ずかった反面もしかして!などと期待してしまっていた。だからその日から、彼に近ずき吹雪を吹かせられる度恥ずかしさのような悲しさのような、哀れな気持ちで毎日胸がいっぱいになった。期待なんかやっぱりするものでもないな。彼に対してなんかは特に。
日本(うーん…)
私がここへ嫁入りしてからかれこれ2週間程だろうか。外で降る淡い白雪は、冷たい彼を表しているような、今の私を表しているような、そんな気がして。硝子窓を覗き込んでいる口からははぁ…と1つため息が漏れた。私に魅力がないにしろ、一応夫婦…しかも新婚ではあるのだから、ここまでの一方通行は寂しすぎる。そろそろ何かそれらしい進展があってもよいのでは無いかと思うが、そもそもが政略結婚。情を割り切っている彼が普通なのか、私もそうするべきなのか。どうせ待遇の為なんだし
日本(…でも、)
日本「…んん“〜気分転換にお屋敷の中散歩でもしようかな」
そう呟き、部屋のドアを開けると
ロシア「!…」
彼が立っていた
日本「え…」
嘘だろ
どうして
あまりの急展開に胸の鼓動が一気に速くなる
日本「だ、旦那様!?どうして私の部屋の前に…」
日本「いやだっ私ったらだらしない格好!あ私に用事ですか?…ってどんな。もしかして、しょ…」
そう言いかけたところで口を紡ぐ
日本(…危ない)
顔が耳まで赤くなる感覚が伝わる。
今私は、立場を弁えず何を言おうとしたのだろう。結果も効果も望めない彼にもう期待などしない。どうせ政略結婚だ。と、丁度先程決め込んでいたはずだったのに。この正直な鼓動が治まることを知らないのがなによりの答えだ
日本(恥ずかしい、恥ずかしい)
また今私は彼に期待してしまったんだ。
そして好きになってしまった。この気持ちに目を背け続けていられればきっと楽だったろうけど、貴方の顔を見ると、あなたに好かれたい。期待をいけないことにしくない。そんな気持ちがどっと溢れ出てしまうから。
でもどう頑張ってもきっと彼は好いてなんかくれない。変わらず張り付くその事実がやっぱり辛くて仕方がなくて、そうなると分かっていたのに彼に対する期待も思いも抑えられなかった私が何より惨めで。そう考えると何時しか涙まで溢れてしまいそうだったから必死に彼から顔を背けた
日本「…、っすみません…私ったら!ほんと…はしたない、…///」
彼がいてくれてうれしい、でもとっても辛くて恥ずかしい。そんな矛盾が気持ちをどんどん蝕んで、苦しかった
ロシア「…」
ばさっ
日本「…え、これ」
ロシア「…そんな薄着で屋敷をうろつかれては困ります。ロシアの冬は貴方の国と比べ物にならない。屋敷の中でも貴方の様に軟弱だと凍えてしまいますよ。」
日本「…!あの」
ロシア「…では」
そう告げると、彼は私の前から去ってしまった
日本「…へたり」
彼の姿が見えなくなった途端、膝の力が抜け、私はその場に座り込んだ
彼がくれたふんわりとした生地の披肩が私の肩を優しく包み、それはまるで彼が私を抱きしめてくれているように思えた。
日本「ずるいお方…どうせ明日も無視する癖に」
彼が私の部屋の前に立っていた理由は分からずじまいだったけれど。貴方の発した声音から溢れる優しさに触れた限り、学んでないみたいだけどやっぱり…
日本(期待くらいはしてみてもいいのかな)
日本「…頑張ろう。やっぱり私、貴方の好きを諦められない!」
・・・
「…」
夜の闇に満たされた廊下を一人革靴の音を響かせながら進んでいく。月光だけが頼りのこの長い廊下は、毎度恐ろしい程の虚無感に襲われる苦なものだったが、近頃はそんな日常を変える楽しみが一つ照らされている。
「…!」
ドアから溢れる一際眩い部屋の明かり。
その奥から時々優しい声音の子守唄が聞こえる。今日はどんな歌なのか、どこか懐かしげのある子守唄とその暖かい明かりこそが、俺の毎日を彩る密かな楽しみにとなっていた。
初めて聞いた日は…そう、彼女がここへ来て初めての夜だったな。本来なら初夜があるだろうが、意気地の無い、彼女を幸せにする勇気もなかった君に酷く嫌われただろうあの日。俺は仕事で疲れきった身体を引き摺りながら、この廊下を歩いていた。
ロシア(あぁ…身体が…)
これからの為に仕事のスケジュールはできるだけ詰めており、酷使しすぎているせいか最近はその疲労で身体の節々が悲鳴を上げている
ロシア(苦しい…)
四肢全てに鉄球が繋がっているようだ。
感情面にも疲労面にも重たくのしかかるソレは、傍から聞こえてくるざわざわとした幻聴までも耳に通し、その全部が嫌で振り払うように顔を上げた。すると目の前に彼女の部屋があり、そのふんやわりとした雰囲気が、俺の身体を優しく包んだ
ロシア「…」
ガチャ
それはもう本能的な行動だったと思う
疲れきった身体が、癒しを求める身体が、ふらふらと彼女の部屋のドアを開けていた。
日本「…すぅ、」
小さな寝息が聞こえてくる。
それを頼りに縋るように彼女の姿を探すと、案の定、レースのカーテンに囲まれたベットの真ん中に小さく横たわっていた。
自分に比べて小さな身体
薄ピンク色の頬
細い首
少し力を入れて手を添えると、直ぐに折れてしまいそうな、その繊細さが怖かった
ロシア「やっぱり触れていいもんじゃないなあ…」
悲しみの混じる声音を闇に溶かし、その場を去ろうとすると
日本「いか…ないで」
彼女がそう囁いた
ロシア「…!」
きっとただの寝言だ。寝惚けて夢の誰かと間違えたんだろう。
でも、それだけだ。本当にそれだけで、身体の重みがスっと抜け、胸を満たしていく感覚が鮮明だった。気づけば此方にのばされた彼女の手を握り、その甲に口付けていた
ロシア「これが最初で最後だ。…だから、今日は、今日だけは俺を癒してくれ。」
おやすみ
俺の光
絶対に守ると決めた、世界一大切な人よ
・・・・
その罪悪感から、彼女が「旦那様!」と駆け寄ってくれる度、誓く冷たく避けていた
そして今日も今日とて彼女の部屋に立ち寄った訳だが、何やら悩んでいるのか歌の代わりにうーんと唸る声が聞こえる
そんな時に共に悩んでやれない夫で申し訳無い。立ち去ろうとした瞬間。
彼女が部屋から飛び出てきた
「…え」
「…!」
ロシア(…!にほん)
は?待て待て待て少し露出が高すぎないか
屋敷の者たちにこんな姿見せる訳には行かない何がとは言わんが勃つだろこれは
それに今出てこられては……見せる訳にもいかない。明かりが月光唯一で助かった
苦い感情を咀嚼しつつ持っていたショールを覆い被せる
ばさっ
日本「…え、これ」
ロシア「…そんな薄着で屋敷をうろつかれては困ります。ロシアの冬は貴方の国と比べ物にならない。屋敷の中でも貴方の様に軟弱だと凍えてしまいますよ。」
ロシア(こんな姿他のやつに見られてたまるか!絶対に変な目で見るやつがいる絶対!絶対!それにここ寒いしな…暖炉はあっても昔の屋敷だ。すきま風すごいし…否日本の部屋は来る前にリフォームしたから寒くないだろうがやっぱ外は…風邪引くのも良くないよなそれに(以下略))
延々とそう考えていると、被せたショールから一つ、月光に照らされる光が生まれ落ちた。
真珠の粒は数を増し、それがどこからのものかはすぐに分かった。
八の字に曲がった眉の元。真っ赤に火照った彼女の瞳がうるうると揺れる。そんな彼女を前に、じっとはしていられなかった。
拭いたい。抱き締めてしまいたい。咄嗟に出た右手を見てすぐにそんな考えは打ち砕かれた。
「…あの!」
「では」
なにか続けようとした彼女を遮り、自室へ向かう。中途半端な優しさは悪だ。
だが…冷たさが優しさなどとも到底言いきれない。優しくする勇気も冷たくする勇気も…彼女を手放す勇気も無い…。どうせ悪なら君が幸せになる方がいい。
…
日本「旦那様!昨夜はだらしない姿をお見せし申し訳ありません。」
日本「肩掛けです、ありがとうございました」
ロシア「はぁ、わざわざ…別にそれ捨てればいいですから」
ぐっ…無視は無かったけれど言い方にやはり変化はない。そうすぐに変わるものでもないと思ったが正直しんどいものもある。
でも、きっと
日本「じゃあ…私が使っちゃおー!」
ロシア「…ですからそれは」
日本「あら?ロシアの冬は寒いのでしょう?こんな上等な肩掛けも滅多に無いですしね。…それに」
日本「…貴方がくれたから…」
ロシア「…」
日本「それでは!」
きっと前の私ならこんな風には言えなかった。
辛いばかり、上っ面の言葉しか見えないでいたけど…寒い冬、雪空の下。こんなに温かいのはどうしてだろうか
日本「ふふっ…本当ならとっても不器用な方…」
この肩掛けの温かさが、なによりの答えだろう
ロシア「あー…相当好きだな」
雪景色に映えたぴんく色の頬は、真逆な二人の世界に唯一優しく春を告げた
つづく
とても下手!なんかほんとヘッタクソになりました。
でも完結までちゃんと持っていきたいのでどうか皆さんお見守りください🙇♀️
コメント
6件
ひゃぁぁぁぁぁ…!!これまたすごいものを…!! 表では氷点下並みに冷たいけど裏ではどうしようもない愛妻家のロシアとデレ前回のワンコ日本のカプ最高すぎる(泣)
ふっふっふ愛してる()文才えぐ...尊いですよロシアさん可愛すぎますっ