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背の高いイケメンがこちらに向かって歩いてきた。まっすぐこっちに。なんだ、こんな日にナンパか? と思ったら、ただの長峰だった。やばい、あいつのことイケメンに見えちゃったわ。まあ、確かに整った容姿はしてるなー……。
「何じろじろ見てるんです?」
「いや、長峰だーと思って」
「はあ? てゆーか、いつからここにいるんですか」
めっちゃ呆れた顔をしながら長峰の腕がこちらに伸びる。なんだなんだと思っていると、頭に軽く触れられる。わしゃわしゃと撫でられた。
「雪、積もってるんですけど」
「えー、うそ?」
「鼻も赤いし耳も赤いし、どういうこと?」
「今日寒い」
「寒いのにずっとここにいたってこと?」
「そういえばずっとここにいたわ」
基本敬語なのにたまにタメ口になる長峰が面白い。呆れた顔もなんか面白い。と思って見てたら――。
ふわっと首にマフラーが巻かれた。長峰がしてたやつだからほんのり|温《ぬく》い。
「なに?」
「見てるこっちが寒いから巻いててください」
耳にもかかるように巻いてくれる。
首回りがもこもこになった。
「確かにさっきからずっと寒くて震えてた。あったかいわ~」
「俺は寒いですけどね」
「じゃあ返す」
「いいって。やけ酒するんでしょ。どこ行きます?」
「どこでもいいけど、今日席空いてるかなぁ?」
「居酒屋なら空いてるでしょ。二人だし」
長峰は歩き出す。私も後に続いた。
モミの木の番人からようやく解放された。
私が抜けたあとにはまた他の人が、誰かを待つんだろうな。