テラーノベル
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雄大「夢!! 夢、開けろ!! 早くそこから逃げろ!!!」
玄関のドアを叩く音と、雄大の悲鳴のような声が響き渡る。
夢「……え?」
夢は恐怖で体が動かない。雄大の声が叫んでいる。
雄大「後ろだ!! 窓を見ろ!!!」
夢がゆっくりと振り返ると、ベランダの窓には無数の顔が張り付いていた。
その顔たちは、笑っていた。醜く、歪んだ笑顔で、夢を見つめている。
夢「キャアアアア!!!」
夢は反射的に、窓から飛び退いた。心臓が早鐘を打つ。
雄大「夢! 大丈夫か!? 鍵を開けろ、俺が入る!」
夢「ダメ、雄大! 開けちゃダメ……!」
夢は混乱していた。窓の外の顔も怖い。でも、雄大の声が必死すぎる。
夢「雄大、どういうこと? 何がいるの?」
雄大「分からない! 俺がマンションに着いたら、夢の部屋のベランダにアイツらが……! 早く、逃げないと捕まる!」
ドン!ドン!と、玄関のドアが再び激しく叩かれる。
しかし、その音はさっきよりも少し、重く、鈍い音に変わっていた。
夢「え……?」
ドアスコープを覗こうとしたが、怖くて動けない。
夢「ね、ねえ雄大……さっきベランダに髪の毛が挟まってて……」
雄大「夢! いいから開けろって! 俺だ、雄大だよ!」
その声は、確かに雄大の声だった。
しかし、夢は直感的に、違うと思った。声色は同じだが、どこか感情が抜けているような、機械的な響き。
夢は玄関から離れ、壁に背中をつけた。窓の外の視線を感じる。玄関の向こうからは雄大の声が聞こえる。逃げ場がない。
夢「雄大、ごめん……開けられない」
雄大「何言ってんだよ! 早くしろ! アイツらが来るぞ!」
アイツら、とは窓の外の顔のことだろうか?
雄大は中に逃げ込めば安全だと思っているのか?
夢「雄大……私の部屋、何階か知ってるよね……?」
夢は震えながら尋ねた。雄大がこのマンションに来たのは何度もある。
雄大「当たり前だろ! 6階だよ、早く開けろ!」
夢「……違う。ここは7階建てマンションの、最上階の部屋」
一瞬、外の雄大の声が途切れた。
夢「雄大は、私の部屋が7階だって知ってるはずだよ……」
雄大「ち、違う! 俺は混乱してるだけだ! 早く開けろよ夢!」
声が焦っている。いや、違う。この声は、雄大じゃない。
ベランダに張り付いている「何か」が、雄大の声を真似ているんだ。
夢は背筋が凍る思いがした。雄大はまだ、外にいる。どこにいるかは分からないけれど、少なくともこの部屋の玄関の外ではない。
夢「あなた、誰……?」
雄大「俺だよ、雄大だよ、夢! 信じてくれ!」
その時、窓の外の顔たちが、一斉にベランダのガラスをガリガリと引っ掻き始めた。
(ガリ、ガリ、ガリ、ガリッ!!)
夢「ひっ……!」
ガラスにヒビが入る。もう、時間の問題かもしれない。
逃げなきゃ。雄大がいるはずの外へ。
夢は意を決して、玄関の鍵を開けようとした……その瞬間!
「夢!!」
本物の雄大の声が、下の方から響いた。
夢は窓の外を見ると、はるか下のエントランス前で、こちらを見上げている雄大の姿が見えた。手にはスマホを持っている。
雄大は無言で口をパクパクと動かした。
「電話しろ!」
つづく
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