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ワンピース未来・第二話「子供の友情」
バギー海賊団の朝は、今日もにぎやかだった。
波の音とカモメの鳴き声、そして──パリの元気な泣き声が船内に響きわたる。
「うぉぉぉぉ……パリ、泣くなってばぁ! 今、ミルクの準備してんだろーが!」
バギーは慌ててお湯を沸かしながら、オロオロと赤ん坊を抱えていた。
部下たちは呆れ顔だ。
「船長、最近のあんた、完全にパパじゃないっスか」
「前はお宝お宝って言ってたのに、今はオムツオムツですもんね……」
「うるせぇ! 海賊だって子育てぐらいできんだよ!」
バギーは胸を張りながらも、片手で器用にオムツを替える。
そのとき、船に小型ボートが接近してきた。
甲板の部下が叫ぶ。
「船長ー! お客さんです! ……って、あれは──」
ゆっくりと上がってきたのは、髪をオールバックに固めた男、ギャルディーノ、通称Mr.3だった。
彼は眉をひそめ、オムツ姿のパリを抱えるバギーを見て、言葉を失った。
「……お前、何をやってるんだ、バギー」
「見りゃわかんだろ! 子育てだよ、子育て!」
Mr.3は額を押さえ、深いため息をつく。
「信じられん……お前が子育て……? 海賊王にでもなるつもりかと思えば……パパかね……」
バギーはムッとしつつも、ふと名案を思いついたように笑った。
「おお、ちょうどいいところに来たな! お前さ、自分のガキもいるだろ? ほら、遊ばせてみようぜ。子供同士、友達になれるかもしれねぇ!」
だがMr.3は冷たく言い放った。
「……お前の娘とは遊ばせないガネ」
「なんだとぉぉぉぉぉっ!?」
バギーは顔を真っ赤にして飛び跳ねる。
そのやり取りを聞いていたのは、Mr.3の息子、Mr.4(仮名)だった。
まだ小さな少年で、父親の背中に隠れるように立っている。
彼はパリをじっと見つめていた。
パリは好奇心いっぱいの瞳で近寄り、赤い首飾りを揺らしながら笑う。
「……あそぶ?」
Mr.4は少し戸惑ったが、やがて小さくうなずく。
「……うん」
その瞬間、バギーは勝ち誇った顔をした。
「ほぉら見ろ! ガキは正直だ! お前が何言おうが、友情は生まれるんだよ!」
こうして、半ば強引に「子供の交流会」が始まった。
最初はお互い警戒していたが、パリが拾った貝殻や小さな木の船をMr.4に渡すと、彼も少しずつ笑顔を見せた。
二人は甲板をよちよち歩きながら、カモメを追いかけたり、樽の上によじ登ったりして遊ぶ。
「おーい、パリ! 落ちんなよ!」
「おいMr.4! 変なとこ触るな、そこは大砲だぞ!」
船長たちはハラハラしながら見守ったが、子供たちはすぐに打ち解けていった。
やがて、パリはお気に入りの赤い首飾りを外して、Mr.4に差し出した。
「これ、あげる!」
「えっ……いいの?」
Mr.4は驚いたが、パリはにっこり笑った。
「ともだち、だから!」
その光景に、Mr.3は思わず腕を組みながら目を細めた。
「……子供ってのは、不思議なもんだガネ」
バギーは勝ち誇った顔で鼻を鳴らす。
「だろー? 俺の育て方がいいんだよ! さぁ言え、『バギーは最高のパパだ』ってな!」
「言うか、そんなもん……」と呆れながらも、Mr.3の口元はわずかに緩んでいた。
こうして、パリとMr.4の小さな友情が芽生えた。
海賊の世界の真ん中で育つ、子供たちの笑い声は、青い空に響きわたっていくのだった。