テラーノベル
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あれから数時間後、俺たちは廃れた街の中を歩いて食べ物を探すことにした。場所によってはまだマシなところもあり、そこでは普通の俺たちの世界の方の店のようなものが道路沿いにいくつか並んでいた。
そんな中を俺は今大真面目に今夜の晩飯のための食材を探しているわけなのだが、どうもmtwはそうじゃないらしい。
「ねーiemn見てよ!道端に飴落ちてた!」
「いやいや汚いだろ、捨てとけよ」
にっこにこで包み紙に砂が着いた飴を持ってくるmtwを一蹴して、次の店へと視線を移す。何やらmtwが後ろで文句を言っていたが一旦無視をすることにした。
想像していたような寂しさではなかったが、逆に賑わっているかと言われればそうでもなかった。mmさんがどうにかしてこいと言うのも納得の様子だ。まあ、普段どんなことをしているかなんて俺は知らないんだが。
あの後、柊鳴兄妹とItさんとrimrさん、あと俺たちという感じで分かれて食材を探すことにした。rimrさん曰く、闇鍋をやるらしい。聞いたこと自体はあったがまともなものになる気がしなくて、現時点から既に雲行きが怪しい。
「…..お、これ美味しそうじゃん」
ふらふらと歩いていた矢先、安売りシールが貼られた一つの商品が目に留まった。
「んー?何それ、お菓子?」
不思議そうに横からmtwも覗き込んでいる。見た目だけならチョコレートだが、何やら只者じゃない雰囲気を感じた。
店の奥にいるであろう店主に声をかけに行くと盛大に居眠りしていたので、丁寧にレジのところに置いてあったベルのようなものを思いっきり鳴らして起こした。まあ、鳴らしたのはmtwだからうるさいと怒られてもmtwのせいと言っておこう。
「……あ?…客か?」
少し太った三十路ぐらいのおじさんがずっしりとした重い腰を上げ、こちらをジロリと見る。一瞬悪寒が走ったが、俺は今あれをどうしても買いたかった。一発、ふざけたことを言い出したrimrさんに痛い目を見せてあげないと気が済まない。
「おじさーん、これ二個ちょうだい」
入口の方からチョコレート(?)を持ったmtwが走ってきて、レジの台に置いた。そのチョコレート(?)を見た店主はにぃっと不気味に口角を上げて笑った。
「若いの、お前ら良い趣味してるねぇ、良いよ、安く売ってやるよ」
そう言うとレジから安売りシールを取り出して、既に貼ってあったシールの上から重ねて貼った。90%OFF、激安だな、と思いながら財布を漁って適当な額を渡す。
「はっはっは、また来たらもっと引いてやろうか?」
おじさんはゲラゲラと笑いながらその金を受け取り、チョコレート(?)を投げ渡してきた。このまま落として割れたらどうするんだよとツッコミながらもなんとかキャッチし、Itさんに渡された袋に入れる。その様子をmtwは「おーかっけ〜」なんて茶化しながら見ていたが、おじさんは相変わらずゲラゲラと笑っていた。
そのままおじさんにお礼を言い店の外に出ると、日が暮れ始めていたが、まだ外にはポツポツと人がいた。全員足元にダンボールを敷いているから、きっと家がないのだろうけど。
「そろそろ戻る〜?」
「あー…いや、向こうの方も行ってみない?」
早くもヘロヘロになっているmtwを引きずって、奥へ奥へと歩いていく。奥に進むにつれ、道端に捨てられている生きていたもの、人間だったものの数が増える。髪は絡まり、涙やら唾やらがそのまま顔の上で固まり、余計見たくないものになる。
罹ったら確実に死ぬ病気、なんてこっちの次元にもあったが、ここまで酷くはなかった。こんなところをのうのうと歩いていたら俺たちまで罹りそうだな、と理性はブレーキをかけようとしていたが、ここまで来たなら奥まで見たい、という欲の方が押し勝っていた。
「ねえiemn。こっちはまずくない?今のうちに引き返さないと…..」
mtwが珍しく全力で抵抗しようとしていたが、俺にとっては今のところ引き返すという選択肢は無かった。
「分かってるけど、もしかしたらこっちに…」
そう言いかけた次の瞬間、俺は自分の過ちに気づく。遅すぎたが。
バサリ、と翼がはためく音がして、それを見る。恐ろしい程に口角がつり上がった、悪魔のような天使。初めての任務で戦ったやつに姿が似ていた、というか似すぎていた。ということは、あいつとこいつは何かしら関係があるかもしれなくて、俺たちはあいつに苦戦しまくっていたからこいつにも…..
「あーもう、だから言ったのにっ!!」
mtwに後ろに突き飛ばされて、やっと思考の海から開放される。翼を広げて俺を守ろうとしているmtwを見ながら、俺も刀に手をかける。ぐだぐだ言っている場合では無い、やらなければいけない。
mtwは懐からナイフを取り出すと、自分の腕に勢いよく突き立て、溢れ出た大量の血を槍上に変化させ、天使に襲いかかった。
「%÷%:+〆÷9\^:|804€〆%:$〆€」
天使が手を前に突き出したその瞬間、mtwが向けていた槍の先端が腐って溶け落ちた。だが、この程度ならmtwも対処出来るだろう。俺はこの隙に後ろから回り込む。黒い日本刀を構えて飛びかかる….が、そう上手くはいかなかった。
「…..ッがっ?!」
天使が羽を羽ばたかせた。それだけで刀が弾かれ、俺は地面に背中を強打する。骨が何本か確実に折れた音がしたが、今はそれどころではない。ここで諦めている場合ではなかった。悲鳴をあげている体に鞭を打ち、無理やり立ち上がらせる。
「iemnっ…!!大丈夫か?!」
腐りかけた槍を放り投げ、こっちへ飛んでくるmtwを手で制して弾かれた刀を拾い直す。こんなところでへばって、mtwの足を引っ張っていたら本当に足手まといだ。
「….大丈夫ッ…それより早くあいつを…ッ」
口元を拭うと、手の甲に血が付着したが無視をして刀を握り直し、構える。そのまま行ってもさっきのようになって終わりだということが分かったから、何か他に策を練らないといけない。元から無い頭を必死に動かして勝てる策を考えるが、そんなにすぐに思いつくなら、既にさっき実行している。角度や速度を変えて切りかかるが、一度もまともにダメージが入らない。
肩で息をしながらも、槍を構えているmtwを見ていると、視界が歪んでくる。さっきのダメージが想像より大きかったらしい。足が震えている。
「…..iemn…もしかしたらいける方法を思いついた。…..いける?」
血の塊を宙に浮かせながら、こちらを振り返って見ているmtwに指で小さくグッドをつくり、首を縦に振る。
「…もしかしたら、mtwの血でiemnの刀を守って切りかかったら溶かされる前に攻撃が通るかもしれない…。もちろん、mtwもサポートする。」
それを断る理由も術も俺は持ち合わせていなかった。それでダメであれば、最早詰みだろう。
「…分かった…いこう。」
再び天使を見据えて、刀を真っ直ぐその首元に向ける。mtwの血が黒い刀身に絡みついて、黒を赤に染める。瞬間、大きく踏み出して、天使の首元まで跳躍する。その首目掛けて刀を大きく振りかぶって────振り下ろ
す。
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