テラーノベル
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無人島での生活が始まって数日。
照りつける日差しと、慣れない環境。
限られた食料と睡眠。
Dクラスの生徒たちは、少しずつ疲労を溜めていた。
ひなもまた、みんなの役に立ちたい一心で、
水の運搬や調理の手伝いを続けていた。
その日の午後。
バケツを運んでいたあたしは、
突然ふらりと足元をよろめかせた。
「……あれ?」
視界が揺れる。
次の瞬間、
倒れそうになった体を誰かが支えた。
「無理をしすぎだ」
耳元で聞こえた落ち着いた声。
綾小路清隆だった。
「だ、大丈夫だよ……」
そう言おうとしたが、
自分でも声に力が入っていないのがわかった。
綾小路くんは静かに首を振る。
「顔色が悪い。休め」
「でも、みんなが……」
「今のお前に必要なのは休息だ」
いつもより少しだけ強い口調。
それだけで、ひなの胸は熱くなった。
綾小路くんはひなを木陰まで連れていき、
持っていた水筒を差し出した。
「飲め」
「……ありがとう」
冷たい水が体に染み渡る。
隣に座る綾小路くんの存在に、
不思議と安心感が広がっていく。
「ごめんね。心配かけちゃって」
「謝る必要はない」
彼は前を向いたまま続けた。
「お前が無理をすると、俺が困る」
その言葉に、胸が大きく高鳴る。
「また、それ言ってくれるんだね」
「事実だ」
表情は変わらない。
けれど、その言葉は何より優しかった。
風が木々を揺らし、
静かな時間が流れる。
ひなはそっと呟いた。
「綾小路くんがそばにいてくれると、安心する」
彼は少しだけひなの方を見る。
「……少し眠れ」
そう言って、
そっとひなの頭を自分の肩にもたれさせた。
「えっ……」
突然のぬくもりに、胸がいっぱいになる。
「大丈夫だ。しばらくこうしていろ」
綾小路くんの肩は、驚くほど心地よかった。
彼の体温と静かな呼吸を感じながら、
ひなのまぶたはゆっくりと閉じていく。
眠りに落ちる直前、
耳元で小さな声が聞こえた。
「……無理はするな。お前は、俺にとって大切な存在だ」
夢だったのか、
現実だったのか。
確かめる前に、ひなの意識は穏やかな眠りへと溶けていった。
夕方、目を覚ましたとき、
体のだるさはすっかり和らいでいた。
隣には、変わらず静かに座る綾小路くん。
その姿を見ただけで、
胸が優しい気持ちで満たされる。
無人島の厳しい環境の中で、
綾小路くんのぬくもりは、
ひなにとって何よりの支えになっていた。
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