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無人島生活も四日目に入っていた。
最初は新鮮だった環境も、
今では疲労と緊張の連続になっている。
強い日差し。
限られた食料。
不便な生活。
そして、クラス全体をまとめる重圧。
そのすべてを一身に背負っていたのが、堀北鈴音だった。
「堀北さん、大丈夫?」
朝の作業中、
ひなは彼女の顔色が優れないことに気づいた。
「問題ないわ」
いつものようにきっぱりと答える堀北さん。
けれど、その声にはわずかな疲れがにじんでいた。
桔梗ちゃんも心配そうに眉を寄せる。
「少し休んだ方がいいんじゃないかな?」
「時間がないの。今は動けるうちに動くべきよ」
そう言って、堀北さんは再び作業に向かった。
その日の夕方。
ひなは焚き火のそばで食器を片づけながら、
何度も堀北さんのことを気にしていた。
「かなり無理をしているな」
背後から聞こえた声に振り向く。
そこには 綾小路清隆 が立っていた。
「綾小路くん……やっぱりそう思う?」
「ああ。このままだと倒れてもおかしくない」
その言葉に、ひなの胸がざわつく。
「私に何かできることってあるかな」
綾小路くんはしばらく考え、
静かに答えた。
「お前は十分やっている」
「でも……」
「堀北も、お前の気遣いには気づいているはずだ」
波の音が遠くから聞こえる。
焚き火の明かりが、綾小路くんの横顔を柔らかく照らしていた。
「ひな」
名前を呼ばれ、心臓が高鳴る。
「無理をしているのは、堀北だけじゃない」
「え?」
「お前も周りのことばかり気にしている」
まっすぐ見つめられ、
ひなは言葉を失った。
「自分のことも大事にしろ」
その言葉は、
誰よりも優しく胸に届いた。
夜遅く。
テントへ戻る前、
綾小路くんはふと立ち止まった。
「もし不安になったら、俺を探せ」
「……うん」
「だいたい、近くにいる」
その何気ない言葉に、
ひなの胸はじんわりと温かくなる。
「ありがとう、綾小路くん」
彼は小さく頷き、
静かに夜の闇へと歩いていった。
その夜、
波の音を聞きながらひなは空を見上げた。
無人島での生活は厳しい。
でも、
綾小路くんの言葉があるだけで、
不思議と前を向くことができる。
そして、彼が「近くにいる」と言ってくれたこと。
それはひなにとって、
どんな毛布よりも温かい安心だった。
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