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長いトンネルだった。

彼女は部活の時間が伸びてしまい、帰宅時間がいつもより2時間も遅れた。

部活はバドミントン部で、春の大会を前に練習に熱が入り過ぎたため、時間を忘れてコートに立った。

まだ、春先ということもあり、五時を過ぎたあたりから周りは夕闇に包まれた。

基本、部活動はどんな遅くとも、五時までには終えるように校則で決まっていた。

彼女がその校則を破ってしまったのは、彼女なりの責任課感から来るものだった。

春の大会は鳳鳴高校にとって、非常に重要な大会であり、彼女にとっても最後の大会になるからだ。

この大会を終えたら、彼女は部活を辞め、受験に専念するように家から言われていたからだ。

つまり、スポーツ推薦をとれるほどの実力はない。なので、一般入試に臨むしかない。家は基本的に浪人は許していない。だから、部活動を続けながら進学するには、彼女には荷が重すぎるのだ。

だから、彼女は最後の大会に懸けていた。有終の美を飾って、志望の大学に入って充実した学生生活を送りたいという、少し欲張りな願望があった。

携帯から家に電話をしようと思って立ち止まったが、トンネルの中だったので電波が届かなかった。仕方なく彼女は歩き出した。 さっきから自分の足音以外の足音がした。気のせいだと思いたかった。最近、彼女はストーカーに悩まされていた。

父親に迎えに来てもらうことも考えたが、彼女はもう高校生だ。決して小さくはない。姉は大学生だが、現在はゼミの合宿でいない。となると自力で家に帰り着くしかない。

自然に早歩きになった。不思議なことに早歩きに合わせて、背後の足音もリズムが速くなった。やっぱり誰かいる。彼女は怖くて振り向けなかった。

その足音は徐々に明瞭になり、相手の息遣いまで聞こえるようだった。立ち止まってはいけないと頭の中で警告音がした。

このトンネルは車の往来も人通りもまばらで今の時間帯はとても寂しい。トンネルは距離もあるので、絶叫しても空洞に吸い込まれるだけだ。つまり、ここは蜘蛛の巣みたいなところだった。

彼女は走ろうと思った。バドミントンをやっているから脚力には自信があった。だが、次の瞬間、大きな手が肩を掴んだ。彼女はその際にバランスを崩した。

肩を掴んだ男は彼女より十数センチ背丈が高かった。向こうは成人男性。こっちは女子高生。力の差は歴然だった。

男は彼女を壁に押し付けると、縄状のようなもので首を絞めつけた。

彼女は息ができなかった。縄状のものが首に食い込み、気道を圧迫した。このままでは窒息死する。だが、命乞いをする暇すら、男は与えなかった。

最後に見た男の顔は笑っていた。

足音 わたしとストーカーの60日戦争

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