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今日も始まった2人の喧嘩
でも、今日は何だかいつもと様子が違う
「あんたっ!!
とうとう浮気までしたのね!!? 」
「だから何だ!!?
お前に魅力が無いせいだろう!!」
「私のせいにしないでよ!!!
あんたの脳味噌が腐ってるからでしょ!!?」
いつもより大きい声で、いつもより汚い言葉が飛び交う
何だか、今日は波乱の予感
この時自分たちは8歳、少し成長した
といっても、栄養が足りてないからかそこまで体格は変わっていないけれど
もはや暴力に対する恐怖は薄れていたけれど、何だか面倒事になりそうな気がした
パリン、と何かが割れる甲高い音
男が女に酒瓶の割れた先を突きつけている
「いい加減っ、その口を閉じろ!!
殺してやってもいいんだぞ!!?」
「ひっ……」
その瞬間女の勢いが一瞬で消えた
そして顔を真っ青にしてがたがたと震え出す
「最初っからこうしてやれば良かったなぁ……?
こうしてやればお前は黙るんだもんなぁ!!?」
「やめてっ……もう、何も言わないから……お願い……」
「痛いのだけは……やめてください……」
女の目から涙が零れ落ちて、男はちょっとだけ落ち着きを取り戻したみたい
でもいつもの流れは変わらないみたいで
男は割れた酒瓶を持ってこちらに向かってくる
「餓鬼共……今日も俺のサンドバッグになってくれよぉ?」
口の端を醜く歪めて笑う
男は酒瓶を放り投げてルーチェの首を掴んだ
「あの女に似た面しやがってよぉ……
てめぇもムカつくんだよぉ!!!」
首を思いっきり絞められてルーチェ、苦しそう
息が出来ないみたいで浅い息を繰り返してる
汗が滲み出て、必死に抵抗してる
どうにかこっちに矛先を向けられないかと思って、思いきり足に噛み付く
どうやら思惑は上手くいったみたいで、男の目線はルーチェから僕へと向いた
「何してやがる糞餓鬼ぃ……」
ルーチェは放り投げられて、男は僕に馬乗りになって殴りかかってくる
「誰のおかげで生きてられると思ってやがんだ!!?あ”!!?俺のおかげだろうが!!! 」
いつもより殴られて痛いけど、ルーチェよりは僕にきた方がいい
ルーチェは僕の可愛い片割れ
大切な片割れだから、家族だから
その時、何か、小さな音が聞こえた気がした
何かが切れるような、そんな音
ふと目線を上にあげると、そこには割れた酒瓶を持ったルーチェが男の後ろに立っていた
その目は、何だか男のものと似ていて
(なにしようとしてるんだろう、ルーチェ
むりしてほしくないのに)
ほんの少し、ルーチェに手を伸ばした瞬間
目の前が真っ赤に染まった
(なんで?まっか、これ、ち?
だれの?ぼくの?)
違う、これは男の血だ
ルーチェが刺したんだ
割れた酒瓶で、男の首を
その血が僕の目にかかったから真っ赤なんだ
男はぐらりと傾いて僕の横に倒れた
そこにルーチェが馬乗りになって何度も酒瓶で刺した
顔を、胸を、腹を、何度も何度も
その時のルーチェの目は、真っ黒で憎悪に似た感情が渦巻いているように見えた
まぁ、僕らが男に憎しみを持つなんて至極当然の事なのだから、特に何とも思わなかった
自分の顔にかかった血を服で拭って、お互いの傷を冷やすために洗面所に向かった
そこで鏡を見て気づいた
僕の顔は思ったより血塗れで、重症だった
目の部分は大きく腫れ上がっていて、歯の部分もボロボロですぐにでも取れてしまいそうだった
痛みに慣れてしまったからなのか、自身の傷の深さなんてここ最近気にした事がなかった
傷の深さに気づいた瞬間に傷がじんわりと熱を持ってきたような感覚がして、急いで冷えたタオルを用意した
(あ、そうだルーチェのぶんも……)
首を絞められていたルーチェを思い出して、ルーチェの分も用意した
リビングに戻ると完全に男は動かなくなっていて、女は腰が抜けていてがたがたと震えていた
ルーチェはこちらに振り返り、心配そうに見つめた
「だいじょうぶ…?フォンセ………
かお……すごいはれてる……」
「だいじょうぶだよ、そんなにいたくないから」
僕は笑って見せるけど、ルーチェは心配そうな顔を崩さない
その時がたりと音がした
何かと思ったら女が椅子を倒した音だった
女は先程と同じようにがたがたと震えて涙を流している
2人で近くに寄ってみると女は小さく声をあげた
手に握られた携帯には「110」の文字が浮かんでいた
何がしたいんだろうと思ってじーっと眺めていたら女は急に早口で話し出した
「ごっ、ごめんなさいごめんなさい!!
ずっと、何もしなくてごめんなさい……!!!」
「お願い、お願い、殺さないでください……」
どうやら女はルーチェの持つ酒瓶を恐れてるみたい
男がよく飲んでいた物だし、それが原因かな?
「……どうする?」
「べつにどっちでもいいけど……まぁ…」
「しんでもいいんじゃない?」
そう言ってルーチェは酒瓶を女の顔面に向かって投げた
「わークリーンヒットー」
思ったよりするりと刺さった酒瓶は、女の脳を貫いたのか女もしばらくするとピクリとも動かなくなった
「このあとどうしよう?」
「とりあえずおふろにはいろう
しばらくはいれてなかったし、ちもついてるし」
「じゃあそうしよっか!」