テラーノベル
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#独占欲
#ギャップ
「ふふ。やっぱ春月堂のどらやきは文句なしです。それはこの繊細な餡の味のお陰ですよね。おはぎ大好きです」
「うーーん、美鈴ちゃんも可愛いね。うちの倅を貰ってやってく」
「親父、餡、見なくていいのか?」
鋭い眼光で幹太さんが睨むと、おじさんは舌を出し、悪戯した少年のように調理場へ逃げていく。
「ちょっと、送るからそこで待ってろ」
「え?」
美鈴の顔がぱあっと花が開いたかのように明るくなった。
「桔梗の病院に寄るから乗せてく。おはぎ重いだろ」
「え、あ、りがとうございます」
今度は明らかに固まった。そうか。美鈴は分かりやすい子なんだ。
こんななことさえ私は気付かなかった。
幹太さんなんて怖くて見つけたら逃げだす存在だったし。
「桔梗さん、毎日幹太さんがお見舞い行ってるのかな」
「そうみたいだよ。でも、桔梗さんのご両親を乗せて行ったりしてるから二人きりじゃないみたい」
「親公認」
「……」
美鈴が遠い目をしてうなだれている。
なんて声をかけて良いか分からず、黙っておはぎのレジ打ちをしてしまった。
幹太さんは、自分の事より仕事と桔梗さんを優先している節がるから、フォローする言葉が出てこない。
「そういえばお姉ちゃん入籍いつするの?」
「1600円ですって……え?」
「デイビットさん、ご両親はもう亡くなっているって知ってた?」
「知らない知らない!」
もしや、人の事を心配している場合ではない?
私と彼は、まだ知りあって日も浅いと言いわけしても、私は彼の事を知らなさすぎる。
「だから此方の事は気にしないで、入籍や式は美麗の希望を聞くつもりですって、お母さんに話してたよ」
美鈴から代金を受けとり、レシートを渡す。
その間に、小百合さんがおはぎを纏めて下さっていた。
「そ、だったんだ」
「うん。優しくて、格好良いし、私はデイビットさんがお兄さんで嬉しいよ。だからまた、お姉ちゃんが爆発しちゃう前にちゃんと話しあってね?」
「爆発なんてしません!」
美鈴は舌を出すと、幹太さんの車へ飛び乗ってしまった。
あの、小百合さんにもちゃんと挨拶しないと失礼なんだよ。
「すいません、妹は私よりはしっかりしてるんですが、うっかりと」
「あら、うふふ。良いのよ。美鈴ちゃんらしいわ。でも、残念ね。あんな可愛いお嫁さんを欲しかったわあ。舞踊の道へ行くなら無理よね」
深いため息を吐くと、小百合さんは並べられた和菓子を眺める。
「でも、あの麗子さんが国際結婚を認めちゃうぐらいなんですもの。私も息子も古い考えは捨てるべきよね。お嫁さんは外で働いてても、好いてる人と一緒に慣れたら幹太は幸せかもしれないわ」
深いため息に、私は愛想笑いで誤魔化してしまう。
幹太さんは、――大切な人がいる。
ただ、口に出しても叶わないのかもしれない。
彼女は、事故で失った旦那さんをきっと一生愛すると誓いそう。
揺るぎなくて頑固で、真っ直ぐな人だから。
美鈴も意外と頑固で、そしてガンガン自分で決めて行く人だけど。
頑固×頑固×頑固。
この三人は一方通行のまま。どうしたら、交差点で向き合えるんだろう。
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