テラーノベル
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甘月 莉兎
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キッチンの椅子に座らされたすちは、まだガタガタと肩を震わせていた。
萌え袖の先で、赤くなった目元を何度も拭う。
「……ごめんなさい。……おれ、また、変なこと……」
絞り出すような声に、キッチンに立つ五人の動きがピタリと止まった。
みことが、焼き上がったばかりのパンケーキをお皿に乗せ、すちの目の前に静かに置く。
「すちくん。謝らなくていいんだよ。……怖かったのは、僕たちが君を一人にしちゃったせいだから」
みことは、跪いてすちの目線に合わせると、優しくその手を包み込んだ。
「……ごめんね。君を不安にさせて。でもね、僕たちは君が『何か』をしなくても、ただここにいてくれるだけで、本当に嬉しいんだ」
「……でも、おれ……役に立たないと……」
「役に立つ立たないで、家族(メンバー)を選んだりしねぇよ。……ほら、食え。冷めるぞ」
いるまがぶっきらぼうにフォークを差し出す。
すちがおずおずと、一口大に切られたパンケーキを口に運ぶ。
甘くて、温かくて、今まで知っていた「鉄の味」とは正反対の味がした。
「……あ。……あまい」
「だろ? こさめがメープルシロップ、ドバドバかけたからな(笑)」
なつ(暇72)が、すちの頭をごしごしと撫でる。その手は、決してすちを縛り付けるような強さではなく、ただそこに「ある」ことを伝える温かさだった。
「すちくん! ほら、牛乳も飲む? 飲むよね!? こさめがいっぱい注いであげる!」
こさめが、隣の椅子から身を乗り出して、すちの顔を覗き込む。
「……すちくんが笑ってくれるまで、こさ、ここから動かないもんね」
ボスのLANは、コーヒーを啜りながら、その光景を満足げに眺めていた。
「……すち。お前がいつか、『ここにいてもいいんだ』って心から思えるまで、俺たちは何度でもこの朝ごはんを作る。……焦らなくていい。ゆっくり、この味に慣れていけ」
「……うん。……LANさん。……みんな。……おいしい、です」
萌え袖の先で、すちは今度は悲しい涙ではなく、少しだけ温かい涙を拭った。
誰かに必要とされるのではなく、ただ「いていい」と言われることの安らぎ。
自傷という手段でしか自分を保てなかった少年の心に、五人の純粋な愛が、少しずつ新しい色を塗っていく。
アジトに流れる朝の光は、昨夜よりもずっと、透き通って見えた。
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コメント
8件
鉄の味!!!!???? すちくん!? 鉄なんか、食べてたの!?
あの…神様…?