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カーテンの隙間から差し込む柔らかな日差し。
ああ、朝日だ。
仕事を始めてから不規則な生活に慣れてしまって、朝日を浴びて目覚められたのは本当に久しぶり。
こんなふうに起きられただけで、今日1日が良い日になる予感がする。
でも待って、私の部屋ってこんなに朝日が当たるんだっけ?
家賃をケチったせいで、眺望も日当たりも諦めたはずだけれど・・・
ううぅーん。
ベットの中で手足を伸ばし伸びをする。
そう言えば、ベットもいつもよりよくスプリングが効いている。
シーツも洗いたてで、気持ちいい。
私、シーツに糊なんてかけたかなあ?
・・・。
えっ。
眠い目をこすりながら、私は辺りを見回した。
ここは、見覚えのない部屋。
広さは8畳ほどで、部屋の中央にはキングサイズのベット。
それ以外に大きな家具は見当たらず、ここは寝室らしい。
カーテンも寝具も黒で統一されていて、とてもシンプルな部屋。
ただ、サイドテーブルの上に置かれた小物や部屋の造りから、ここがホテルではなく誰かの部屋なのはわかる。
それも、おそらく男性の部屋。
えっと、えーっと。
昨日私は・・・思い出した。
具合が悪くなったところを見ず知らずの男性に助けられたんだ。
そして・・・
ああ、マズイ。
***
時刻を確認すると、午前7時半。
昨日着たまま眠ってしまった服の皺を伸ばしながら、部屋のドアを開けた。
「あの・・・」
静まりかえった部屋に声を掛けリビングへと入って行く。
広いリビングに置かれたソファーの上に、綺麗にたたまれたタオルケット。
きっと、私がベットを使ったせいで、家主である男性はここで眠ったんだわ。
なんだか申し訳ない。
ん?
その時、テーブルの上に1枚のメモがあることに気がついた。
『おはようございます。
体調は大丈夫ですか?
まだ本調子でないのなら、無理せずに病院で診てもらってください。
私は所用があるので、先に出ます。
冷蔵庫にフルーツと軽食があるので好きに食べてください』
なんて不用心な。
私が何か盗むとか思わないのかしら。
まあ、そんなことはしないけれど。
『昨日はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
お陰で元気になりました。
ありがとうございました』
持っていたメモ帳にお礼を書いてから、ふと悩んでしまった。
こういうときって、連絡先を残すべきなのかしら?
いや、部屋を一晩借りただけだし不要よね。
じゃあ、泊めてもらったお礼を?
とりあえず、手持ちの封筒に1万円を入れメモと一緒に置く。
迷惑料とシーツのクリーニング代ってとこかしら。
後は、とにかくここから消えなくちゃ。