続きデース
それではどぞ!
青山「うん。やっぱり腑に落ちん」
香月「………なんだよ」
青山は手当をしたあと、ソファに座る香月の横で腕を組みながらきっぱりとそう言った。
青山「ちゃんかぶが半グレごときに深い一刀を食らうと思うか?しかもあんな変な位置に」
香月「………いや、思わん」
香月は少し考えてから、額に手を当てて、否の返事を返す。
青山「だろ?最近ちゃんかぶの成長は目を見張るモンがある。だからカチコミでの傷は考えにくいんだ……だから、ほぼ確定だ」
香月「でも嘘には見えなかったんだろ?」
青山「そうなんだよなぁー……」
青山はそう言いながら天を仰ぐ。
香月「どっちにしろ違和感を感じるんならなとかしねぇと」
青山「………ちゃんかぶの傷さぁ…」
香月「傷?」
青山は少し考えて、重そうに口を開く。
青山「あの傷骨まで届いてるぜ、多分。俺直接見たけど深すぎだ」
青山が発した言葉に香月は絶句する。
香月「骨って……!じゃあ華太はなんであんなに飄々としてられんだよ!?出血多量で気絶してもおかしくねぇんだぞ!?」
青山「仮にだが…今までもずっと自傷行為を続けてたとしたら、感覚が麻痺しちまってるのかもな。逆にそれ以外考えられるか?」
そう青山は光のない目で淡々と告げる。
自傷行為を続けた場合、年数を重ねる毎に『痛い』という感覚は消える。痛みの代わりに『快楽』が体を支配し、当人は中毒に陥るのだ。
当然、自傷行為を続ければ血液は足りなくなるし、傷が深ければ深いほどに生命の危機になりうる。だが自傷行為をしすぎて感覚が麻痺してしまえば、気が付かぬままそのまま体が限界を迎えてしまう。
そのままフラッと死んでしまうことだってあるのだ。
青山「骨まで届いてたって言っても一部だけどな。大事な血管は避けてあったさ」
香月「良かった…とは言えねえけどさ……」
香月は憂いた。
いつか自分の舎弟がフラッと死んじまうんじゃないか。
自分が今支えてあげねぇと消えてしまうんじゃないか。
そんなどうしようもない不安が香月を襲った。
香月「っ………」
青山「しかもさ、俺が傷の手当てした時、他にもいろいろ傷あった。切った傷も、抉った傷も、焼いた傷も色々。見えないフリしたけど…」
香月「っ切り傷以外にもあったってのか!?」
青山「そ。多分他にもあるんじゃねえかな。足とか、二の腕とかにも、多分。表面上の傷じゃなくても、まだあるかもしれない」
自傷行為には身体を傷つけること以外に、薬物乱用なども自傷行為に該当する。
世間一般的に言うODと言うやつである。
風邪薬などの市販の医薬品を大量に摂取し、それによる快楽を得るというものであり、身体に多大な影響を及ぼしてしまう。
香月「OD…とか?」
青山「ああ。……考え直してみりゃ、あったじゃねえか。ちゃんかぶがよく風邪薬を飲んでたの、見てたのに…あん時はただの風邪なんだと思って放っておいたが…………なんで気づいてやれなかったんだ……」
ぐしゃりと自分の髪を掴んで、顔を歪めながらそう吐き出す。
香月「青山のせいじゃねえよ。…今は俺たちが見守ってやろうぜ。下手に刺激すんのも良くねぇだろ」
青山「、ああ…」
俺は今日も嘘をつく。
左腕にはたくさんの傷。
カッターって切った傷は数え切れないほどあるし、包丁で刺してみたり、抉ってみたりした傷もある。アイロンで焼いたり、たばこを押し付けた時の傷もあったっけか。
ああ、あと風邪薬を死ぬほど飲んでみたり。
なんでそんなことするのかって?
知るかよ。
ずっとそうだ。こうだった。気がついたら日常になってた。ただ、それだけ。
………あ?死にたいのか、って?
死にたいとも思わねえし、生きたいとも思ってねえよ。そんなもんだろ。
傷が誰にも気づかれないよう常に最新の注意を払っていたが……疲れてたのかな、傷が開いたのに気がつかなかった。
速水と飯豊と宇佐美が見てたのも、それを青山の兄貴と香月の兄貴に報告したのも分かってる。
それを踏まえて青山の兄貴がわざわざ手当てしに来てくれたのも、俺の腕に蔓延る数多の傷を見てないふりをしてくれたのも全部知ってる。
速水たちが報告しに行くのも黙って見てたよ。報告されたとしても、きっと青山の兄貴や香月の兄貴なら深くは干渉してこないだろ?
せいぜい俺を遠くから見守る程度だ。
だから野田の兄貴や小林の兄貴にも言わない。俺にとっては好都合だ。あそこら辺の兄貴たちに報告されると少々めんどくさい。
バレないように、嘘をつく時も勘づかれないようにした。目を見られても動じないようにした。そうしたらみんな面白いほどに騙されてくれた。
自分自身に嘘をつく。自分で自分を欺けるように。
皆に勘づかれないように、俺は今日も嘘をつく。
バレないように。
俺ならできる。
俺なら__。
to be continued…
コメント
6件
自分自身に嘘ついてる😭 アイロンまでやっちゃってる😭 やっぱり、痛みへの感覚が鈍くなってますね… 確かに、歳も近くて面倒見が良い、そんでもって深くは追求することが出来ないような優しい兄貴、舎弟にバレてもかぶちゃんに好都合か…
華太ちゃん~!そのうち巡りめぐって野田の兄貴や小林の兄貴にも知られちゃうヤツですよ~!