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第62話 〚割り込む声、繋がる手〛(海翔視点)
――見つけた。
人混みの向こう、
花火の光の下で立ち止まっている澪。
その前にいる影を見た瞬間、
心臓が、嫌な音を立てた。
(……恒一)
間に合え。
玲央と別れて、
人をかき分けて、
ただ一直線に走った。
花火の轟音で、
声は届かないかもしれない。
それでも――
「澪!」
喉が潰れそうなくらい、
叫んだ。
澪が、
はっとこちらを見る。
その一瞬、
表情が、ぱっと変わった。
――安堵。
それを見た瞬間、
全部、確信した。
(やっぱり、怖かったんだ)
海翔は、
迷わず二人の間に入った。
「……何してんの?」
声は、低く、はっきりと。
恒一が、
一瞬だけ驚いた顔をする。
「別に。話してただけだけど?」
その言い方が、
余計に腹立たしかった。
「澪、行こ」
短く言って、
手を伸ばす。
触れるか触れないか、
ほんの一瞬。
でも。
澪の手が、
自分の手を、
ぎゅっと掴んだ。
――震えている。
それで、
全部、分かった。
(……大丈夫って言わせない)
海翔は、
澪の手を離さなかった。
むしろ、
少しだけ、強く握る。
「俺と一緒にいるから」
それだけ言った。
恒一は、
二人を見下ろすように、
黙り込む。
花火の光が、
彼の表情を照らす。
――笑っていない。
「……邪魔するなよ」
低い声。
海翔は、
一歩も引かなかった。
「邪魔じゃない」
はっきり言う。
「彼女が嫌がってる」
その言葉に、
恒一の目が、わずかに歪む。
でも――
「海翔……」
澪が、
小さく名前を呼んだ。
それだけで、
もう十分だった。
海翔は、
澪を背中に庇うように立ち、
視線を逸らさず言う。
「行こう」
今度は、
問いじゃない。
澪は、
こくりと頷いた。
二人は、
そのまま歩き出す。
背後から、
何か言われた気がしたけど、
振り向かなかった。
花火が、
夜空いっぱいに咲く。
その音の中で――
海翔は、
澪の手を握りながら、
心の中で強く誓った。
(もう、
絶対に一人にしない)