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三文小説
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ある日、葉山朝陽はスマホの画面を見つめたまま固まっていた。
「……いや、意味わかんな」
思わず声が漏れる。
画面に表示されていたのは、条件が良すぎる賃貸物件。
駅近、家賃も安い。内装も綺麗。部屋の雰囲気もかなり好みだった。
ここだ。
そう思ったのに、その一文が全てをおかしくしていた。
【入居条件:2名での入居必須】
「……2名?」
朝陽は目を細める。
夫婦限定?ルームシェア限定?
いや、そんなことはどこにも書いていない。ただ、“2名”とだけ書かれていた。
「なんやそれ……」
気になりすぎて結局内見まで来てしまったものの、建物の雰囲気は想像以上だった。
外観はおしゃれで、部屋も綺麗。
ただ、すれ違う住人はなぜかみんな二人組。
手を繋ぐカップルや、仲の良さそうな夫婦。
一人で来ているのは、自分だけだった。
「……あの、やっぱりまた探します!」
大家にそう言って逃げるように出たものの、その物件は妙に頭に残った。
そしてその日の夜。
友達と入った居酒屋で、朝陽は愚痴るようにその話をしていた。
「いやほんと意味わかんなくない?二人じゃないと住めない家って何?」
「怖すぎやろ」
「やんな!?」
そんな話をして、気づけば酒も入っていた。
友達と別れ、一人で帰ろうとした、その時。
「……さっきの話」
突然、隣から声がした。
振り向くと、そこには見覚えのある顔。
いや、正確には見覚えなんてない。
ただ、顔が良すぎて目に入っていた。
背が高くて、どこか近寄りがたい雰囲気の男。
スーツ姿のその人は、静かな目で朝陽を見ていた。
「その部屋」
少し間が空く。
「……俺と住む?」
朝陽は固まった。
「……は?」
葉山朝陽:21歳。大学生でカフェのバイトをしている。無自覚で人を惚れさせてしまう愛嬌の持ち主である。
桐原衣月:26歳。広告会社に勤めている、サラリーマン。慎重に物事を判断する。メロ男。