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海の紅月くらげさん
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「馬鹿にするなよ! 俺がお前にそんな風に同情されて喜ぶとでも思ってるのかよ!」
「実里くん、それは違うよ! 潤は同情で願おうとしているんじゃないよ!」
「へぇ……せんぱい知ってたんだね」
実里くんの拒絶するような瞳に思わずたじろいだ。でも、きっとここで誤摩化したりしちゃいけない。
「っ、そんなに俺は救われないといけないくらい可哀想?」
悲痛な叫びのように聞こえた。辛そうで寂しそうで今にも泣き出しそうな実里くんの表情。
違う。誰も実里くんのことを同情したり、可哀想だからなんて目で見ていない。
大切だから守りたい。その想いだけ。
けれど、目の前の実里くんは私たちのことをまるで敵でも見るように鋭い瞳で睨みつけてくる。
「もうやめてよ、そういうの」
掠れた声で吐き出すように言うと、実里くんは家庭科室から出ていってしまった。
「実里くん……」
薄い桃色のカーディガンを肩にかけた彼の背中を私はすぐに追いかけられずにいる。
なにを言っても拒絶されてしまうのではないだろうか。
私が行ったところでどうにもならないんじゃないか。そんなことを考えてしまう。
それに今は追うべきなのは……
「潤、どうして追わないの」
潤は優しさを微塵も感じないような作られた笑みを浮かべた。
「追っても喧嘩になるだけだよ。それにとっくに嫌われる覚悟なんてできているから」
「……っ、本当は嫌われてもいいなんて思ってないでしょ!」
いつもの潤とは違う。感情の読めない表情がすごく怖い。
「これは俺ら兄弟の問題なんだ」
今までだって実里くんが倒れた時に口をだしたら、冷たくて怖いときはあった。でも潤がここまで冷たい瞳で見てくることなんてなかった。
確かに私は九條の家に全く関係ない。潤と実里くんの二人の問題にも口だす権利なんてないのかもしれない。
わかってる。でも……そんなこと面と向かって言われるとやっぱり辛い。私は部外者だ。
「そう、だね……」
声が震えてしまう。
こんなにも悲しいことだとは思わなかった。